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リアクション
6章 今という時
鉄心、スープ、ティー、イコナを回収したホワイトクィーンは、ガーディアンヴァルキリーに着艦した。
『すまない、マルコキアス?はもうこの戦いでは使えそうにない』
「了解です〜」
艦内の通信機で鉄心とやりとりをするミュートに、ブリッジ内の空賊団員が警告を告げる。
「なるほど、こっちに砲撃するつもりですか〜」
モニター越しのサイクラノーシュは、左の掌をガーディアンヴァルキリーに向けていた。全高300メートルの威容を誇る巨体の表面に黒いエネルギーが迸り、掌に集束する。
『滅びよ、人間……!』
――サイクラノーシュは、付近で戦闘するイコンや空賊団員達を全て無視して『頭』を取るつもりだ。
母艦であるガーディアンヴァルキリーが撃墜されたら、全てが終わりだ。自らの持つ【特殊機体知識】をフルに使い、ミュートがガーディアンヴァルキリーに回避運動を行わせる。
ガーディアンヴァルキリーの各部推進機関から凄まじい推進力が吹き荒れ、敵砲撃の軌道から身を逸らす。直後にサイクラノーシュの掌から漆黒のエネルギーが放たれた。
空間が振動した。時間が狂った。物理法則がねじ曲がった。世界が歪んだ。
物理法則をも貫く一条の黒き稲妻が世界を振るわし、天空を引き裂いた。
「え……えぇっ〜!?」
余りにも信じがたい現象が起き、ミュートが素っ頓狂な声を上げた。敵砲撃の軌道を読んで完全に回避したはずのガーディアンヴァルキリーが、『引き寄せ』られた。
今し方サイクラノーシュが放った漆黒のエネルギー【ブラックホールキャノン】は、サートゥルヌス重力源生命体そのものだ。それは生きるブラックホールであり、人間に対処できるような代物ではない。
ガーディアンヴァルキリーの真横を強大な重力波が迸る。寸前の回避行動により直撃こそ免れたが、ブラックホールキャノンの重力に引き寄せられ、ガーディアンヴァルキリーが超重力の嵐に巻き込まれていく。
「うぅっ……!?」
ガーディアンヴァルキリーの右舷装甲がひしゃげ、いとも容易く潰されていく。周辺の気流が竜巻と化し、ガーディアンヴァルキリーに多大な損害を与えていく。
ブラックホールキャノンは惑星間攻撃を想定した砲撃。長時間に渡って作用を及ぼす攻撃だ。放たれた漆黒の稲妻は今なお健在であり、このままではガーディアンヴァルキリーがブラックホールによって超圧縮・崩壊してしまう……!
「地球奥義! 光線白羽取り!」
その時、ガーディアンヴァルキリーの天頂部に(なぜか)乗っていた桜庭 愛(さくらば・まな)がブラックホールキャノンを白羽取りしようとした。
愛曰く、『光線白羽取りとは光線が当たる直前、空気を圧縮させて受け止めるプロレスラー最大奥義』らしいが、物理法則すら破壊するブラックホールキャノンには何の意味も成さなかった。
ところがである。愛の余りにも無謀すぎる行動は、【サートゥルヌス重力源生命体】を驚かせた。
サートゥルヌス重力源生命体の驚愕がそのまま時空に影響し、虹色の泡を愛の周囲に発生させた。
■再現された過去■
愛の意識が過去に飛んだ。
――妖怪の山。偶然出くわした葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)と話をし、標的を確保するため動き回った光景が蘇る。
仲間と力を合わせるのは良い。愛は、そう思った。
■現在■
意識を戻した愛は、くわっと眼を見開いた。
「どうよ! これが女子プロレスラーの火事場のバカ力よ!」
愛の宣言と共に黒い稲妻が拡散した。ブラックホールキャノンそのものであるサートゥルヌス重力源生命体が気を利かせ、愛の行動によって弾かれたように振る舞ってみせたのだ。
が、影響も大きかった。愛は拡散した重力波と竜巻に巻き込まれ、明後日の方向に吹き飛んでいく。
何にせよ、ガーディアンヴァルキリーは難を逃れた。しかしもう一度ブラックホールキャノンを撃たれたら終わりだ。
【改造サイクロン】で戦場を駆ける風森 巽(かぜもり・たつみ)は、イコン各機に宣言した。
「――これより我は、ジェネレーターに突っ込む!」
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