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狙われた乙女~別荘編~(第2回/全3回)

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狙われた乙女~別荘編~(第2回/全3回)

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「まったくあんな物が食えるかっ!」
 変熊 仮面(へんくま・かめん)は、パートナーの巨熊 イオマンテ(きょぐま・いおまんて)がバルコニーに投げ入れてくれた食材で、ホワイト達より先に女性用の料理を完成させていた。
「今はこんな物しか作れんが……我慢してくれ」
 2階で作業をしている者達に料理を出し、手伝わされている人質の少女達にも料理を差し出すのだった。
 それはブッフ・ブルギニョン……牛肉と赤ワインで作られたフランスの家庭料理だった。
「変なものは入ってない。食える時に食っておけ。隙ができて逃げる時力が入らんぞ」
 そう囁く変熊にシャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)ミクル・フレイバディは感動の目を向けた。
「それにしても……」
 変熊は廊下ですれ違うパラ実女性陣の楽しげな笑い声、視線の数々にぐぐっと拳を握り締める。
 いつも裸体をさらけ出している変熊だけれど。
 料理を勤しみ、給仕を行なうその姿は、裸体にエプロンという世の中の男性達が喜び悶える格好であった。……?
 しかし、何故だろう。いつもなら見られたいはずなのに。何故かこの視線は――。
「何か……ふ、不愉快だ!」
 そう言い、裸の背中を見せて変熊は廊下を走り抜ける。

 それから。
 なんとなく屈辱的な思いで、変熊は1階の部屋で1人黄昏ていた。
「あの……風邪を引かれてしまいますよ?」
 そこに、純粋な瞳の女の子――リュースのパートナーのシーナが毛布をもって現れる。
「背中、丸出しですから。夜は冷えますよ」
「へっくしょい……。受け取っておこう」
 変熊がシーナの手から毛布を受け取ると、シーナはにっこり微笑んで手を伸ばし、背伸びをして変熊の頭に触れ撫でたのだった。
「良かった。あとでお味噌汁持ってくるので、暖まってくださいね」
「ん? うむ」
 彼女の行為が理解できず、訝しげに返事をする変熊に微笑みを残したまま、シーナはキッチンに戻っていく。
 変熊は毛布を背だけにかけた。勿論代わりにエプロンを外す。

 同じくリュースのパートナーであるグロリア・リヒト(ぐろりあ・りひと)レイ・パグリアルーロ(れい・ぱぐりあるーろ)は、温めたパンを持って、2階の人質達の部屋を訪れていた。
「ったく、あなた達ときたら……」
 グロリアはメンバーで唯一の常識人だ。
 リュースや他のリュースのパートナー達の行動にはいつも頭を悩ませている。といっても、放ってはおけないので、こうして毎度ついてきているわけだが。
「そう愚痴らないの。ここの人達も大変そうだし、少しくらい手伝ってあげてもいいんじゃない?」
 レイはそう微笑む。
 この娘、現状がまるで解ってない、と、グロリアは苦笑するも、それ以上何も言わなかった。
「温かいうちに食べて下さい。水も清潔ですからね」
「ありがとうございます。あっ」
 レイからパンを受け取ろうとしたのは、蒼空学園の秋葉 つかさ(あきば・つかさ)だが、彼女の後ろから伸びた手が、彼女の身体を羽交い絞めにしてそれをさせなかった。
「お離し下さいませ。お食事を召し上がらないと、色々出なくなってしまいますよ?」
「拒否するんなら、あっちの女でもいいんだぜ?」
「こらつかさ! 食事は後回しでいい!」
 不良少年に指差された女性、ヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)が即座に言い放った。
「仕方ありませんね。好きにしてくださいませ」
 少し潤んだ目を見せると、男達が猛獣のように飛びかかってくる。
 パラ実のお姐様方に支配されてから、不良達の欲求不満度が上がっており、時折こうしてつかさは弄ばれている。……弄ばせている?
 つかさとしては、食事を沢山食べて力をつけてからの方が、もっとイロイロ楽しめたとも思うのだけれど、まあ食事の最中も後も楽しめばいいわけで。
「どうか、こういうことは私だけにして下さいませ……っ」
「全員満足させてくれればなぁ」
 シャツは破かれるように取り払われ、つかさの白い肌が露になった。
「……仲が良さそうで安心ね」
 レイは普通に微笑ましげにそんな感想を口にしながら、隅っこの方に固まっている人質達にパンを配っていく。
「こ、これは止めなくていいのかな。いや、彼女もなんだか楽しそうだし……」
 グロリアは頭を抱えたい思いだった。
「とにかく、危険が迫ってきたら、大声で叫んでちょうだい。助けにくるから」
「大丈夫ですぅ。ああいうことは、つかさ様が全部請け負ってくださってますし、ね?」
 シャーロットが隣でブッフ・ブルギニョンとパンを食べるミクルに目を向ける。
 ミクルはこくりと頷いた。
「ホントはちょっと怖いんですけど、変だけど優しい人もいますし、頑張ります……」
 不安気なミクルの頭をぽんぽんと叩いてグロリアは立ち上がった。
「それじゃ、また後でくるから!」
「またね。それにしてもあの胸ときたら……どうしたらあのように大きくなるのかしら。ちょっと聞いてみ――」
「次の機会にね!」
 グロリアはレイの手を引いて次第に過激になっていくその部屋をそそくさと後にした。

「あんたは宝のこと、どれだけ知ってるの?」
 蒼空学園の皆川 ユイン(みながわ・ゆいん)は、単刀直入にテクノに訊ねた。
「地下に怪盗に狙われるような秘宝があるって聞いただけだ」
 テクノはエーテンから、荷物を引っ張り出しながら答える。
「それにしても、大変そうですね。いえ、掃除は得意分野ですので、頑張らせていただきますが」
 蒼空学園のベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、ヒールでテクノの傷を癒した。
 エーテン(えー・てん)の突撃により、2部屋使い物にならなくなっている。人質がいる部屋との壁にも穴が空き、行き来できるようになっていた。
 無理に引き抜いたら、このあたり一体が崩れそうなため、しばらくエーテンにはこのままの体勢でいてもらうことになった。
「くぅ、空を飛べんとは……」
 エーテンが悔しげな声を上げる。
「悪く思うなよ」
 ペシペシとテクノがエーテンの頭を叩いた。
「ま、食べられそうなものもあるし、仲間にしてあげてもいいよ!」
 ユインが落ちていた菓子を開封して食べながら言った。とはいえ、そのユインも言葉巧みに不良達に取り入って、ようやく仲間として認められたばかりなのだが。
「早く片付けようね。掃除する部屋沢山あるから」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はベアトリーチェを手伝う形で、せっせと片付けていく。ベアトリーチェは真面目に掃除を行なっていたが、地下に興味のある美羽としては2階には用はないので、早めに切り上げて1階の掃除という名の探索に向かいたかった。
 これまでの成果により、美羽とベアトリーチェは封鎖されている地下を一箇所見つけている。そこに秘宝が眠っているのだろうか。
 そしてその秘宝は――1つなのだろうか。
 だとしたら、この場にいる3人は何れもライバルだなと、密かに美羽。そして、ユイン、テクノも思うのだった。