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狙われた乙女~別荘編~(第2回/全3回)

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狙われた乙女~別荘編~(第2回/全3回)

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 しかし、警備、警察、防衛を請け負うシャンバラ教導団が、戦争の要であるシャンバラ教導団が、シャンバラの軍人たるシャンバラ教導団の若者が! 窓ガラス1枚割れずに倒れようとも、諦めずに鏖殺寺院に立ち向かおうとする少年達がいた。
 イルミンスールのいんすます ぽに夫(いんすます・ぽにお)は、握り拳を固めながら別荘へ歩を進めていた。
「ちくしょう」
 滲みそうになる涙を堪えながら、パートナーの巨獣 だごーん(きょじゅう・だごーん)メカ ダゴーン(めか・だごーん)と共に、別荘を見据える。
ウィンドさんや瓜生さんはいい人だったのに! 変熊仮面(へんくま・かめん)さんもド変態でしたけど、いつか分かり合えると思っていたのに!」
 ミルミから聞き、捕らえられたと思われる仲間達、ここに向かった後、消息を絶った知り合いたちを――ぽに夫は殺されたと思い込んでいた。
 不良に捕らえられ、鏖殺寺院の実験体とされ、想像を絶するような苦痛を受けたのだろう、と。
「復讐のため、僕は修羅となります!」
 静かに精神統一をするたごーんに近付いて、精神力が尽きるまでぽに夫はパワーブレスをかける。
 巨獣だごーん……それは、山のように巨大なゆる族だ。
 そのたごーんが、メカダゴーン……カルスノウトを持った23メートルもある機晶姫を抱え上げる。
「別荘に住む者は自分達の事しか考えていない、だから抹殺すると宣言しました」
 涙を堪えながら、ぽに夫が言葉を発した途端、たごーんは走り出す。
「なんだアレは!?」
 言葉と共に、魔法や銃弾が襲ってくる。
 たごーんは力任せにメカタゴーンを別荘に向けて投げつけた。
 放り投げられ、別荘の屋上にめり込んだメカダゴーンはカルスノウトを振り回し、破壊を始める。当然投げ落とされた衝撃で自分自身の身体もボロボロだがわが身を省みず、がむしゃらに身体を振り回す。
「もはや誰も止められません」
 ネックなのは、その巨体に対して、カルスノウトの刀身は非常に短すぎること。
 だが、身体を振るだけで、別荘に計り知れないダメージを与えていく。
 こうなっては、敵側ももう篭城戦などとは言っていられないだろう。
「あの衝撃的いや、笑……じゃない、焼劇的な演出のお陰で、ここまで無傷で近づけた」
 イルミンスールの姫北 星次郎(ひめきた・せいじろう)や解体に訪れた者達は撞車に敵の目がいっている隙に、側面から別荘に近付いていた。
「さあ、出て行ってもらおうか。退かないのなら、実験材料もろとも全て焼き尽くすまでだ」
 星次郎は、禁猟区を発動し正面に回りこむ。
「そう、全て燃やしてしまうことこそ、平和的解決だ! 教導団の方々の熱き思いは俺が継ぐ!」
 屋敷正面に飛び出すと、火術を手当たり次第、引火しそうな場所に放っていく。
「爆炎波!」
 蒼空学園の佐々木 真彦(ささき・まさひこ)が、大きな身体でカルスノウトを打ち下ろし、別荘の外壁に攻撃を加える。
 撞車の攻撃で、少しは歪んでいたその壁に、亀裂が入った。
 続け様に、真彦は剣を叩き下ろし、壁を崩していく。
「鏖殺寺院の手下共め、往生際が悪い!」
 星次郎は、窓から真彦を狙おうと腕を出した不良に向かい、雷術を放つ。
「ぎゃっ」
 衝撃を受けた不良が銃を落とした。
「抵抗するのなら容赦はしないぞ!」
 星次郎は火術を真彦があけた穴の中に打ち込んだ。崩れた壁に向かっていた不良の顔面に直撃をする。
「援護ありがとうございます。結構頑丈な作りのようでなかなか崩れません、ねっ!」
 カルスノウトを叩き付け続け、ようなく自分が潜り抜けられるような穴を開け、真彦は別荘の中へと突入する。
「こう、ダイナマイトを仕掛けたときのように一気に崩れますと絵になるのですが。」
 周りを見回して、太い柱に向かっていき、剣を叩き付ける。
「いい加減にしろよ!」
 向かってきたのは化粧の濃い女性だった。研究員には見えない。女は短刀を抜き、真彦に斬りかかる。
「……っ、なかなか素早い。寺院の暗殺要員でしょうか」
 軽く脇腹を裂かれるも、真彦は剣を大きく振り、女を退ける。

「さあ、私達も行きましょう。あの方々を放って置く訳には行きません! 別荘をとっととこの世から消して……いえ、解体しちゃいましょう」
 白百合団の冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)が塀の陰からすくりと立ち上がる。
「いつにも増して意気込んで……というか、過激になっているようだけれど、気をつけて、ね?」
 エノン・アイゼン(えのん・あいぜん)もサポートの為に立ち上がる。
「ええ、私は私の出来ることをいたします」
 小夜子はホーリーメイスを手に勇ましく駆け出して弾丸が降る別荘へと駆け込んだ。
 エノンも急ぎ、後を追う。
「闇組織と戦った、あのときのおぬしはどこへいったのだ!?」
 同じく塀の傍で、別荘を前にへたり込んでいるケイを、カナタは激しく揺さぶっていた。
「サンダーブラストは!? ファイアストームは!?」
「うえーん! そんな魔法みたいなもの、ただの地球人の私に使えるはずないじゃないですかぁ……!」
「戦いの中に身をおけば、目も覚めるだろう。行け!」
 カナタはケイの背をドンと押した。
 ぽろぽろ涙を落としながら、仕方なくケイはぎゅっと目を閉じて真彦の開けた穴から別荘へと突入をした。ケイ自身としては魔法使い……ではなく、メイドとして屋敷を掃除するために。
「バラされてぇのか!」
 不良達が可愛らしい少女にしか見えないケイに飛びかかってくる。
「こ、こっちに来ないでくださいー!」
 ケイは無我夢中で火術を放つ。恐怖のあまり、目なんて開けてられない。
 魔法はあらぬ方向に飛び、狙ったかのようにカーテンや散らばっているゴミに火がついていく。
「そうそう、とにかく燃やして綺麗にするのよ」
 続いて、真彦のパートナーの関口 文乃(せきぐち・ふみの)が別荘へと侵入する。
「これ以上入れるな、塞げ!」
 女性の声が飛び、不良達が次々と飛びかかってくる。
 真彦は剣を振り回して、不良を近づけさせず、屋敷に攻撃を加えていく。
「来ないで来ないで来ないでーっ!」
 ケイは泣きじゃくりながら、火術と雷術を打ち捲くるも、目を閉じているせいで、不良には当らず部屋ばかり燃えていく。
「あつっ、落ち着いて下さい!」
 ケイが放つ火が小夜子の服をも燃やす。
「仲間に火をつけるとは何たる失態! しっかりせんか!」
「うええええーん。怖い人ばかりですぅ……」
 駆けつけたカナタが怒鳴るも、ケイは泣きながら魔法を放ち続ける。
 やむなくカナタはケイの腕を掴んで軌道を変えていく。精神力が切れるまでこうしてサポートするより他なさそうだ。
「……大丈夫、消えました」
 エノンが叩いて小夜子の火を消した。
「んもぉ、邪魔! 邪魔よあなた達!」
 文乃はドラゴンアーツで、不良達を投げ飛ばす。
「ああもぉ、這いずり回る黒い物体とかも邪魔、邪魔よ、邪魔!」
 危険を察知し、逃げ惑いはじめる黒い物体と不良が入るような角度で火術を放ち屋敷を燃やす。
「アチッ」
 もう一つ、どでかい物体の身体も掠めてしまったようだが、気にしている場合ではない。
「あれは、実験用の薬草かしら? 焼いてしまわないと!」
 文乃は雑草が生えている隣の部屋へと飛び込んで、燃やすべき物に狙いを定めるのだった。
「痛っ。すみません、大人しくしていてもらえませんか?」
 真彦が服についた火を叩いて消している隙に、木刀を持ったお姐様方が真彦を取り囲み、武器を打ち下ろしてきた。
 仕方なく応戦し、したこま殴られつつも、剣の腹で女性達を打ち倒し、大きく振って屋敷にダメージを与えていく。