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狙われた乙女~別荘編~(第2回/全3回)

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狙われた乙女~別荘編~(第2回/全3回)

リアクション

「美海ねーさま、苦しい、苦しい、よ……ゲホッ、ゴホッ」
 蒼空学園の久世 沙幸(くぜ・さゆき)は、涙をぽろぽろ流していた。
 屋敷が取り壊される前に秘宝をゲットするんだと、意気込んできたのだが、煙が目に沁みるし、息苦しさ、暑さももう限界だった。
「マスクだけじゃ防げませんわね。殺虫剤に引火して爆発なんてオチも避けたいですわ」
 藍玉 美海(あいだま・みうみ)は、沙幸の腕をぎゅっと掴みながら、炎と煙が渦巻く周囲を見回す。
 別荘に入り込む人々の後から、こっそり入り込んだのはいいが、地下の場所がわからない。ミルミにも聞いてみたのだが、彼女も地下の存在を知らないということだった。
 もう限界かと思ったその時、彼女達の耳にも「崩れるぞ! 地下を見つけてある、避難しよう!!」という声が届いたのだった。
「行きますわよ」
 沙幸の腕を引いて、美海は炎の中に飛び込んだ。

「崩れるぞ! 地下を見つけてある、避難しよう!!」
 そう大声で仲間――不良達とパラ実の女性達に声をかけたのはコウだ。
 攻められる前に、別荘内をくまなく探索した結果、ワイン倉庫のような狭い地下室を発見していた。
 魔法などを上手く使って防衛すれば、シェルター代わりとして隠れていることも可能に見えた。
「地下、行きます……っ」
 真っ先に駆け寄ってきたのは、捕らえられていた百合園の女の子だった。
 コウは彼女と、逃げ遅れたパラ実の女性達を引き連れて、階段の裏側にある入り口へ誘導する。

「ケホッ……っと、地下の場所わかったみたいよ!」
「どうやら、バイオテロの研究室は地下にあるようだな」
「ぱっと見、どの部屋も研究室らしくはないしね。行こ行こ」
 コウの声を聞き、カレンジュレールと共に部屋から飛び出す。
 不良の手伝いで手一杯で地下を探すことが出来ずにいた2人だが、もうこの状況下で不良側についている必要はない。

「こうしちゃいられない!」
 最後まで抵抗するブラヌ・ラスダーに従い、サポートを行なっていたユインもまた、コウの声にバッと立ち上がる。
「逃げるんなら地下より飛び下りた方がいいだろ。蜂の巣にされる可能性もあるな、援護を……」
「ごめーん、無理☆」
 ブラヌをドーンと飛ばしバルコニーの外に落とす。
「ぐあーーーーーっ」
「十分役に立ったでしょ、私。それじゃ、せいぜい頑張ってね〜」
 投げキッスを残して、ユインは地下へと急ぐのだった。
「く……っそ……」
「フッ」
 ――2階から落とされ、動くことさえ出来ずにいるブラヌの前に、マントを纏った男が玄関から堂々と現れる。
「ブラヌ・ラスダーよ目的の為なら、命もプライドも捨てる……お前にそんな行動ができるかな?」
「なにぃ?」
「しかと見ておくがいい。これが俺様の漢気だ!」
 漢――変熊仮面(へんくま・かめん)は、マントを翻し正面から駆け出て行くのだった。

 ガシャン
 窓ガラスが割れ、さけという名の獣が炎の中から飛び出してきた。
「フシュ、フシュルルル……」
 煤だらけの身体で、ぱたりとその場に倒れこみ意識を失う。
「ふう、治まったようですね」
 木の陰に隠れていたが、さけに近付く。
「ちょっとしたモンスターでしたね……」
「地下ぁ? そこから、燃やす、全て燃やすぅひやはははふははははいひひひひひ……」
 ウィルネストという炎系人型モンスターはまだ中にいるようだが、晶はさけだけ回収するとその場を飛び立つのだった。
「皆様申し訳ありませんでした!」
 一応謝罪の言葉を残して、さけを抱えて川の方へと飛んでいく。

「地下、発見されちゃった。どうしよう……ううっ」
 2階で待機していた美羽は迷う。自分も地下に向かいたいところだが、炎の勢いが強くなり、1階に下りるのは危険と思われた。
「早く脱出しなければ」
 ベアトリーチェは美羽の手を引いて、バルコニーへと出る。
「うん、皆出よう? 人質じゃないのかもしれないけど」
 甲斐甲斐しく皆の世話をしていたも、咳き込みながら声を上げる。
「白百合団の冬山小夜子です。助けに来ました。早く飛び下りましょう!」
 白百合団の小夜子と、パートナーのエノンがその人質にされていた皆の部屋へと駆け込んできた。
「畜生っ! 百合園女め!」
 つかさが世話をしていた少年が、咳き込みながら、無我夢中で小夜子の方へと駆けてくる。
 小夜子はホーリーメイスを振り回して牽制し、バーストダッシュで一気に間合いを詰めたエノンがカルスノウトで不良の足を裂き、倒す。
「さあ、お2人も、急いで下さい」
 ベアトリーチェはつかさにヒールをかけて癒し、バルコニーへと引っ張った。
「煙くて、混乱のズンドコ……どんズコ? ですぅ〜」
「もう大丈夫です」
 けほけほ咳をしているシャーロットには小夜子がヒールをかける。
 エノンがバルコニーへと走り、1人ずつ抱えて地上に降ろしていく。
「ありがと、お願いします」
 美羽も礼を言い、大人しく救出されることにした。

 その数秒後。
「おりゃあ! ただのおっさんラルク参上!」
 半開きだったドアを勢い良く開け放ち、ただのおっさんラルクが2階の部屋に飛び込んだ。
 辺り構わず炎を放つ可愛らしい少女や、発狂した炎系人型モンスターや、鋭き爪を持つ野獣や、全裸の未確認生命体など、数々のモンスターの中を潜り抜けたラルクだったが。
 震えながら待っている百合園生の姿は既になかった。
「……………………無念でござる」
 その部屋には嵌っているエ ー テ ン し か い な い!
 ガクリとラルクは両手を床についた。