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ルペルカリア祭 恋人たちにユノの祝福を

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ルペルカリア祭 恋人たちにユノの祝福を

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 2月14日、この日空京では結婚式場が完成する。
 その完成を祝うため催されるルペルカリア祭は、昔地球ローマで女神ユノの祝日だったことが由来する。
 ヨーロッパの言語で6月を表すジューンもまた彼女の名前を由来としており、6月に結婚をすることでユノの加護を受けらるとも言い伝えられてきた。家庭と結婚の神であることを考えれば当然の言い伝えなのかもしれないが、折角あるロマンチックな話に便乗してルペルカリア祭をやる運びとなった。
 元々は豊年祈願のこの祭り、生活環境を分けられているために普段は一緒に過ごす時間の少ない恋人たちが、仲睦まじく過ごせる貴重な1日。お互いの大切さを認識して、結婚する者も多かったようだ。
 記述によれば、その祭は15日のようだが、式場関係者らは「バレンタインが結婚の女神の祝日とあれば今日しかない!」と1日早くルペルカリア祭としてオープン記念のお祭りを計画し、順調に準備は進んでいる。
 1月下旬の打ち合わせではまだ決まっていなかった模擬結婚式のモデルも決まり、真城 直(ましろ・すなお)の協力で式場に飾る薔薇の花も手配出来た。
「あとは、このイベントが成功するだけ……か」
 もう暫く経てば、模擬結婚式に参加するモデルたちが到着する。中には模擬ではない人たちもいるようで、その緊張感は計り知れないものだろう。どうか、挙式参加以外の者にもユノの祝福があるようにと直は大聖堂の扉の前で祈りを捧げる。
「こんなところにいたのか、そろそろ客人が見える頃だぞ」
 彼を呼びに来たヴィスタ・ユド・ベルニオス(う゛ぃすた・ゆどべるにおす)も、普段は着崩していることが多いシャツを整えて式場に合わせた身なりをしている。1つ1つのエリアがテーマパークのように広い会場全てをスタッフと見て回り、オープンに相応しい装いになったのを各自確認していたのだ。
「ああ、ここは大丈夫。さっき体験用のブーケの花も追加で手配したから昼過ぎには届くし……楽しみだね」
 天気にも恵まれたルペルカリア祭。どうか今日が、皆の特別な1日となりますように――



 新郎新婦のモデルたちには、希望の最終確認と流れの説明、それからメイクなど何かと準備が必要なので、早めに来て貰った。この日を待ちわびていた島村 幸(しまむら・さち)ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)は、待ちきれなかったのか1番にやってきて、その規模に驚いた。1エリア20000?もある式場が10種類、大きな木で仕切られ、互いのエリアの雰囲気を壊さないようにされている。けれどもその中で存在感を隠しきれない高さ100mもある鐘楼が自分たちの式を挙げる大聖堂で、抽選だったとは言え自分たちがあの場所で愛を誓えるのかと思うとまだ実感が沸かない様子で見ていた。
 次にやってきたのはコトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)ルオシン・アルカナロード(るおしん・あるかなろーど)。選んだ空京は周りのエリアと比べてどちらかと言えば近代的な雰囲気で幻想的な空間では無いものの、結婚式に相応しい建築美と花をふんだんにあしらった可愛らしさを中心にどんなスタイルにも手作り出来るのが売りの1つでもある。
 そんな結婚式を待ち遠しく思っていた2組とは打って変わって、緊張気味な子供たち。幼いながらも大切な人がいると申し込んでみたが、やはり単なるモデルだとは割り切れないのだろう。レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)はザンスカールをモチーフにして作られた緑溢れる式場に、感嘆の声を漏らす。本物よりも小さめに作られている世界樹は、中に教会やレストランなどを併設した木の温かみまで再現されている邸宅になっており、希望していたガーデンはと言えば色鮮やかな花が咲き、きちんと躾けられた小動物が戯れている様子が見える。
 日本を選んだ匿名 某(とくな・なにがし)結崎 綾耶(ゆうざき・あや)はまるで昔からここにあるかのような神社に心をときめかせ、リリィ・マグダレン(りりぃ・まぐだれん)ジョヴァンニイ・ロード(じょばんにい・ろーど)が選んだ中国は、披露宴だけを行うカップルが多い国の為か内装も自由に変えられるようで、洋装に近くなるよう希望をだしている。唯一他と違うところがあるとすれば、エリアの入り口から邸宅までの道が他のエリアは庭園部分を少し散歩出来るようになっているのに対して、中国だけは大きな道が真っ直ぐと延びているということだろうか。
 そうして続々とやってくる参加者には女性同士のカップルも。まさしく夢に溢れる女の子といった秋月 葵(あきづき・あおい)エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)は、ヴァイシャリーを再現したエリアに通い慣れた百合園を思い出すが、そことはまた違う水の都としての美しさに、ゴンドラに乗ってエリアを一回りしようと準備の前に楽しみ、如月 日奈々(きさらぎ・ひなな)冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)もまた、ギリシャの神殿と美しい海を再現したエリアに、目の不自由な日奈々のため1つ1つ確認するように散歩をすることにした。
 そうしてはしゃぐ参加者を横目に、落ち着いた足取りでオランダのエリアへ向かうのは赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)クコ・赤嶺(くこ・あかみね)。2人はすでに夫婦となっているが式を挙げていなかったので、思い出に残る1日にしようと穏やかな笑みを浮かべて寄り添い合っている。
 八月朔日 刹那(ほづみ・せつな)ユーニス・アリマプティオ(ゆーにす・ありまぷてぃお)と言えば、刹那はこの場所に来るまで今日の予定は全く知らされていなかった。彼女がどうしてもと頼むのでデート先を任せれば結婚式場に連れて来られ、お祭りがあるのならと思う間もなく結婚式のモデルを引き受けていたと告白されてしまう。やられた、と半ば諦めた様子で自分たちが模擬結婚式を行う場所へと向かえば、ルクセンブルクの美しい町並みを再現したエリアを見て嬉しそうな顔をするユーニスに、付き合ってやるかと覚悟を決めるのだった。
 しかし、ここに特殊なカップルが1組。志位 大地(しい・だいち)ティエリーティア・シュルツ(てぃえりーてぃあ・しゅるつ)は、以前空京に買い物に行った際に偶然鉢合わせ、この建物が出来ることを知った。色んな国をモチーフにしているらしいという話に、ティエリーティアは故郷ドイツのような建物はあるだろうかと楽しみにしており、その会話を聞いたスタッフにモデルに誘われていたのだ。
「でも、なんのお手伝いなんでしょうね? ビールやソーセージを配ったりするのかなぁ……」
 あまりに必死なお願いだったので詳細を聞かずに承諾してしまったが、ベルギーを担当して欲しい、という言葉以外は何も覚えてはいない。一先ず約束の時間にはたどり着いたが、このあと2人は予想すらしていなかった展開に巻き込まれることとなる。