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機械達の逃避行

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機械達の逃避行

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 一方、復旧作業はまだ続いていた。
「この看板で、ベンチをつくりますっ! それと……お人形を並べて……」
 宇佐木みらびが、楽しげに街に彩りを添えていく。
 彼女が修復した場所は、暖かな雰囲気を醸し出していた。
 白雪の暴走のために散らかった破片や瓦礫も、元々あったゴミもほぼなくなり、新たに作り出したり設置したもので、溢れている。
 彼女らしさのある、温かく優しい街並み。
「綺麗になっていくと、気持ちいいですっ」
「埋め埋め〜♪ 埋めたよ〜♪」
 ララ・シュピリが楽しげに、スコップを振る。
 攻撃の応酬や、トラップのために開いた穴が、彼女の働きによってほぼ埋められている。
 深い穴も、浅い穴も、広い穴も、狭い穴も……多くあった穴は、跡形もない。
「これで誰も落ちたり、足が引っ掛からなくて済むね♪」
 満足げに笑う、その横顔は誇らしげだ。
「そうですねっ! あ、シュピリさん、顔に泥が付いてますよっ」
「あ、ほんとだ。んふふ〜」
「ほら見て、お花畑だよっ!」
 クラーク波音が、両手を広げる。
 囲いの中に、球根や種が植えられている。
 今はまだ見えないが、小さな看板や柵が、その存在を教えている。
「そのうち、お花で一杯になるねっ! ゴミもなくなったし……空京がどんどん綺麗になるよ!」
「素敵ですっ!」
 宇佐木みらびが手を叩く。
「みらびちゃんのところは可愛いねっ! このままお店が開けそうだよ!」
「そ、そうですかっ!? 嬉しいですっ!」
 互いに褒め合って、微笑む。
「頑張っとるね♪これでも俺、イルミンスール武術部で鍛えとるんやで! 力仕事なら任せときや!」
「あ、じゃあ、このゴミをゴミ捨て場に持って行ってくださいっ! 分別はしてありますからっ!」
「了解!」
 宇佐木みらびからゴミ袋を受け取って抱え上げる日下部社。
「ちー、兄ちゃんちょっとゴミ捨てて来るから、ここにいてや」
「うんっ。ヴァーナーちゃんと一緒にお花植えてるね☆」
「自然を戻すの、がんばるです〜」
 日下部千尋とヴァーナー・ヴォネガットが笑いあい、小さなスコップで花を植えていく。
 地表に出てしまった木の根を埋めたり、小さなゴミを拾い集めたり……楽しげに、しかし真剣に二人は作業を続ける。
「綺麗になってきたね。もう一頑張りかな」
 ケイラ・ジェシータが微笑み、木の苗を植えていく。
 それは、火炎放射機で燃やされた木の跡地。
 焼けた木々の灰を肥料にして、小さな木が育っていくというわけだ。
「ここの景観が戻るのは、何十年と先だけど……それでも、やらなければ戻らないからね」
 柔らかく微笑み、ケイラ・ジェシータは作業を続ける。
 植えた苗が、それに応えるように風に揺れた。
「ふぅ、このあたりの木は、大体片付いたか」
 伸びをする、湊川亮一。肩を回し、こわばった筋肉をほぐす。
 倒れた木々を運び、瓦礫を集めてゴミ袋に詰める作業をひたすら行っていたのだった。
「怪我人の手当て、終わりましたわ」
 高嶋梓が、艶やかな長い髪を揺らして近付いてきた。
「おお、お疲れ。こっちも終わりが見えてきたところだ」
 深く息をつき、湊川亮一が笑う。
「暴走の方も、片付いたみたいだし、俺達が頑張れば元通り……ってわけでもないが、普段通りの空京に戻るだろう」
 もう一度伸びをして、高嶋梓を見遣った。
「怪我人、多かったか?」
「いえ、それほどでは……。街の外へと誘導してくださる方がいらっしゃったようなので、それが功を奏したようですわ」
「そうか。大事にならなくてよかったな」
「ええ、本当に」
 頷きあって、二人は周囲を見渡す。
 片付けを行う面々の表情には疲れこそあれ、満足そうな雰囲気を醸し出していた。

「皆さん、そろそろ休憩にしましょう」
 そう呼びかけるのは、アンナ・アシュボード。とりだした水筒には麦茶が、箱の中には冷たい羊羹が、入っている。
「わ、ありがとうございますっ!」
「食べ食べ〜食べよ〜♪」
「ありがとう、アンナ!」
「おぉ、美味そうやね!」
「おいしそう!」
「ありがとうです〜!」
「疲れた時に、甘いものは嬉しいね」
「助かるぜ」
「生き返りますわ」
 各々礼を言って、麦茶と羊羹を口に運ぶ。
「喉乾いてたところやったんや。生き返る〜」
「やー兄、あんまり飲み過ぎちゃだめだよ?」
「おーいしい♪」
「んっふっふ〜。冷たいおやつで体力回復だねっ!」
「皆さんのお口に合ったようで、よかったです」
「働いた後だから、余計においしく感じますねっ!」
「ようかん、おいしいです〜」
「なんだか、こうしているとピクニックにでも来たみたいですわ」
「周りも綺麗になったしな。最後まで仕上げて、気持ちのいい街にしよう」
 全員が微笑み、楽しみつつ、休息を取る。
「これもゴミ、あれもゴミ! ゴミだらけですね!」
 茜ケ久保彰が、そんな彼らを尻目にゴミ拾いを続ける。
「ネヴィル、あっちを頼みます。私はこちらを……」
「了解だぜ! 土木作業も楽じゃねぇな!」
 ガートルード・ハーレックもネヴィル・ブレイロックも、ハーレック興業の仕事を一足早く行っている。
 重機を操り、壊れた物の撤去を行う。
「これで、あの養護教諭から更に金をむしり取れそうだな!」
「ええ、そうですね」
 疲労感をにじませつつも、口元には不敵な笑みを浮かべる。
「ハーレック興業は、あの教師のおかげで大繁盛です」
 笑みはそのままに二人は休むことなく、重機を操り続ける。
「僕も手伝おう!」
 ボロボロの白衣のまま、起木保がやってきた。
 ガートルード・ハーレック達の姿を認めて一瞬たじろぐが、気を取り直して辺りを見渡した。
 小さな木の苗、揺れる花々、植えられた球根……。
 白雪が荒らしていった街並みは、新たな美しさを得ようとしている。
「みんな、ありがとう」
 深々と頭を下げ、起木保は、残った修復作業に取り掛かった。

 後日、起木保が、破壊したものの弁償と、二カ月の自宅謹慎処分という処罰をくらったのは、言うまでもない。


担当マスターより

▼担当マスター

鳳羽 陸

▼マスターコメント

公開が遅れてしまい、申し訳ありません。
とりあえずなんとか納得いく形で、完成させることができたと思います。
このシナリオにご参加いただいて、ありがとうございました。
お楽しみいただければ、幸いです。
起木保は変わらずです。
これからも単発で、起木保に関する話をやっていきますのでよろしくお願いします。