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機械達の逃避行

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機械達の逃避行

リアクション

 攻撃と防御の応酬を、パワードスーツを全装備した、まるでヒーローのような姿のエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が見つめていた。
「……起木先生、あんな物騒なの連れて空京歩くなよ……」
 呟いたエヴァルト・マルトリッツに、ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が苦笑する。
「確かにね」
「だが、止めないとな」
「うん! ヒーローの出番だね!」
 頷き、エヴァルト・マルトリッツが駆け出した。
 パワードレッグを着ている上での【ドラゴンアーツ】で身のこなしを最大限に上げる。
「頑張って!」
 突風のごとく駆け出すパートナーの後ろ姿に、手を振るロートラウト・エッカート。
「白雪さん……いや、先生の命名だと『白』が苗字になるから……白さん、止まるんだ! 止まらなければ強硬手段に出る!」
 エヴァルト・マルトリッツが白雪の前に立ちはだかる。
 しかし、白雪は止まるそぶりも見せない。
「EX−OR0582、即刻攻撃を停止せよ、繰り返す、即刻攻撃を停止せよ!」
 離れた位置で、ロートラウト・エッカートが叫ぶ。白雪の本名で命じれば、効果があるかもしれないと思っての言葉だ。
 しかし、白雪の暴走は止まらない。
「キンキュウジタイ。コマンドジッコウ、フカ」
 無機質な声が、白雪の口から放たれた。
「強硬手段に出るしかないか……」
 エヴァルト・マルトリッツは更に、速度を速める。
 炎とミサイルを振りまいて、走り続ける白雪。
 ドルチェ・ドローレが攻撃を防いでいることもあり、攻撃をまともに食らうことなく、全速力で走る。
「いい加減、止まったらどうじゃ!」
「急いでもいいことないぜ! 大人しく燃やされろ!」
「これ以上、暴れないでください!」
 アシュレイ・ビジョルドとウィルネスト・アーカイヴス、緋桜遙遠が追いかけていく。
 緋桜遙遠が【奈落の鉄鎖】を放ち、合わせてウィルネスト・アーカイヴスが【ファイアストーム】を発動。
 更に、綾刀を振り上げたアシュレイ・ビジョルドが二人の攻撃に紛れて白雪に背後から接近。
「はあっ! ――っ」
 刀が背中に到達する直前で、ドルチェ・ドローレの碧血のカーマインの銃声が轟き、白雪は振り返ることなく軌道修正。
「小癪な……!」
 奥歯を噛みしめるアシュレイ・ビジョルド。その横から、スカサハ・オイフェウスが加速ブースターで勢いをつけ、駆けてくる。
「白雪様! もうやめるであります!」
 彼女は【ライトニングブラスト】を発動。
「邪魔しないで!」
 ドルチェ・ドローレがスカサハ・オイフェウスを攻撃。白雪に向けられていた技は、上にそれた。
「……邪魔をするなら……ツブす!」
 鬼崎朔が赤い瞳を光らせ、【しびれ粉】を投げつけるように、まく。
「うぅ……また痺れ……」
「制裁!」
 身体が痺れ、走る速度が鈍ったドルチェ・ドローレに向け、鬼崎朔が再び【アルティマ・トゥーレ】を使用。
 放たれた冷気が、ドルチェ・ドローレを襲う。
「マミー!」
 そこへ、駆けつけたアンジェラ・エル・ディアブロが【ガードライン】で護る。
 再び、轟音。火炎放射機が唸りを上げる。
「やめてくださいっ!」
「火力強すぎだ! 白雪ちゃん、弱火にしよ!」
 ソア・ウェンボリスと七枷陣が、【火術】を応用。炎をコントロールする力を火炎放射機に向け、炎の勢いを弱める。
「白雪様……これ以上の破壊は、させません」
 小尾田真奈が六連ミサイルポッドで、白雪の放つミサイルを相殺。空中でミサイルポッドがはじけ、破片が舞う。
「ミサイルの雨なんて漫画や小説の中だけの話だと思っていた時期が俺にもありました……」
 そう言って、樹月刀真が飛空挺の上から【乱撃ソニックブレード】で、弾け損ねたミサイルを迎撃。

「これで……どうです?」
 咲夜由宇は、額の汗を拭った。白雪の前方、エヴァルト・マルトリッツよりも前に【トラッパー】を使用した落とし穴を作り上げた。
 バッサイーンが軽々と通り過ぎ、白雪がそれを追ってくる――。
「……!」
 バッサイーンしか見えてない白雪の足元がふらつく。片足が穴に引っ掛かり、やや体勢を崩した。
「わ、やりましたです!」
 喜びに飛び上がる咲夜由宇。しかし、白雪は穴に落ちるまではいかず、身体を立て直して再び走り出そうとする――。
「今だ!」
 白雪の真上を飛んでいた飛空挺から、樹月刀真が飛び降りた。
「アイ・キャン・フラーイっ!」
「どう見てもただ落ちているだけなんだけど……」
 漆髪月夜の声を耳にしながら、彼は落ちていき、白雪に取りついた。
「暴れるなよ、大人しくしろっ!」
 樹月刀真は【金剛力】で押さえつける。そこへ、火炎放射機の炎が向けられる。
「あつっ、熱いって焦げる焦げる!」
 弱まった炎に焼かれかける樹月刀真。
「待ってろ!」
 七枷陣が【アシッドミスト】により、酸度のない霧を発生させる。火炎放射機の先が湿り、火が消えた。
「助かった」
 笑みを見せる樹月刀真。しかし、逃れようとする白雪。

「みと、今だ! 氷術で止めろ!」
「はい、洋さま!」
「先生、白雪の足首撃っていいー?」
「? ああ、多分」
 今が機と、相沢洋の指令により乃木坂みとが【氷術】で、佐々良縁が銃で狙いを定める。
 七枷陣も、【奈落の鉄鎖】を繰り出そうと構える。
 未だ繰り出されるミサイルを、雨宮七日が【凶刃の鎖】で落とし、小尾田真奈も撃ち落とす。
 爆音と共に攻撃が炸裂。
 白雪の右足を【氷術】が、左足を銃弾が襲い、鎖が足を縛りあげ、白雪の足が動かなくなる。
「壊れてください!」
 緋桜遙遠が【罪と死】を白雪に叩きこもうとする。
「っ、やめて!」
 それをドルチェ・ドローレが銃撃で阻止。更に白雪の前に、小型飛空挺が突っ込んできた。
 飛空挺ごと、白雪が倒れる。更に【氷術】が放たれ、火炎放射機の気化燃料を凍らせる。
 その飛空挺から、レン・オズワルドが降り立った。
「理由もわからないまま殺されるつもりはない。無論、理由もわからないまま誰かを殺すつもりもない」
 ズレかけたサングラスを持ち上げつつ、彼は続ける。
「手荒い方法で悪いが、少し話を聞かせてくれないか?」
 問いかけていると、小尾田真奈とエヴァルト・マルトリッツ、漆髪月夜が駆け寄ってきた。