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リアクション
●ウルトラニャンコショー開幕!
ショーを行う人たちはその日あわただしく動き回っていた。
特殊効果を狙ったセットの配置やらなどは既に配置は終わってあるのだが、参加者への最終確認がまだ終わっていなかった。ショーの中にはレオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)への確認が済んでいなかったのだ。
「ちょ、待て待て、オレ今日は教導団のホストとして裏方で忙しいから、ショーへの参加は無理だぞ!」
レオンは急遽参加を要請されたが、首を振って参加することができないことを伝えた。
ショー自体はレオンが参加しなくともまわすことができるが、レオンが参加できないことに対して、参加者はがっくりと肩と落としていた。
こういう機会は滅多にないため、是非レオンにも参加してもらいたかった空気がひしひしと伝わってきた。
「ご、ごめんな。オレだって暇があれば手伝いたいが、裏方の仕事ってこう見えてとっても忙しいんだ。許してくれ、な?」
レオンは両手を合わせて、すまなさそうにその場を離れていった。
ショーの参加者は、レオンが参加できないことに少しだけがっくりとしていたが、超娘子(うるとら・にゃんこ)が激を飛ばす。
「さあ、子供達が待ってるニャ! そんな暗い顔のまま子供達の相手はしちゃダメニャ! 元気出して行くニャ!」
その言葉に一同は、顔を上げ応と答えを返した。
○
「「みんなー! 今日はウルトラニャンコショーへようこそ!」」
元気いっぱいにマイクを手に持ち、いかにも司会のお姉さんといった様子の月美あゆみ(つきみ・あゆみ)と藤井つばめ(ふじい・つばめ)は壇上に現れるとそう言った。
そんなあゆみとつばめの声に、子供たちがわー! と一気に盛り上がる。男の子は当たり前で、女の子も盛り上がっている。それだけこのショーを楽しみにしている子供が多いということだろう。
一通りのショーの説明をつべめが行うと、
「さぁ、早速呼んでみよっかー? せーのっ!」
あゆみが客席にマイクを向ける。
『ニャンコー!』
子供たちの元気で大きな声が響いた。
そして、そこにあらわれるのはヒーロー……かと思いきや、現れたのはウツボカズラのような見た目のカリギュラ・ネベンテス(かりぎゅら・ねぺんてす)と、いかにも特撮ヒーロー物の悪役に出てきます! といわんばかりな見た目のコレット・ミシュテリオン(これっと・みしゅてりおん)、そして見た目からして悪役な容姿のゲルト・エンフォーサー(げると・えんふぉーさー)が現れた
「ぐわははは! この施設は我々が乗っ取った! さあさあ! 子供たちは博士の研究施設に連れ帰り、強化人間として悪の手先となるのだー!」
ノリノリのカリギュラは大手を振って真に迫った演技をしている。
「待てい!」
そんなカリギュラとコレットの前に娘子が現れる。
「正義のヒロイン☆ウルトラニャンコここに参上!」
ビシィっとヒーローの格好をつける。そんな娘子の登場で会場内の子供たちは一気に沸き立った。
「おっと、私を忘れてもらっては困るな! ホワイトキャットマンここに参上!」
白の全身タイツに猫耳猫尻尾といったいでたちの叶白竜(よう・ぱいろん)もポーズをつけ、舞台のセットから登場した
「お前ら行くのだ! 我らの邪魔はさせるでない!」
大仰にコレットがせりふを言うと、戦闘員役の芦原郁乃(あはら・いくの)、霧島春美(きりしま・はるみ)、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)が登場する。
「「「ヒャッハァー!!」」」
娘子はカリギュラとコレットと対峙し、白竜は戦闘員の三人と対峙をする。
大きく腕を振って、攻撃してくるカリギュラをかわしざまに蹴りを入れ、すぐさま迫っていたコレットに向かってパンチを繰り出す。
大げさに吹っ飛ぶ怪人役の二人。
白竜は一対三の中で、魅せる殺陣を演じている。
戦闘員二人がかりで挑んできているところをバク転で綺麗に回避し、攻撃を叩き込む。
徐々にヒーロー側が優勢になってきているが、そこで戦闘員の一人が客席のほうへと向かっていく。
「ヒャッハァー! この子供がどうなっても知らんぞ、ニャンコォ!」
子供を羽交い絞めにして、戦闘員の郁乃は壇上へと戻ってくる。
子供はいやいやと暴れるが、元からの体格差もあり、すり抜けることはできないようだった。
「我らに手出ししてみろぉ? この子供がどうなってもしらんぞぉ?」
カリギュラが子供を受け取り、娘子ににじり寄っていく。
「やれ、お前たち!」
それにコレットが戦闘員に指示を出す。
娘子と白竜はなすすべも無く、やられるがままになっていくが、
「みんな、ヒーローたちがピンチよ! 頑張って応援して!」
舞台の下から、あゆみがマイクを握って子供たちに応援を要請する。
『ニャンコ頑張って! 負けないで!』
子供たちの必死の応援もむなしく、怪人の一人ハンゲルグ・ツェルヴ(はんげるぐ・つぇるう゛)とマッドサイエンティスト風の白衣を纏った蒼天の書マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)が現れる。
「クカカカカ! カリギュラよくやった! 下がってよいぞ!」
ハンゲルグがそう言うと、娘子と対峙していたカリギュラはマビノギオンの隣まで下がる。
「お、お前は誰だ!」
「ワシか? ワシはドクターヒャッハ。こいつらの生みの親よ」
娘子の問いに、マビノギオンがハンゲルグたちを指して言った。
「おやおや、活きのいい子供じゃあないか」
マビノギオンが抵抗することをあきらめ、涙目になっている子供の頬をさする。
「喜びたまえ、君はわしの手によって強い怪人へと生まれ変わるのだぁ〜!! ヒャ〜ハッハッヒャッ!!」
「ひぅ……や、やだよ……」
あまりの剣幕に子供がまたじわりと涙を浮かべて子供が泣き出しそうなる。
「おっと、そうは行かないね!」
その言葉とともに、仮面をつけたブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)がマビノギオンを急襲し、子供を救う。
「くっ、まだ仲間がいたのか!」
マビノギオンが悔しそうに顔をゆがめ、ブリジットをにらみつけた。
「舞、この子をお願いね」
ブリジットは、半泣きになっている子供を橘舞(たちばな・まい)に預けると、娘子と白竜のほうへと振り向いた。
「人質は助けたわ! さあ、ここから反撃よ!」
「き、キミは?」
娘子がブリジットに問う。
「通りすがりの仮面の騎士、でっかめんよ。ウルトラニャンコ、助けに着たわ!」
「そうか、それではでっかめん、あいつらを倒すのに協力してくれないか?」
「もちろんよ! 悪い怪人どもは倒さないとね!」
そうして、人質のいなくなったヒーロー側は反撃に出る。
娘子、白竜、ブリジットの、カリギュラ、コレット、ゲルトそして戦闘員の郁乃、春美、ピクシコラまで倒すことができた。
「さぁ、後はお前たちだけだ!」
マビノギオンを指差して娘子が威勢よく言った。
「さて、それはどうかなぁ? ヒャッハッハッハ! ワシの手駒がそれだけだと思ったか!? 行くがいい!」
マビノギオンの言葉とともに、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)と風森巽(かぜもり・たつみ)が無言でマビノギオンの前に歩み出る。
「…………」
「…………」
二人とも一切言葉を話さない。
「な、なんだ……」
白竜が薄気味悪そうにそう言うが、それでも二人は一切言葉発さない。
そして、二人に向かって攻撃をしそうになったところで、
「ま、待つんだ!」
娘子が白竜をとめる。
「ツァンダー! 仮面ツァンダーなのか!?」
「ククク、ヒャーッハッハッハ! どうだ、同じヒーローには手出しできまい? それも、肩を並べて一緒に戦ったことのあるヒーローならば尚更だろうウルトラニャンコ?」
「くっ、卑怯だぞ、ドクターヒャッハ!」
娘子が膝を付く。
しかし、微かながら客席から、声が聞こえる。
それに、エヴォルトと巽が小さいながらも反応を示した。
「ウルトラニャンコ。彼らは操られているだけのようよ! 洗脳を解くにはみんなの声援が必要みたい!」
ブリジットが子供たちのほうを向いて言った。
「お願いだ! ヒーローたちを元に戻すには君たちの声が必要だ!」
白竜も続いて子供たちに応援を求める。
「エヴォルト! 仮面ツァンダー! 元に戻って!」
「お願い、戻って!」
あゆみとつばめの声がマイクを通して会場内に響き渡る。
そして、最初は小さかった声だったが、徐々に元に戻ってという大きな声になる。
声を聴き、エヴォルトはその場にうずくまった。そして、巽は苦しそうに舞台から消えていく。
そして、その場でエヴォルトの変身が解けた。
「くっ、俺は一体……」
変身が解けたエヴォルトはあたりを見回した。
「子供たちの声がドクターヒャッハの洗脳を解いてくれたのニャ!」
娘子がいつもの調子に戻って、子供たちにお礼を言う。
「蒼い空からやって来て」
そして、会場内に巽の声が響き渡る。
「子供たちの笑顔を護る者! 仮面ツァンダーソークー1! ここに参上! とうっ!」
世羅儀(せい・らぎ)の仕掛けた白煙とともに、巽が舞台上部から飛び降りて娘子の前に現れる。
「ウルトラニャンコ、我も一緒に戦うぞ!」
「くっ、未熟な俺でも君たちと一緒に戦えるだろうか?」
エヴォルトの言葉を切欠に、特撮ヒーローものの主題歌をノンボーカルでアレンジしたBGMが会場に流れ出す。
舞もBGMにあわせてぱふぱふと気の抜けたラッパを吹いているが、音量でかき消されてしまっていた。
「ああ、一緒に戦うニャ!」
「ありがたい! 変身ッ!!」
娘子の言葉を聞き、エヴォルトが変身をする!
姿は先ほどまでと変わらないパワードスーツだが、身に纏う雰囲気はまったく持って別物だ!
「なにやら、面白いことになっているな。蝙蝠怪人、こちらも変身だよ!」
マビノギオンがハンゲルグに指示出した。
「変身!」
黒尽くめの服に身を包んでいたハンゲルグだが、その服がバリバリと引き裂け体中が盛り上がっていく。
そして、現れたのは上半身と足元が蝙蝠化していた。
変身したハンゲルグの姿に、子供たちまで凍り付いている。
ヒーロー五人がばらばらにハンゲルグに挑むが、簡単にあしらわれてしまう!
「くっ、こうなったらファイナルジャスティスアタックしかないニャ!」
娘子が声を大にして皆に言う。
「みんなの勇気が必要ニャ! ニャンコの攻撃にあわせて一緒に叫んでほしいニャ!」
「クカカカカ、小賢しい! 変身した私に貴様たちが適うはずないだろう!!」
娘子をハンゲルグがあざ笑う。
「それは、やってみなくちゃあ、わからないよ! キャットマン! ダブルキックだ!」
「了解した!」
白竜と巽が同時に駆け出し、ハンゲルグに蹴りを見舞う!
それを直に受けるハンゲルグだが、両の手で白竜と巽の蹴りを受け止めた。
「クカカ! こんなものかぁ!?」
「それはどうかな? 今だ! でっかめん!」
巽と白竜がハンゲルグから飛びのく。
「乗れ、でっかめん!」
パワードアーマーから火を噴かせ、ブリジットの腕をつかむと高速でハンゲルグまで間合いをつめるとブリジットを宙へ投げ出した。
「食らえ! パラテッカ!」
ファイアストームで炎を放っているように見せかけた攻撃を胸元からハンゲルグに向かって放った。
「くぅ……!」
エヴォルトの攻撃にハンゲルグがよろめいたところで、ブリジットがタイミングよく落下してくる。
「でっかめんブレェェェェド!!」
ブリジットの持つ女王サーベルから放たれた縦斬りがハンゲルグに命中したように見える!
「さぁ、蝙蝠怪人、トドメニャ!」
娘子がハンゲルグに向かってジャンピングキックの体勢になり、飛び上がる。
『ファイナルジャスティスアタァァァァァァァァァックッ!!!』
会場にいる子供たちの声と一緒に、娘子のファイナルジャスティスアタックがハンゲルグに命中する!
「ぐ、ぐああああああああ! お、おのれウルトラニャンコめぇ……」
ハンゲルグは悲鳴をあげ、火花を噴いて舞台から消えていった。
「さあ、残るはお前だけだ、ドクターヒャッハ!」
白竜がマビノギオンに詰め寄る。
「ええぃ! おのれヒーローめっ! ワシの邪魔ばかりか完璧怪人たる可愛い蝙蝠怪人までをも倒すとは! お、覚えておれッ!!」
そう捨て台詞をはくと、マビノギオンも舞台から姿を消した。
「みんなの声援のおかげで悪に勝てたのニャ」
娘子がヒーローたちだけになった舞台の真ん中に立ち、話し始める。
「その勇気をいつまでも忘れないでほしいニャ。君たちは未来の人間ニャ……そして未来は輝いている!」
ぱちりと、娘子がウィンクをすると、ヒーローたちも一斉に舞台から姿を消した。
○
鳴り止まない拍手を舞台裏から御弾知恵子(みたま・ちえこ)は聞いていた。
ハンゲルグを怪人としてプロデュースした後は、羅儀と一緒に裏方の仕事をしていた。
そして、カーテンコールを後ろからそっと見て、ショーが成功したことに感慨を覚えていたのだった
○
客席からアキラ二号(あきら・にごう)、血濡れのサイ(ちぬれの・さい)、ダークネスト闇夜(だーくねすと・やみよ)、ピクチャーブック『ダニエラ』(ぴくちゃーぶっく・だにえら)たちはヒーローショーを見ていた。
「おお、終わったな。中々真に迫ってたじゃねぇか。採点しねぇ?」
そう提案するのはサイだ。
「ふむ。それは中々。手の込みようから少しばかり厳しめに採点してもよさそうではないか?」
「そうじゃのう。面白そうだし、やってみようではないか」
闇夜の意見にアキラも賛同する。
「演劇とはぁ〜、ダークで暗くて悲しくてぇ〜、そしてぇ〜美しくあらなければ点数はあ〜げられまっせぇ〜〜ん!」
ダニエラが大仰に言ってみせる。
しかし、その横で子供たちが口々にすごかった、かっこよかったなどと言い出し、彼らが採点をするような空気ではなくなってしまったのだった。