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エピローグ


「……ということで、ありがちといえばありがちなケースだったんですが、何しろ規模が規模ですから」
 ルカルカの報告を受けながら、隣に控えたダリルから手渡された、各人からの情報を纏めた資料をざっと確認し、その口が深く息を吐き出した。
 大量のフライシェイドが一斉に押し寄せたのである。特に熱を持った機械や動物などの被害は大きかったようだ。だが、景観には大きな損壊は見られず、避難がスムーズに行われたおかげで、軽傷以上の人的被害も出ていない。
 亀裂の中に入っていったフライシェイド達や、産み落とされていた卵、そして女王の現状がわからない以上、完全に解決した、というわけには行かないが、時間の無い中での上出来の結果に、金の表情も僅かに緩む。
「一度破壊されてしまった柱ですが、こちらも結界とあわせて、現在強化作業中です」
 続くルカルカの報告によれば、事後処理も問題ないようだ。
 隅々まで書類に目を通してから、金はふ、と再び息を吐き出した。
「皆、良くやってくれた」
 短いが、感情の篭った労いと賛辞の言葉に、ルカルカの顔にも、満足げに笑みが浮かぶ。この一言で、苦労も報われるというものだ。しかし、金の顔はすぐに難しいものに戻ってしまった。
「だが、問題はこれからだ」
 一度こういった事件があったのだ。観光地から観光客の足が遠のけば、生活に困る者も出かねない。そういった危惧から漏れた一言だったが、ルカルカは妙に自身ありげに笑って見せた。
「それも問題ありません」




「これが例のストーンサークルね」
 言うが早いかシャッターを押したのは、アーミア・アルメインス(あーみあ・あるめいんす)だ。パートナーのミネッティから異変を聞きつけて、町へやってきたらしい。
 もっとも、到着した時には、既に避難は完了していたため、危険だからと止められて町に入ることが敵わなかったようで、解決するや否や町に飛び込んで、あちこちを写真に収めて回っている。
 その内に、パンフレットにもメインで扱われているストーンサークルに辿り着いたのだが、激しい戦闘があったためか、亀裂は塞がっているものの、周囲は酷く荒れて、爪あとを残している。それでも、家屋が倒壊したりなどという被害は出ていないようなので、アーミアもふうっと息をついて、心置きなく、とばかり再びカメラを構えた。
「けど、こうやって見ると結構大きなサークルね」
 避難していた人々によれば、子供が柱を倒した、ということだったので小さいイメージがあったが、実際には柱一本でもかなり多きい。そんな八本の柱のうちの一本に、アーミアは思わず複数のシャッターを切った。大きな罅が入っており、ところどころに欠けたところがある。考えるまでも無かった。
「これが倒れたっていう柱かあ……」
「あのう」
 熱心にストーンサークルを撮影していたアーミアに、唐突に声がかかった。
「すみません、柱からもう少しだけ、離れてもらってもいいですか?」
 そう言って頭を下げたのは、その柱を倒した張本人の小さな少年だった。その後ろにも、件の少年たちが真剣な面持ちで立っている。
「まだ、封印が完全じゃないかもしれないから、危ないかもしれないって、言われたんです」
「え、そうなの?」
 その言葉にどきっとして、アーミアが数歩下がると、少年はごめんなさい、とまた頭を下げた。
「ぼくが倒しちゃった時、上のほうが砕けちゃったから、細かいところがまだ、埋まってなくて……」
 それでところどころ欠けていたのか、とアーミアは納得すると、今度はそこを中心にまたシャッターを切った。好奇心のままにシャッターを切り続けるアーミアに、何を思ったか、少年は「あの、おねえさん!」と声を上げた。
「アーミア、よ、なあに?」
「お願いしたいことがあるんだ」
 首をかしげたアーミアに、少年たちは一度顔を見合わせて、次々に口を開いた。
「この柱の修復が終わったら、おじいちゃんたちがお祭りをするんだって」
「こんなことになっちゃって、みんなが怖がって、町に来なくなったらみんな凄く困るんだって」
「すごく綺麗なおまつりなんだ、だから、みんなそれを見てもらえたらって」
「だから、写真とか、配ってくれませんか?」
 よっぽど必死だったのか、それぞれが一気にしゃべったため、支離滅裂であったが、要するに、町で行われる祭りのことを宣伝して欲しい、ということらしい。写真を子供たちなりに、責任を感じて、何とかしたいと思ってのことだろう。
 その心を無碍にするわけには行かない。アーミアは、笑って胸を叩いて見せた。
「よし、このあたしに任せてちょうだい」

 後日、アーミアが取った写真を使ったパンフレットが話題を呼び、噂のストーンサークルと、祭りを見ようと町をにぎわせたのだが、それはまた別の話だ。


 FIN

担当マスターより

▼担当マスター

逆凪 まこと

▼マスターコメント

 はじめまして、逆凪まことです
 この度は「灰色天蓋」にご参加くださいましてありがとうございます
 初体験としては大変ありがたいことに、皆様より素晴らしいアクションをいただきまして、随分引っ張っていただきました
 おかげさまで無事、良い形での結末を迎えることが出来ました
 重ね重ねありがとうございます
  
 アクションは出来る限り熟読して判定させていただきましたが、装備品等、様々な理由で採用できなかった部分もあり
 また、力不足のため至らぬ点も多々あるかと思いますが、少しでもリアクションを楽しんでいただけましたら幸いです
 
 町に関する様々な設定も、色々突っ込んでいただけたおかげで随分日の目を見ることが出来ましたが
 実はまだまだ、眠っているいくつもの秘密もあります
 いつになるかはわかりませんが、機会があればまたこの町を訪れてみてください
 何か、また新たな出来事と発見があるかもしれません

 それでは、またお会いできることを、心よりお待ちしております