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リアクション
第四章 真面目なのはわかるが真面目にやればいいってもんじゃない
そんなこんなで、ななな達はアッシュのプロフィールに関しての各項目を次々と埋めていく簡単な作業に入った。
本来ならば具体的に行うべき個所であるが、これも尺の都合である。ダイジェストみたいな形式で以下お届けする。
・種族
「種族? 実は『その他/ニルヴァーナ人』よ! ホント『な、なんだtt(ry』な事実だよね!」(ルカルカ)
人間だったならまだいい。
「誰かに聞いたんだけどね、多分あってるよ! ズバリ『ミジンコ』!」(結奈)
「あ、ごめん間違いだったかもしんない! 『アメーバ』だね!」(結奈)
こっちなぞ単細胞生物だ。
そして極めつけはこれである。
「『野菜』」(アキラ)
最早生物というか植物である。
これらの回答でなななは、「強く育って欲しい」という意味を込めて『野菜』を正解にしたのであった。
※種族:野菜
・クラス
「『ジーンウォーカー』かな。最近進化したからその内マニュアルに載るよ!」(ルカルカ)
まぁ実際のアッシュはそんなご立派なクラスではないがこれはまだいい。
「『クラスに縛られない自由な生き方』……そんなのも悪くないと思うよ?」(詩穂)
「最近はやりの『自宅警備員』だね! 『ニート』って名前だったはずだよ!」(結奈)
「寒い今の時期が稼ぎ時の『おでん屋』だったはず。ちなみにクラスは255です」(アキラ)
他はこの有様である。
この回答でなななが出した答えは、「ちょっと近いんじゃないかな」と『クラスに縛られない自由な生き方、つまりニート(自宅警備員)』という合わせ技を正解にしたのであった。
※クラス:クラスに縛られない自由な生き方、つまりニート(自宅警備員)
・HP
お次のお題はHPである。
「もうやめて! アッシュのHPは0だよ!」(コハク)
その通りとしか思えない。
「ちなみに僕のHPは935です」(コハク)
いや聞いてない。
さて、本来この項目はと言うと数値が入るものである。だというのに、
「見た感じ女の子にも負けそう気が」(さゆみ)
「攻撃が当たらなければ問題ない」(詩穂)
この有様である。
実際攻撃が当たったらまずそう、というので少しでも前向きにと『攻撃が当たらなければ問題ない』が正解となった。
※HP:攻撃が当たらなければ問題ない
・SP
続いてセットで考えられそうなSP。こちらも本来数値が入るのだが、
「レベルを上げて殴ればいい」(詩穂)
「1+1=1とか言いそう」(さゆみ)
最早何も言うまい。
で、こちらもHP同様前向きに考えようということで『レベルを上げて殴ればいい』を正解とした。
これって『結局物理で殴ってる事だから0ってことじゃね?』『ただの脳筋じゃねーか』という意見も一部アッシュからあったが、全て華麗にスルーされた。
※SP:レベルを上げて殴ればいい
・成績
語学、理数、体育、音楽、美術、家庭といった項目である。
これには詩穂がざっと全体の項目を回答してくれた。以下その回答である。
語学:スワヒリ語
理数:素数を数えると落ち着く
体育:光速(1秒間に地球を7周半)
音楽:♂のセミと会話できる
美術:ああ! う……美しすぎます!
家庭:特技に料理と書く女子はお菓子しか作れない
理数で「何処の加速する神父だよ!?」とか美術で「何が!?」とか色々ツッコミが出たとか出ないとか。いやもっと突っ込むところはいっぱいある。
これに対して、司とシオンが『意外にも家庭は得意だったはず』と回答。
「某チョコの日や某降誕祭の日には見栄を張る為に自作でチョコやマフラーを作ったりしてる、と噂で聞いた気がします」
「そうそう、お弁当は必ず自作の手作り弁当って噂で聞いたわ」
その噂の出所一体何処だ。
そしてそれに続いてアキュートが回答する。
ご:ごめんなさい
り:理解してとは
た:頼みません
お:思い出してよ
び:ビビッときてよ
か:影薄くても、俺生きてる
「ただのあいおうえお作文じゃねーか!」
その通りである。だが本人は真面目にやっている。それだけは理解してもらいたい。
更にはローグがスワヒリ語以外にも得意言語があるという。
「オンドゥル語だ」
「聞いた事もない言葉なんだけど……」
「ワーチョマーチョマチョナチョノーン?」
アゾートが呟くとなななが意味不明な言語を話し出す。
「ああ、それがオンドゥル語だ。ちなみに意味は『まーた間違いじゃないのー?』だったか?」
「何で知ってるのさ……」
「宇宙刑事として知らないと、ね」
また一つ、宇宙の謎が増えた。
「で、実際成績ってどうなのよ? ということでこの人に答えて頂きましょー!」
そう言ってなななが回答席のアルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)にそう言った。
「グロック君かね……あー……そうだな……」
アルツールは何と言っていいか困ったように言い淀む。その仕草は言葉を選んでいるようであったが、やがて口を開く。
「実技はそれなりだが座学や実験に関する事柄は、その……何と言うか、少々こらえ性が無いというか落ち着きが無いというか、まあそういった感じで」
「で、評価としては?」
「まぁ、こんな感じだ」
そう言ってアルツールが出したフリップにはこう書かれていた。
語学:気持ちが伝われば良し
理数:計算(物理)
「本人の魔術師としての素質を損なって有り余る性格で損をしている、というのが率直な評価か」
「性格、かあ」
なななの言葉にうむ、とアルツールが頷く。
「そもそも後衛をすべき魔術師が前に出ようとしたりする時点で色々と駄目なんだが、術の行使以外に、冷静に全体を俯瞰して仲間や仕える権力者に今まで培った知識と経験から意見を述べるのが魔術師の本来の役割であるわけで……正直な話、彼は性格的に魔術師に向いていn」
「ストップ、彼死にそう」
アゾートが曇りガラスを指さす。そこには、打ちのめされたアッシュの姿が。
「……ごほん。まぁ、素質はある。素質はな。後はグロック君の努力次第だ」
アルツールは『キリッ』という効果音が聞こえそうな引き締めた表情になる。
「いやフォロー遅いから」
もうアッシュのHPはとっくに0よ!
「成程、結論としてはこういうわけか」
そう言ってエースが『落ち着きがない性格』と追い打ちをかける。オーバーキルやめて。
「それじゃ正解は『落ちつけ』ってことでいいかな」
「それどの正解?」
「えっとね、成績と性格」
一気に二つも項目が埋まってしまった。
※成績:落ちつけ
性格:まぁ落ちつけ
・所持金
その時によって一定しない数値であるが、『現時点での』という事でのお題となった。
出た回答はと言うと、
「45000ペリカ」(詩穂)
という何処かわからない単位の金額が出てきたかと思うと、
「働いてないのに何気にお金持っていそう。親のスネかじり? 生活保護の不正受給?」(さゆみ)
というまさかの疑惑が生じた。
これに関しては、先程クラスが『ニのつく自由業』と決まったので『疑惑の所持金』と深く触れてはいけない、ということで決定したのであった。
※所持金:疑惑の所持金
・身長と体重
身長に関してはアッシュは『身長が伸びないことを気にしている』という前情報があったので様々な回答がそろった。
まず出てきたのはローグの『148cm』という具体的な数字。
これに関しては「これボクの数字だよね!?」とアゾートからクレームがついてしまった。
続いて出たのは、
「グロック17が9丁分」(フィッツ)
という具体的なんだかそうでないんだかよく解らない数値であったり、
「バクテリアよりはでかい」(さゆみ)
という間違っちゃいないんだが大雑把な内容であった。この回答は「嫌いじゃないのでキープ」となななはしていたが、
「低い方だよね…でも可愛いというほちみっこでもない中途半端さ。まとめると『彼氏にするには微妙な身長』」(エース)
というのが具体的かつ分かりやすい、ということで正解になった。ちなみにアッシュは泣いてた。きっと自分の事をよく解ってもらえた事による嬉し泣きだろう。
そして体重。体重は回答が身長と似通っている者が多かった。
身長に続きローグが『46kg』と具体的な数字を挙げたが、「ボクのばらすなー!」とアゾートが怒りだしてしまった。
続いて出た数字は、
「グロック17が81丁分」(フィッツ)
というよく解らない数値であった。それに続いて
「ゴキブリよりは重い」(さゆみ)
という回答が間違っちゃいないというので正解となった。
※身長:彼氏にするには微妙な身長
体重:ゴキブリよりは重い
・年齢
これに関しては外見年齢ではなく、実年齢がお題となった。
まず上がったのは詩穂の『もう中学生』という段ボールを連想するようなものであった。何故段ボールなのかはよくわからない。
続いてアデリーヌが『少年ぽく見えるが実は10000歳オーバー』と某悪魔の閣下ばりの年齢であったと衝撃の暴露をするが、それに対してシオンがクラスの時に出した回答が目に留まった。
「確か魔法使いよね? 年齢的な意味で」
魔法使いなんだから間違っちゃいないだろう、という事でこちらはクラスの回答であったが、こちらで正解ということに決定したのであった。
※年齢:魔法使い(年齢的な意味で)
・外見
この項目はパッと見から身体の各パーツまで、ひっくるめての物となった。
「えーっと、印象的には『はかなげ』かなぁ」(ルカルカ)
「基本的に『ドヤ顔』!」(エリス)
とパッと見の外見は対照的な回答となった。
各パーツで見ると、
「瞳色は邪気眼で肌色は美白」(詩穂)
「髪型はアフロで髪色は青、瞳色は白……何か想像したら笑えるわ。これはこれで見たいんだけど」(エヴァルト)
「逆モヒカンだよ! 『ひゃっはー!』には負けないね!」(結奈)
「肌の色は日光に弱い白色系って感じかな」(エース)
「そうそう、髪灰色、目が赤よね。兎系草食男子キャラでいけるんじゃない?」(リリア)
「髪型はセミロングで髪色は青、瞳色は緑の肌色は黄色系……悪い、司会席見て書いた」(ローグ)
と、最後のローグの回答と髪型は除き、基本的には薄い色、と言うのが共通しているようであった。というか邪気眼ってどんな色だ。
これで決まるかと思うと、さゆみが「確か顔には目と鼻と口があってそれから髪の毛はヅラ疑惑濃厚で……」と何とも分かりやすい回答を出した。
それに対し呆れた様にアデリーヌが「そんなわけないでしょ」と「見るからにヅラ丸判りな安いカツラを愛用。気分に合わせて七色のカツラを日替わりで変えている。本人はカッコいいと思っているがダサくて痛い」とメッタメタに打ちのめしてくれた。
そしてダメ押しとばかりに「見た目が既に痛すぎる」という回答を出し、一番纏まっているという事で正解となった。
※外見:見た目が既に痛すぎる
・服装
「外見決まったから次服装ねー。あ、これ武装も一緒にしちゃっていいから」
そんな感じで始まった服装項目の回答は以下の通りであった。
「シャンバラ電機のノートパソコン!」(ルカルカ)
いやステマやめい。
「草食系男子として売り出せは個性でるから、たいむちゃん耳」(リリア)
残念ながらつけた所で可愛くなるとは思えないので却下。
「それなら服装で『拘束ベッド』!」(ルカルカ)
それ服装ちゃう。
そんな中、黙々と何かを書き連ねていた弾が挙手。フリップを挙げる。
「よく解らないけど、何かこう、駆り立てる物があったんだ」
弾はそう語った。そして、フリップにはこう書かれていた。
武装1…メイスオブ長ネギ
武装2…シールドオブ長ネギ
武装3…ローブオブ長ネギ
武装4…長ネギのティアラ
武装5…長ネギの指輪
武装6…ゆでた長ネギ
武装7…生の長ネギ
武装8…炒めた長ネギ
一体何が彼を駆り立てたのだろうか。
「正解!」
そして何故これを正解にしたのだろうか。
「あ、正解出た後だけど、それ見て思い出したわ。制服燃やしちゃったとか言ってよく海パン一丁で歩いてたわよ、アイツ」
エリスのその言葉に「そんな覚えは一切ない!」とアッシュが叫んでいたが、思い出したというなら正解なのだろうとこっちも正解となった。
※服装:長ネギで纏めた武装。服は燃やしたので海パン一丁。
・スキル
続いて『スキル』となったが、こちらは思い出せなかったのか挙手が少ない。
「『覚醒光条兵器』とかあったと思うよ!」とルカルカが回答したが、そんな御立派なスキルがあるとは思えない。
そして、武装に続き弾がまたやってくれた。
「何かこう、駆り立てる物があったんだよ……」と弾は後に語る。
スキル1…長ネギフラッシュ
スキル2…長ネギボンバー
スキル3…長ネギドリルアタック
スキル4…エンドオブ長ネギ
スキル5…ショックウェーブ長ネギ
スキル6…さよなら、長ネギ
スキル7…また会えたね長ネギ
スキル8…長ネギよ永遠(とわ)に
「だから何で長ネギ何だよ!」とアッシュが叫んでいたが、駆り立てる物があったんだから仕方がない。
だから「正解!」ってなななが正解にしたのも仕方のないことなのである。きっと駆り立てる物があったのだろうから。
※スキル:長ネギ
・属性
様々な属性攻撃に対する耐性項目である。こちらに関しても様々な意見が出た。
まず出たのは「あーアッシュさんですか? そうですねぇ……あんま話したことないからよくわかんないんですが……」と前置きした貴仁の回答である。
「幻惑系の魔法に掛かってしまうって事は意外とメンタル弱いんじゃないですかね?」
と貴仁は語った。そんなメンタルの人間……いや野菜になんてひどい事を。
これに対して結奈が聞いた、という回答はこうだった。
「物理耐性は―100%だよ! 物理属性の攻撃を受けると逆に回復するんだって。凄いよね!」
物理攻撃をすべて快楽に変えてしまうという猛者のようであった。
「あ、後光輝耐性は低いって聞いたよ。豆電球の光を浴びるだけで即死するレベルだって」
流石猛者は癒しの光は嫌悪すべき存在であるらしい。
他の属性に関しては「氷結は361%」という詩穂に対し、「炎熱耐性だけは異常に高いけどその分氷結に弱いから冬は拙いんじゃなかった?」とエリスの回答で割れた。
これはどちらが正解なのか、という所でシオンとリルの回答で決着がついた。
「所謂リルと同じツンデレよね♪」
「そうそうツンデレ……って誰がツンデレだ!」
というわけで、正解は『ツンデレ』である。さっきからアッシュは怒っているように見えるが、きっとツンなだけだろう。デレが見られるのはいつになることやら。
※属性:ツンデレ
・口調
「口調って言ったらこんな感じだろ?」
そう言ってアキラが出した回答は以下の通りである。
一人称:それがし
二人称:おまはん
口調:横綱口調「〜ごわす」「〜ドスコイ」
「何で力士口調なんだよ!?」
「小太りって言ってただろ!?」
「勝手に言われただけじゃねーか!」
ガラス越しで口論を繰り広げるアッシュとアキラ。その光景を回答席から見つめる者が居た。
「アッシュ君……なんでこんな……同期よりも確かに影は薄かったけど……まさかこんなことになるだなんて……」
雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が溜息を吐きながらそう呟く。その眼差しは可哀想な子を見つめるそれである。
リナリエッタはアッシュとは何度か絡み、プレゼントまで送った唯一の人物である。
「まあいつかはこうなると思っていたからちょうどよかったけど」
そんな人物にこんな風に言われるとか、アッシュが不憫でならない。一体何故こうなった。
「おっと、何か回答ある?」
「無いわけないじゃーん! えっとぉ、アイツは二人称を女の子はバストサイズでアダ名をつけるらしい!」
リナリエッタはそう言って『例、A子とかG子とか』と書かれたフリップを挙げる。
その瞬間、会場中が「うわぁ……」とドン引きしたような目でアッシュを見る。
「え、何? 何か今俺様凄い見られてる感じがするんだけど」
「今アッシュくんが最低だと判明しました」
「え!? 何で!? 俺様何もしてねーっていうか被害者だぞ!?」
「じゃこれも正解でいいのかな?」
「おっけー。あ、さっきの力士口調も一緒に」
「おい!? 一体なんなんだよ!?」
「あ、ちょっと話しかけないでくれるかな?」
「いや何でそんな態度取られなきゃならないんだよ!?」
※一人称:それがし
二人称:おまはん+女の子はバストサイズでアダ名をつけるらしい
口調:横綱口調「〜ごわす」「〜ドスコイ」
・生い立ち
生い立ちに関しては様々な回答が出そろった。
「放蕩の旅を続けてた。あ、今でもか」(エリス)
「確か……オンラインゲームにハマっていた……ん? 働いたら負けだと思っていたでしたか? ……いや、正直モテたことがないだったような?」(司)
現在クラスが自宅警備員である事を考えれば司の回答が正解かと思われた。だがそこで出てきたのはアキラの回答である。
「漬物時代を送っていた」
これは『種族:野菜』ということを考えれば当然の事。即座になななはこの回答を正解にしたのである。
※生い立ち:漬物時代を送っていた
・将来の夢
これは回答は一つだけであった。
アキラの「早く人間になりたい」という回答に、一同納得し文句なしの正解という事で決まった。
※将来の夢:早く人間になりたい
・パートナーと契約した理由
これも回答は一つだけであった。
フィッツの「ライバルになると悟ったから」という回答であったが、そもそも「アッシュにパートナーがいるのか?」という議論に発展した。
これに関してもフィッツは「レミントンという英霊である」と回答し、「アッシュの友達から回答が出たのであれば間違いではないだろう」という結論に達し正解となった。
ちなみにアッシュは「そんなやついねーよ! てかなんでさっきから銃絡みなんだよ!?」などと意味不明の供述をしているという。
※パートナーと契約した理由:ライバルになると悟ったから
LC:レミントン(英霊)
「さて、後の項目は――っと、何!?」
なななが次の項目へ行こうとしたその時、辺り一帯が煙幕で包まれる。
「え、何これ? 辺りが見えないけど、キミが何かやったの?」
「なななにもわからないよ!」
アゾートに言われ、なななが首を横に振る。
煙幕はどんどんと広がり、皆がざわめき出す。
「……何だ? 何が起きたんだ?」
何やら辺りが騒がしくなり、アッシュが首を傾げる。
「よし、今だ! 来いアッシュ!」
そんなアッシュの下にコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)が人の形態になり駆け寄ってくる。
「え、何だって言うんだ? いきなり変な煙が出てるが……」
「それは俺がやった。こんな悪ノリが酷過ぎる所、我慢なんてできるか」
イレブンナインが顔を顰める。この悪ノリと言っても過言でない状況に、ルカルカの横で剣になって見ていたが、余りの酷さに彼の正義感は耐え切れなくなったのである。
「まるでこんなの公開イジメじゃないか。さあ行くぞアッシュ、こんな所早く逃げ――」
「ていいわけないでしょうがぁッ!」
アッシュに手を伸ばすイレブンナインの顔面を、リカインがハリセンでフルスイングする。
「えぇあッ!?」
スパーンと小気味のいい音と同時に、イレブンナインが吹っ飛ばされる。
「い、いきなり何をするんだ!?」
「それはこっちのセリフよ……この場で逃げる? 公開イジメ? 何を言っているのよ! 今アッシュ君は限りなく美味しい立場にいるのよ!? 芸人だったら口では嫌がっても心の中では『兄さんありがとうございます!』って感謝の気持ちでいっぱいよ! そんな美味しいシチュエーション、邪魔させるわけにはいかないわ!」
「……俺には何を言っているかさっぱりわからないんだが、データ不足か?」
「いや解らない方が正解だろこれは」
「ていうか芸人じゃねぇし」と小さくアッシュが呟く。
「何を言っているかわからないが、こんな公開イジメみたいなもの見過ごせないな。それにアッシュ、嫌なら嫌だともっと自分の事は自分で主張するんだ」
「いや俺様結構主張してると思うんだが……」
「何を弱気な事を言っているんだ。理不尽には戦え。流されるな!」
イレブンナインがアッシュの両肩を掴んで力強く言った。アッシュに気を取られ、イレブンナインは気づけなかった。
「はい、アウトー」
背後をレオーナが取った事に。
「な――」
何か言う前に、レオーナはイレブンナインを抱えて何処かへと連れ去る。
何処へ連れ去ったのかは解らないが、恐らく近くだろう。少ししてから、イレブンナインの「アッー!」という悲鳴が聞こえたから。
「……あーあ、変にお堅いんだからねぇ……もーちょっちテケトーでいいのになぁ」
その悲鳴を聞いて、ルカルカが呟く。
「で、何がアウトだったんだろうね」
「コメディの空気読めなかったってことじゃない?」
アゾートの呟きに、ななながそう答えた。
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