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第二章 「名前だけで何でこんなに回答出るんや」と誰かが叫ぶ

「さーて序盤で時間かけすぎたから、ここからは巻きで行くよー。それじゃ最初のお題は『名前』! アッシュくんの『名前』を思い出していこうか! わかる人挙手!」
 ななながそう言うと、一斉に『俺だ私だあたいだあたくしだ』と言わんばかりに回答者から手が上がる。
「おーみんなノリノリだねー。それじゃ最初はエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)さん!」
「おっと俺か。いやー二回くらい一緒に冒険してる筈なんだけど、全く記憶にないんだよねー。可愛いお嬢さんなら覚えてるんだけどさ。でも名前くらいは合ってるだろ」
 そう言いながらエースがフリップボードを挙げる。
アッシュ・グレイだろ?」
「ちげぇよ!」
 曇りガラスの向こうからアッシュが吼えた。
「違う? じゃあリトル・グレイの方だった?」
「なんでグレイを押すんだよ! アッシュって名前何処行ったんだよ!?」
「あだ名だろ? 宇宙人キャラだけどなななと被って結果淘汰されたはずだけど」
「合っているヶ所がどこにもない!」
 アッシュに言われ、エースがどうでもよさそうにフリップをしまった。
「じゃあ次いくよー。次の人は日向端 茶子(ひなばた・ちゃこ)さん!」
「茶子の番? じゃあ茶子答えちゃうよー! アッシュなんて人知らないから適当に答えちゃうよ!」
「適当かよ……」
 不安しか感じられない言葉と一緒に茶子がフリップを挙げた。
「アッシュ……ウィザードちゃん?」
「疑問形の上間違えてる!」
「えー違うのー? 魔法使いなんでしょー?」
「魔法使いだからって何で俺様の名前まで魔法使いになってるんだよ! 駄目だ駄目だ! 次々!」
 ちぇー、と茶子はぶーたれつつフリップを下げる。
「おーアッシュ君がやる気を出してる」
「出さないととんでもないことになるだろ! 早く終わらせるぞ次ぃッ!」
「次は俺に任せて貰おうか!」
 そう言って手を挙げたのはエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)
「自信満々だね、よしじゃあキミだ!」
 なななに言われ「任せろ」とエヴァルトが立ち上がる。
「まぁ数える程度だが俺もアッシュとは一緒に冒険した身だからな。どんな内容だったかまでは覚えちゃいないが。で、誰の話だっけ?」
「おいコイツ本当に大丈夫か!?」
 叫ぶアッシュにエヴァルトは「ジョークジョーク」とけたけた笑う。
「まあ安心しろって。アッシュ・グロックの名前だろ? そうだな……こんな感じだろ」
 そう言ってエヴァルトがフリップを挙げた。
「アッシュとは仮の名 本名はダストでした」
「仮名じゃねーよ!」
「ちなみに前者が姓で後者が名だからな」
 エヴァルトのフリップにはしっかりと『アッシュとは仮の名 本名はダストでした』と書いてある。解説すると『アッシュとは仮の名(姓) 本名はダストでした(名)』という事だ。
「そんな名前ねーよ!」
「まあまあ、落ちつきなよ」
 ぜーぜーと息を荒げるアッシュを、どうどうと宥める様にアゾートが言った。
「いや落ちつけって言われてもな……」
「どうあがいても苦労するのは目に見えてるんだから。受け入れるのは難しいと思うけどさ」
「そう言われてもな……」
 アッシュとアゾートがそんな事を言っている間にもななな達の方は進んでいる。
「それじゃ次は月詠 司(つくよみ・つかさ)さん!」
「えーっと私自身よく知らないんですけど……確か、アッシュ・グロ…グロッキーくん、ですよね?
「違うわよツカサ。確かアレよ」
 そう言うとシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)がフリップを出す。
「マッシュ・ルームよ♪」
「掠りもしてねぇよ!」
「あら、デニッシュ・マーブルだったかしら?」
「もっと離れたわ!」
「ごめんなさいねデニッシュ☆」
「定着させようとするなよ!」
 そんなアッシュとシオンのやり取りを見て呆れた様な溜息を吐き、「ちげーよ」とリル・ベリヴァル・アルゴ(りる・べりう゛ぁるあるご)がフリップを出す。
「確かそうだ、ハッシュ・タッグだよ」
「何処どうしたらそうなるんだよ!」
「違うか? ならこっちか」
 そう言ってリルがもう一枚フリップを出す。
「これなら合ってるだろ。クラッ●ュ・バンディ●●ー
「おいなんだあの伏字は!?」
 何故かリルのフリップは伏字になっていた。
「ちょっと大人の事情的にヤバいと思って伏字にしておきました!」
 ななながサムズアップ。そして同時にレオーナが【ゴボウ】片手にリルに向かって駆けだした。
「え? ちょ、何!?」
 そして捕獲すると裏へと運んでいき、
「ちょ、何でパンツ下ろすんだよ! な、何!? ど、どうするいやそんなの入らないから助けてパパ――アッー!
裏でリルの悲鳴が響き渡った。
 尻を押さえて死んだ目をしたリルと一緒に一仕事終えたような爽やかなオーラを纏ったレオーナが戻ってきたのはそれから少し経ってからである。
「……あんな感じだし、最初からこのテンションだと正直もたないよ?」
「最初でこれって後半どうなるんだよ……」
 アゾートの言葉にアッシュがわなわなと震えながら呟いた。
 とりあえずカオス、とだけ言っておく。後纏めるのに本当に時間がかかった、という事も。