リアクション
第十一章
「復活したと思ったら、消えてしまったのう」
ファタがやや残念そうな調子で言う。
目の前には、広大な陣の跡がぽっかりと広がっていた。
「……あの青い光、なんだったのでしょう?」
詩穂がウゥン、と目を細めながら首を傾げる。
「転送装置ですよ。元から、この神殿にあった装置だそうです」
ひょっこりと姿を現した輝月が言う。
「転送装置?」
「ふぅん……なるほどね」
九弓が並ぶ黒石を眺めるようにしながら言って。
詩穂が目を瞬かせた
「九弓さん――あ、目的のものは見つかりました?」
「うん。まあ、ね」
あの後、九弓達が辿り着いたのは神殿の機能中枢だった。
そこで彼女は、エドワードが得た『記録』と同様の情報と、この神殿の機能に関する情報を得ていた。
マネットがちょここっと皆の前に出てくる。
「この神殿にあった転送装置は――
ゴアドーを封印する時にゴアドー自体のエネルギーを使って神殿へ移送するためのもの。
それを寺院が逆利用したというわけですねっ」
「そうです」
輝月が頷く。
「寺院は、転送装置によってゴアドーを空京に移動させるつもりだった」
そこで、詩穂が、はてと首を傾げた。
「『つもりだった』?」
「いや、それはさすがにマズイだろーなーと思いまして、ね。
寺院の目を盗んで制御盤らしきものを適当に弄ったわけです」
「……あ、あれは適当だったのか……」
輝月の後ろでムマの顔がサァっと青くなっている。
「壊す、というのも考えましたが、変に暴走されたりしても困りますし――
それで、まあ、なんとか少しだけ移動ポイントをずらす事が出来ている筈です。たぶん、おそらく、だと良いですねぇ」
「また他人事のようにおぬしはぁあああ」
ムマが、あっはっはと笑う輝月の首を掴んで、ぶあんぶあん振る。
その向こうで。
「……ゴアドーが……」
エメネアは愕然としながら地に膝を付いていた。
「エメネア!」
ケイ達がエメネアのそばへと駆け寄ってくる。
「み、皆さん……わたし……駄目、でした……。
ゴアドー、復活しちゃって……。
星槍も持っていかれてしまって……。
……っ……ごめんなさいぃ、ごめんなさぁいぃいい!」
エメネアの悲痛な泣き声が響いた。
と、その頭を、ぺんっと燕が扇子で叩く。
「へうっ!?」
「何を謝ってますのん?」
「だ、だって、わたし……皆さんが、あんなに頑張ってくださったのに……」
「言ったじゃろう? 一度の失敗は一度の成功であがなえば良いのじゃと」
縁が、ついっとエメネアの鼻先を突いて笑う。
「一度も二度も一緒じゃ」
「槍は取り返すし、ゴアドーは封印する。ただ、それだけの事だろ」
ケイがエメネアの手を取って、彼女を立たせてやりながら言う。
「皆が居るんだ。きっとどうにかなるさ」
■
「星槍の方は、今からすぐに追えば連中に追いついて取り返すチャンスがありそうだけど」
言ったのは九弓だった。
「追う?」
ムマが首を傾げて、九弓が並ぶ黒石達を指差した。
「転送装置。さっき制御盤を確認してきたけれど、ここに居る皆を飛ばすくらいのエネルギーは残っていたわ。
扱い方なら、中枢部で目を通してあるから大丈夫。
それから、ゴアドーたちが飛ばされたのは、おそらく空京の島内北部。
出力が安定してないみたいだから全く同じ所へは飛ばせないけれど、近くには行けると思う」
■
「……ゴアドーを封印するにはどうしたら?」
詩穂の呟きに、ルシアンが頷き、エメネアから聞いていた説明を話し始める。
「ゴアドーを封印するには、ゴアドーの体に星の力を流し入れなければいけないそうです。
そのために。
印となる力の欠片をゴアドーの体の定められた幾つかのポイントへ打つ必要があります。
力の欠片は、人に宿す事が可能だそうなので、こちらは皆で手分けして打ち込むこんだ方が良いでしょう。
力の欠片を皆に配るだけなら、星槍が無くとも、エメネア様の力だけで問題ないそうですが……」
「つまり――たとえば、詩穂が力の欠片を宿してもらって、
ゴアドーによじ登って、そのポイントに力を打ち込んでくる、ということでしょうか?」
詩穂が、自分自身がよじ登っている様子を想像しながら、うーんと眉を顰めた。
と、詩穂が、ぽんっと手を打ち。
「っていうか、空が飛べる人たちにお願いすれば良いですね」
「それが……」
ひょこりと顔を覗かせたエメネアが、あぅっと申し訳無さそうに続ける。
「ゴアドーの咆哮は……一定距離の空間を揺らしてしまうんです。だから、空から向かうのは、よじ登るより危険なんですぅ」
「あら……」
詩穂が打ち合わせていた手を、たらんっと垂らす。
「ゴアドーの体に印を打ち込んで……その後は?」
月奈が先を促すように首を傾げた。
エメネアが続ける。
「星の力を一気に流し込みます。
とても大量の力を繰る必要があるので、星槍が無いと……。
でも――」
そこで、エメネアが、やや間を置いてから。
「例え、星槍が無くても、なんとか……なんとかしてみせます!」
「『己』を削ってでも?」
マネットがエメネアを見上げて、言う。
と――。
「準備が出来たそうですよ」
輝月の言葉と共に、辺りに立つ黒石に青白い光が宿り始めた。
「皆さん――ごめんなさい……」
エメネアが、ぐぅっと拳を握りながら皆の方へと瞳を向けた。
「ゴアドーは絶対に封印しなければいけません……もう一度、力を貸してくださいっ!!」
この度は期日通りの納品が行えず、
皆様に大変なご迷惑をおかけしましたことを、心からお詫び申し上げます。
誠に申し訳ございませんでした。
〜〜〜
改めまして。
シナリオへの御参加有り難うございます!
そして、アクションの作成お疲れ様でした!
実は前編と銘打っておきつつ、
怪獣が復活しなかったら前編だけで終わってしまう予定だったりなんだったり。
結果としてはリアクションにある通りで、こう、中々楽しいことになったなぁ、と。
ともあれ。
後編のシナリオは9月7日にガイドが公開となりますので、
よろしければ引き続きお付き合いください。
しかし……
遅刻状態での執筆というのは本当に辛くて、お腹痛くて……
この辛さは二度と味わいたくないなぁと、
文字通り痛感いたしました……。
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9/26
一部のキャラクター様の呼称を謝って表記していた箇所を修正させて頂きました。