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リアクション
第2章 魔女オメガとの交流会話
「うぁ〜・・・いっぱいあるなぁ。えーっと・・・魚料理は・・・これかな」
「それを食べたいのか?」
「うん、オメガくんに頼まれたんだ♪」
「じゃあ・・・私が取り分けよう」
塩釜を涼介が割ってやり、皿に取り分けてあげた。
「ねぇ、それ何?」
器に魚料理をきれいに盛りつけている、魔女の仮装をしているアリス・ハーバート(ありす・はーばーと)に声をかける。
「鯛のカルパッチョよ」
アリスの傍にいるミーナ・シーガル(みーな・しーがる)は、どこかに魔法がしかけられいないか、もの凄い形相で周囲を警戒していた。
「(今のところ異常はないようね・・・)」
「それもらっていこうかな」
「いいわよ、どれくらい食べる?」
「―・・・うーん・・・いっぱい!オメガくん以外にも沢山人がいるから」
「そっか、じゃあこれくらいかな」
「やっぱり飲み物もいるよね・・・」
「あぁそれなら・・・」
クレアの方に視線を移し、フルーツカクテルを持ってきてもらう。
「こぼすといけないから、カクテルは私が持とう」
涼介とルインたちは、主催者がいるテーブルの方へ歩く。
「オメガくんお待たせー」
「持ってきてくださったのね、ありがとう。美味しいですわ」
ハシでつまみ口の中へ運ぶ。
「口に合ってなによりだ」
「まだ沢山あるから食べてね、カシスジュースもあるわよ」
「私のフルーツカクテルはどうかな・・・?」
「サイダーの加減と、甘すぎない味がいいですわね」
美味しそうに食べるオメガの姿に、クレアは照れながら笑う。
「魚なら白ワインがいいですよね」
シルヴァが空っぽになったオメガのワイングラスに注いでやる。
「なくなったらこっちもあるよ」
甘い飲み口のアイスワインを見せながら、ルインが無邪気な笑顔で言う。
「オメガさん外で流行っている歌を聴いてみません?」
「えぇ、ぜひ聴いてみたいですわ」
メイベルはオメガのために、彼女の傍らで歌たってあげた。
他の生徒たちもメイベルの透き通るような歌声に、思わず聞き入ってしまう。
「―・・・いかがでしたでしょうか」
皆の注目を浴びてしまいメイベルは頬を赤くして感想を聞く。
「とてもお上手でしたわ」
オメガはパチパチと可愛らしい歌手に向かって拍手する。
「喜んでもらえて嬉しいです♪」
褒めてもらったメイベルは、嬉しそうに微笑む。
「喉が渇いちゃいましたね」
「あっ、よかったらこれどうぞ」
「ありがとうございます♪」
アリスからカシスジュースを受け取り、メイベルは美味しそうにゴクゴクと飲んだ。
「ねぇっ、私が作ったパンプキンパイとモンブランも食べてみてよ」
「美味しそうですわね、ではいただこうかしら」
皿にもられたセシリアの手作りを、ホークを使って一口食べてみた。
「甘さ控えめで食べやすいですわね」
「そう?気に入ってもらってよかった♪」
「やぁ、話かなりはずんでいるようだね」
彼女たちの会話にフェリックス・ルーメイ(ふぇりっくす・るーめい)が割って入る。
「ルーメイのやつオメガさんにもの凄く会いたがってたけど・・・大丈夫かな?まぁ腐っても紳士っぽいから女の子が嫌がることはしなさそうだけど・・・なにかあったらとにかく平謝りしよう。うん・・・そうしよう・・・」
ジーナが作った手の平サイズのミートパイをつまみながら、今井 卓也(いまい・たくや)はフェリックスの動向を不安そうな顔で監視していた。
「この度はパーティーに招待していただき、ありがとう。俺の名前はフェリックス・ルーメイ、ヤーウェ嬢とぜひ話がしたくてね」
なかなかオメガが1人になる気配がなかったため、待てなくなったフェリックスはゆっくり彼女の方へ近寄り話しかけた。
「どうもこんばんわ、どうぞ楽しんでいってくださいな」
「楽しい夢は覚めない方がいいと言っていたね。ヤーウェ嬢にとって楽しい夢とはどんなものなんだい?女性は甘いものを食べたり愛しい人と共に居るのが良いらしいが・・・ヤーウェ嬢もそうなのか?」
「―・・・わたくしの場合、沢山の人とお喋りしている夢ですわね」
「そうか・・・ヤーウェ嬢はずっと1人きりで暮らしているのだったね」
「えぇ・・・そうですわ」
「もしも夢を見せてくれるなら・・・どうか君の夢を見せてくれ」
「あら・・・わたくしなんかでよろしいの?」
「もちろんだとも」
「―・・・そうですの・・・・・・。フェリックスさんが眠った時に見せてあげますわ」
オメガが出てくる夢を見たいと言うフェリックスに、彼女はクスリと笑いかけた。
「この度はパーティーにお招きいただきありがとう」
「そろそろ飲み物もたりなくなってきた頃ですよね?赤ワインをお持ちいたしました」
メニエス・レイン(めにえす・れいん)とミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)がオメガに挨拶にしにやってきた。
「去年に購入しておいたボジョレーヌーヴォーがあったわよね。それをお出ししなさい」
「はいメニエス様」
「まだ解禁されないワインを楽しむのもいいわよね」
「買っておいたワインなら、いつ開けてもいいですからね」
ワインのコルクを抜くとミストラルは、メニエスとオメガのグラスへこぼさないように注いだ。
「ではお言葉に甘えていただきますわ」
「フフフ・・・いい香ね。本当ならもっとねかせたやつを持ってきたかったのだけど・・・」
「えぇ、年数を重ねるごとに味の深みが増しますものね」
「そこまでお気使いなさらなくてもよろしいのに」
「せっかく呼んでくださったんだから、それくらいはしないと。ここにお料理がたりないわ、ミストラル持ってきてくれる?」
「かしこまりましたメニエス様」
ミストラルは料理を取りに行く。
「赤ワインですから・・・それに合ったのを選ばないといけませんよね。これなんか美味しそうですね」
テーブルの上に置いてある取り皿をトレイに乗せ、ユニが作ったポトフを選ぶ。
「持ってまいりました」
「そこに置いてくれるかしら」
ミストラルが持ってきたポトフに、メニエスはさっそく手をつける。
「なかなかいい味付けじゃないの。そういえば・・・うちの学校の校長とパートナーを組みたかったんですってね」
「えぇ・・・今のパートナーだけでいいと言われて、断られてしまいましたわ」
「あらそうなの・・・それなら仕方ないわね・・・。さしつかえなければだけど、ここに追いやられてしまった時の生活はどんな感じだったの?」
「光の届かない場所に追い込まれてしまった時は・・・沢山の人たちを憎みましたわ」
「そうよね・・・あたしなんて突然1人で生活しろなんていわれたら耐えられそうにないわね。・・・どうしてそんな強力な魔力を得てしまったのかしら」
「正直わたくし自信にもよく分かりません。いつの間にか・・・このパラミタの地にいて、周りにも親と呼べる存在もいませんでしたし・・・」
「(親がいない・・・ということは、自然的な結集によって生まれたのかしら・・・?)」
「―・・・でも・・・今はこうして皆さんとお話することができて、気分が安らぎましたわ」
「それはよかったわね」
にっこり微笑む魔女に、メニエスも笑い返す。
肩出しのパンプキンガールの仮装をした広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)とウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)が、丈短いスカートをヒラヒラと揺らしながら、焼き菓子の入ったバスケットを抱えてオメガの方へ寄ってきた。
「ファイとウィノナちゃんが作ったお菓子、よかったら食べてください」
ファイリアは持ってきたバスケットからクッキーを、白い皿の上へきれいに並べる。
「あら、ありがとう。ではいただこうかしら」
「―・・・ファイと一緒に行きませんですか?ファイはオメガちゃんと一緒に遊びたいです。オメガちゃんの楽しい顔を見続けたいです!」
美味しそうに食べる魔女に、意を決してファイリアは真剣な眼差しを向けた。
「強い力に対する恐怖心・・・分かるよ。かけがえのない人を自分の手で失うのは、すごく辛い事だと思うから。でも・・・寂しいんだよね?その気持ちを押し殺すのって、きっと耐えられないよ。ボク達はオメガさんの力も、いま思っている感情も受け止めていきたいと思っているよ。ちょっとだけ勇気を出してみる気は・・・ないかな・・・?」
「うーん・・・ごめんなさい。一緒に行くことはできませんわ。わたくしが外に出てしまうと、怖がってしまう人もいるでしょうし。きっといろんな方たちに迷惑かけてしまいますわ」
「自分が外へ出ることで、他の人が傷つくかもれないことが不安なんだね・・・」
ウィノナは残念そうに顔を俯かせる。
「それなら・・・お友達でもいいのですっ!」
「えぇ、それでしたらぜひ」
「やったぁっ、オメガちゃんとお友達になれた♪」
「それじゃあ・・・ボクも・・・?」
笑顔でコクリと頷くオメガに、ウィノナは嬉しそうにはしゃぐ。
「沢山お友達が増えたようね」
うさ耳をつけて仮装した十六夜 泡(いざよい・うたかた)が、持参してきたおつまみとお酒の入ったグラスを片手にやってきた。
「そう言えばさ、誰かと契約すれば外に出られるんでしょ?」
「えぇそうですわ」
「だったら私と契約しない〜?私、オメガのことをもっと良く知りたいし、仲良くなりたいと思ってるし!」
考え込んでいるオメガに、泡は言葉を続ける。
「それにさ、寝ている時に良い夢を見れたら幸せかもしれないけど、起きているときに良い夢・・・ううん、良い現実を過ごせるならサイコーじゃない!?」
「―・・・わたくしがここから出ることを、他の人々はあまりよく思わないでしょう・・・」
「えっ・・・それって幽閉と一緒じゃないの。いいの?・・・・・・それで」
「こうして皆さんとお話できることでわたくし・・・、それだけで満足ですわ」
「それなら私と友達になってよ!一緒に話したり遊んだりして行くうちに私のことを信用できるようになったら、その時にまたお願いするからさ!」
「―・・・・・・そうですわね」
語りかける泡に、オメガは悲しそうな笑顔で言う。
「(やっぱりパートナーは難しいかな。それなら・・・!)」
オメガへ手を差し出し、にっこり微笑み握手を求めると、ちょんと指先だけ触れてくれた。
「こんなのじゃ握手と呼べませんわね」
「ううんいいよ!誰かに触れて傷つけちゃうのが怖いんだったらしょうがないし。徐々になれてくれればいいからさ」
「そうかしら・・・」
「パーティーに招いていただいてありがとう。皆で飲もうと思って持ってきました」
ルイ・フリード(るい・ふりーど)は赤ワインや葡萄ジュースを抱えて、主催者に軽く挨拶をする。
「今宵は楽しんでくださいな」
「結構な人数が集まったようだな」
ねこみみと尻尾をつけた簡単な、ねこ娘の仮装をしてたリア・リム(りあ・りむ)は集まった生徒たちを見る。
「どうもこんばんわ」
話かけるタイミングを見計らって、ネコミミをつけて仮装した黒霧 悠(くろぎり・ゆう)はオメガに挨拶がてら握手を求めるが、彼女は触れることに躊躇っていた。
「―・・・ダメだったか?」
「ごめんなさい・・・外の人と触れたことがないから」
「私とはさっきやっと、ちょっとだけ触れてくれたけどね」
「ちゃんとした握手でないと、やはり失礼でしょうし・・・」
「そうだったのか・・・」
「悠と一緒にサンドイッチ作ったんだよ。皆で食べよう」
同じく頭にネコミミをつけた瑞月 メイ(みずき・めい)がサンドイッチをバスケットから取り出し、高価そうなお皿の上に並べた。
「美味しそうだね、私も食べようかな」
「あっ!それ悠がいっぱいタバスコ入れたやつだよ」
「えぇー!?うっ・・・げほっげほっ」
泡は水をいっきに飲みくだした。
「食べる前に教えてあげればよかったね・・・」
「あたしも話の中にいれてよー」
せっかくのハロウィンパーティーだからと白魔女の仮装をした泉 椿(いずみ・つばき)が、メイたちに声をかける。
「おー、コレうめえな♪お前もパラミタ果実のジュースどうだ?」
椿はメイが作ったサンドイッチにパクつき、持ってきたジュースをメイに差し出す。
「もらうね、ごくごく・・・美味しいよー♪」
「おっと・・・こぼれちゃっているぞ」
「えへへ、ありがとう」
メイの口元を椿がハンカチで拭いてあげた。
「私ももらっていいですか?」
「おう、飲んでくれ」
椿は渚にもジュースを分けてやった。
「本日はパーティーにお招きいただきありがとうございました」
鳥羽 寛太(とば・かんた)は丁寧に主催者に挨拶し、握手を求めて片手を差し出した。
「ごめんなさい・・・わたくし、他の人と触れるのはちょっと・・・」
「あぁすみません・・・。どうして・・・苦手なんですか?」
「外の人たちと触れたことがなかったから、もしかしたらわたくしの魔力で傷つけてしまうかもしれませんわ」
「そうなんですか・・・それじゃあできるだけ外のことをお話できればと思います」
「えぇ、ぜひ聞かせてくださいな」
「ウーロン茶やジュースを持ってきたので、よかったら飲んでください。他の方もどうぞ」
「じゃあもらおうかな」
さっそくウィノナがジュースに手をつける。
「わたくしはウーロン茶をいただこうかしら」
2人が会話している中、伊万里 真由美(いまり・まゆみ)は周囲を見回して話かけやすそうな生徒を探している。
「(ターゲットに出来そうなのはいないわね。こうなったら適当に選ぼうかしら・・・)」
オペラグラスを覗き込み、それらしい生徒を探す。
「(―・・・とっ、いざという時にすぐ話かけられるように作り笑顔っと・・・)」
手鏡で笑顔のチェックをする。
社交的な意味合いでなく、裏がある雰囲気な顔を隠していた。
「(無理そうね・・・話に割って入れそうにない雰囲気だわ)」
彼女の傍で未成年のカーラ・シルバ(かーら・しるば)が、お酒に手を出そうとしていた。
「そのお酒ください」
「お酒は二十歳になってからだよ」
カーラの手からメイがワインを取り上げる。
「―・・・ダメ?何言ってるんですか。見た目は子供・・・頭脳は大人・・・問題無いです」
「ごめんなさいね、未成年の方にはお酒をご遠慮してもらってますの」
ムッとした表情をしながらも、カーラは話し相手を探し始めた。
「あの子なんてよさそうですね」
カーラはジャックランタンの仮装をしたアイリス・零式(あいりす・ぜろしき)の姿を目にとめた。
「実は前から貴方に憧れてました。ホントです」
突然呼び止められたアイリスは、目を丸くしてきょとんとする。
「―・・・そうなのでありますか?」
「その装備良いですね・・・」
「えっ・・・?」
「私にくれま・・・」
「あっ、ごめんなさい。お菓子集めている途中なんでございます」
カーラが言い終わる前に、アイリスはその場から離れていってしまった。
イルミンの生徒にオメガから手紙が届いたことを耳にしたシルバ・フォード(しるば・ふぉーど)と雨宮 夏希(あまみや・なつき)は、イルミンの生徒に同行させてもらいパーティー会場に来た。
「こんばんわオメガさん」
「今晩のパーティー楽しんでくださいな」
「夏希が作ったカボチャケーキを持ってきたんだが、一緒に食べないか」
「えぇ、いただきますわ」
「私が切り分けますね」
夏希はケーキ用のナイフで切り分け、形が崩れないようにそっと皿の上に乗せる。
「はいどうぞ」
渡されたケーキを、オメガはホークを使って上品に口の中へ運ぶ。
「―・・・どう・・・ですか?」
「とても美味しいですわ」
「お口に合ってよかったです♪」
「悠が作ったサンドイッチ食べない?」
明らかに余っているサンドイッチを、メイがシルバと夏希にすすめる。
「何が入っているんだ?」
「んっとね・・・沢山タバスコが入っているよ」
「すまない・・・辛いのは食べられないんだ・・・」
「そうなのか?うまいと思うんだが・・・」
「わたくしもいただきましたわ」
「(えっ・・・えぇええ!?明らかに激辛じゃないか!)」
「オメガさんって辛いのも大丈夫なんですね」
「えぇ、そうですわ」
「いただいでいいですか?」
渚はタバスコ入りのサンドイッチをもらい食べた。
「ちょっと辛いですけど、とても美味しいですね」
平気で答える魔女に、シルバは激辛サンドイッチを食べなければいけない流れになってきて、頬に冷や汗を流す。
「それならハバネロを入れてもよかったか・・・」
「(この上まだ辛くするつもりか!?)」
「夏希さんってお料理が得意なんですわね」
「ケーキまだありますよ」
シルバが激辛サンドイッチをすすめられている傍らで、オメガと夏希は楽しく会話していた。
「―・・・なんだか屋敷内が暑いな・・・」
なんとか話を逸らそう、コップに入っている水をシルバはいっきに飲みほした。
「ここにいたんですね、探しましたよ」
頭の両サイドに青黒い尖った角をつけ、魔装のような漆黒の鎧を身に纏い、魔神の仮装をした赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)がオメガに話しかけてきた。
「よかったらコレ、どうぞ」
お土産に持ってきたスパークリングワインを渡した。
「オメガの姿が見えませんね・・・どこにいるんでしょうか?」
影野 陽太(かげの・ようた)とエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は会場内で主催者の姿を探し歩いていた。
「こんな大勢いるのだから見つけづらくてもしかたありませんわ」
「あっ、あそこにいますわ」
「10人以上に囲まれていたら見えませんよね・・・」
生徒たちに囲まれ、姿が見えづらくなっているオメガがいる方へ向かう。
「どうもこんばんわ」
「あら、いらっしゃい」
「ここにいたんですな」
「結構人が集まっているのだな」
オメガを探していたエリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)とアロンソ・キハーナ(あろんそ・きはーな)も、主催者がいるテーブルの方へ近寄る。
「それにしてもこの格好・・・動きづらいのだが」
ペンギンの着ぐるみを着せられ、その上から騎士鎧を身に着けさせられたアロンソは、息をきらせながら必死に歩いていた。
「―・・・仮装したはいいが・・・温度が尋常じゃないぞ・・・」
すでに体感温度40度を超え、足元がふらついている。
「大丈夫ですの?」
エリシアがアロンソにウーロン茶を差し出す。
「あぁ・・・なんとか」
「ワインを持ってきたんだが、よかった飲んでくれ」
「えぇいただきますわ」
「地下館の生活も慣れ親しんでいると思いますが、誰かと契約して地上で生活したいとは思いませんか?」
横から陽太が口を挟むように言う。
「それで本当に奇跡的に、とんでもなく気が向いたら・・・俺と契約して蒼空学園に行きませんか?」
「他の生徒さんにも申し上げたんですけど、仮に外へ出たとしてもまたここに追い込まれてしまう可能性がありますわ」
「どうしてそんな・・・」
「お恥ずかしい話ですけどわたくし自信、魔力の制御がしきれないことがあるので・・・」
「誰かが傷つくならここにいよう・・・ていうことですか」
「不要に外へ出るわけにはいかない・・・ことなのですな」
「それで洞窟から出られないんですね」
ルイは納得したように頷く。
「そうですわね」
「あれれ?なんか暗い雰囲気になってるよ」
クマの着ぐるみを着たクラーク 波音(くらーく・はのん)が、無邪気な笑顔で駆け寄る。
「そんなに走ったら転んでしまいますよ!」
1人で先に行ってしまった波音の後を、猫の着ぐるみを着たアンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)が追いかける。
「あわわっ!」
床に足を滑らせてしまい、波音はドスンッと転んでしまった。
「大丈夫ですの?」
エリシアが助け起こしてやる。
「その格好で走ったら転んでしまいますな」
「(我輩はそれ以上の格好をさせられているのだがな)」
2重に着せられているアロンソは、心中でボソッと呟く。
「なんにせよ楽しいパーティーになるといいですな」
「えぇ、ワタシたちで盛り上げてあげましょう」
「そうそう・・・さっき入り口付近で、コンテストのような余興を考えていた人もいますな」
「それは楽しみですね」
「仮装ならすでに注目度が高そうなのがいますな・・・」
暑さで呻っているアロンソへ、エリオットは視線を移した。
ワンドとローブで魔女の仮装をし、カボチャのランタンを持った朱宮 満夜(あけみや・まよ)が声をかけてきた。
「パンプキンケーキ作ったんで、持って来ました」
満夜に合わせてワンドとローブで、魔術師らしい格好をしたミハエル・ローゼンブルグ(みはえる・ろーぜんぶるぐ)がカボチャのランタンを持って、オメガがいるテーブルの方へ近寄る。
「見た目を気にしなければ、味はいいと思うのだよ」
余計なことを言うミハエルに、満夜は咳払いをする。
「一緒に遊びませんか♪」
「どんな遊びがあるんですの?」
「円を組んで遊ぶゲームなんです。隣の人の右手を叩いていく単純なゲームで・・・ミルク、シェイク、フレンチフライ、サンデーザアップパイ、ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブて順番に叩いてき、最後のファイブのときに手を叩く相手が、叩いてくる相手の手を叩いたら勝ち。もしも自分の手を叩いちゃったら負っていうゲームです」
「ちょっと難しそうですわね・・・」
「軽くでいいからやってみましょう♪」
「我輩もやるのだな・・・」
満夜たちは試しに、3人で遊んでみることにした。
戦況はミハエルと満夜のいっきうちになった。
ミハエルが満夜の手を叩けば勝ち。
「ムムッ・・・負けませんよ」
「これはかなり白熱するようだな」
手の平をすり抜けて満夜がフェイントをかける。
「勝負!」
パチンッと手を叩く音が聞こえた。
「あぁっ!我輩の負かー・・・」
「やったぁ♪こうやって遊ぶんですよ」
「水をはった入れ物に入ったリンゴを、手を使わずに取るというゲームがあるんですがやってみません?」
ゲームが終わる頃を見計らっていた緋音が声をかける。
「由来は秋の収穫を祝い、悪霊を追い出すなどいくつかあるそうです」
「そうなんですの?」
「えぇ、ちょっとやってみましょう」
緋音は透明のケースにリンゴと水を入れ、ゲームの準備をした。
「―・・・難しいですわね」
「降参ですか?」
数分たっても答えがだせないオメガは、とうとう降参してしまう。
「口で取るんですよ」
「そうんなんですの・・・」
さっぱり分からなかったオメガは、首を傾げて水の中のリンゴを見つめた。
「主催者さんのお話を聞きたくて来たのだけど・・・」
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は傍にいるキュー・ディスティン(きゅー・でぃすてぃん)に、視線を移して離すように目配せする。
「力ある魔術師にぜひ話を聞いてみたくてな」
「わたくしの魔力についてですか?」
「どうしてそのような能力を持ってしまったんだ?」
「それが・・・わたくし自信にもよくわかりませんわ」
「というと・・・」
困り顔でいうオメガに、キューは再び問う。
「パラミタの地の魔力が結集して、偶然このような形になったのですわ」
「本当にそうなのか。(自然の力・・・みたいな感じなのか?ということは産みの親や、血縁関係が一切存在しないのか)」
「わたくしをここに追いやった方々がそうだというようなことを・・・」
「貴公をここへ追いやった者たちの所在はわかるのか?」
「わかりませんわ・・・もう何年も経っていますもの。生きてるかどうかさえ・・・」
「なるほど貴公にもわからない未知数な感じなのか・・・。魔法も使い方を間違えたり暴走させると厄介だからな。(力の使い方が分からない魔女を、無理やりこのような場所に追い込んだのだろうか)」
キューは眉を潜めて考え込んでしまう。
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