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第4章 当たりかハズレか・・・ドリンクコンテスト

「用意するドリンクはこれで全部・・・っと」
 執事服の上にマントをつけて吸血鬼っぽいメイクをした緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)が、大量の飲み物を会場内に運び終えた。
「そうですよ、ご苦労様」
 ミニスカウィッチの仮装をしている紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)は、ダンボールの中から飲み物を取り出し、テーブルの上に並べていく。
「グラスに割れ目があったりしませんよね」
 持ってきた時に衝撃で割れていないか、遥遠がシャンデリアの灯りに照らしてチェックする。
「オメガさんどこにいるんでしょうね」
「あのテーブルの方じゃないんですか・・・?」
 すでに20人くらいの生徒たちに囲まれているオメガの姿を、遙遠が見つけて指差す。
「どういうカクテルを作りましょうか」
「甘い感じにしてみたらいいかもしれませんよ」
「するとカシスに白ワインか・・・スパークリングでもいいですね。誰か持ってきていないでしょうか」
「向こうにワインを持っている人たちがいますよ」
「(えっと・・・まずは先に挨拶をしなければいけませんよね)」
 生徒たちと会話しているオメガの方へ歩いていく。
「パーティーにお招きいただき、ありがとうございました」
「こちらこそ来ていただいてありがとう」
 丁寧に挨拶する遙遠と遥遠に、主催者はにっこり微笑む。
「カクテルを作りたいので、少し分けてくれませんか?」
「うん、いいよ」
「自作のカクテルですか、これでよければ」
 ルインと霜月にアイスワインとスパークリングワインを分けてもらった。
 丁度いい割合になるようシェイカーに入れ、キール・ロワイヤル風カクテルを作りグラスに注ぐ。
「遙遠のお気に入りカクテルなんですがね、オメガさんにも飲んでいただきたいのですが・・・いかがでしょうか?」
「ふぅ・・・・・・とても美味しかったですわ」
「それはよかったです、他にもお作りしましょうか。よかったら他の生徒さんも・・・」
「あっ、それじゃあバイオレットフィズお願いします」
 作ってもらったカクテルを、霜月はいっきに飲みほす。
「かなり飲めるほうなんですか?」
「それなりにですね。もう一杯いただけますか」
「はい、いいですよ。(大丈夫なんでしょうか・・・だいぶペースが速いような・・・)」
 ジュースを飲むように飲む霜月を、遙遠は心配そうな目で見る。
「よお、邪魔するぞ」
 みたらし団子とちんすこうを皿の上に乗せて、淵がオメガのテーブルの方へ寄ってきた。
「随分長いこと生きてんなあ。俺は最近復活したばかりだから似たようなもんか。色々全然さっぱりだぜ。時差ぼけってやつかもしれぬわ」
「そうなんですの?」
「けど悪くはないな。可愛いお前とも会えたし」
「まぁ、お世辞がお上手ですこと」
「お前も飲むか?」
「えぇいただきます」
 霜月のグラスに度数40度の焼酎、魔王を注いでやる。
「(まだ飲むんですか!?酒豪ですね・・・)」
 平気な顔をして焼酎を飲む霜月の姿に、遙遠は驚きのあまり目を丸くする。
「バーテンダー、俺にも何か作ってくれ」
「あっ・・・はい。・・・どうぞ」
「ふはぁ〜、やっぱ酒はうめぇな!」
 淵は上機嫌でいっきにカクテルを飲みほした。



「向こうはかなり盛り上がっているみたいね」
 グレーテル・アーノルド(ぐれーてる・あーのるど)がイメージガールとして給仕している格好は、メイドのような服装だった。
 恋人のてるに『一生のお願いだから!』と泣き落とされてしまい渋々着ていた。
「正攻法で行っても面白くねーよなぁ。もともと生き方が違うんだから、この中に当たりがあってもおかしくない。この博打、どうでるかね・・・」
 一般の人が好んで飲みそうもないドリンクで、バーテンダー風の衣装を着ているにみ てる(にみ・てる)は勝負にでることにした。
「これで全種類・・・揃ったな」
 7種類のドリンクをカップに注ぎ、トレイに乗せてオメガたちがいるテーブルの方へ向かう。
「この中で好みの飲み物を選んでくれないか」
「―・・・その中からですの?」
「試しに飲んでみてくれ」
「気に入るのかあるかもしれないわよ」
 怪しげなドリンクをすすめる2人に、オメガは少し考え込む。
「それじゃあ・・・それいただこうかしら」
「えっと・・・これだな」
 あずき味の炭酸ジュースを差し出した。
 オメガは試しに一口飲んでみる。
「味はいかかが?」
 返事を返さない彼女の顔を、グレーテルが覗き込む。
「―・・・・・・いいんじゃないかしら」
 笑顔を崩さなかったが、コップを持つ手が明らかに震えていた。
「他にも飲んでみる?」
「いえ、もう沢山いただきましたわ」
「そうか・・・。(いけると思ったんだけどな。他の人にも飲んでもらうか?)」
 てるは残念そうに、あずき味が入っていた空っぽのコップを見つめた。
「(あぁ・・・不安だな・・・。何か飲み物・・・・・・)」
 喉が渇いた卓也はテーブルの上に飲み物がないか探す。
「飲み物を探しているのか?これあまったからよかったらどうぞ」
「ありがとう・・・」
 てるから手渡されたジュースを、いっきに飲みほした。
「あぁああーっ、何だこれ!?うぅぇぐわぁあっ!」
 強烈な苦さに卓也は絶叫する。
「俺オリジナルの蒼汁だ。健康にいいぞ。(たぶんな)」
 てるは爽やかな笑顔で言う。
「もう一杯どうだ?」
「―・・・」
 恐ろしい味に卓也は何も答えられない。
「そうか、もう一杯おかわりか!」
 不気味な香漂う危険な飲み物から逃れるため、卓也はその場から逃げ出した。



「気にいったドリンクはあった?」
 ジュースを配り終えたクレアが、霜月たちの近くからひょこっと顔を出す。
「えぇありましたわ。皆さんが持ってきてくれたお飲み物、どれも美味しかったですわ」
「一番は誰?」
「どれも良くて決めにくいのですけど・・・遙遠さんのカクテルかしら」
「(こっそり猫耳のカチューシャをつけてやるのじゃ)」
 オメガがクレアと会話している隙に、背後からナリュキが彼女の髪にカチューシャをつけようとする。
「なんですの?」
 メイベルがきらきらと視線を送っているのを、不思議そうに首を傾げた。
「あぁあの・・・オメガさん・・・頭・・・・・・」
 頭のほう指差す陽太に言われ、オメガは自分の頭に触れてみと、何かフワフワしたものが頭についてた。
「可愛いですぅ♪」
「何かしら・・・」
「とっちゃ駄目なのじゃ!」
 カチューシャを取ろうとするオメガを、ナリュキが必死にとめる。
「なんか可愛くなったなー」
 酔っ払った淵がオメガに抱きつこうとする。
「お・・・おい待て!」
 とっさにカルキノスが淵を捕まえてとめた。
「(すっかりできあがっているわね・・・)」
 ルカルカは半眼で淵を睨む。
「よかったらオメガさんの話を聞かせて」
「わたくしの話ですの?」
「好きなお菓子や飲み物とか教えてほしいな」
「いろいろあるんですけど・・・チョコレートタルトと紅茶かしら」
「へぇーそうなんの。何か趣味とかってあるの?」
「オリジナルの紅茶を作ることですわ」
「オメガさんのオリジナルブレンドなのね。もしよかったら・・・お友達になってくれる?」
「わたくしでよろしければぜひ」
「本当?嬉しいなー♪」
 満面の笑みで、ルカルカはにっこりと魔女に笑い返した。 



「うーん・・・オメガの姿が見当たりませんね」
 パーティーの主催者と仲良くなりたいフィル・アルジェント(ふぃる・あるじぇんと)は、周囲を見渡して探していた。
「(こんな所に来て大丈夫なのかしら)」
 セラ・スアレス(せら・すあれす)は怪訝そうな顔をする。
「(人々を眠らせて何かしようとしているのではないのか?)」
 眉を潜めてシェリス・クローネ(しぇりす・くろーね)は周囲を警戒している。
「いました!あんなところに・・・」
 生徒たちの影で見えなくなっていたオメガをよやく見つけた。
「あのオメガさん初めまして」
「こんばんわ」
 魔神の鎧の近くで見えなくなっている魔女が、フィルの声に気づき挨拶を返す。
「オメガさんってこの屋敷に1人で住んでいるのですか?」
「えぇそうですわよ」
「やっぱりお友達とかは・・・」
「いませんでしたわね」
「と・・・いうと・・・?」
「ルカルカさんたちがお友達になってくれましたわ」
「そうだったんですか。よかったです♪私も・・・仲良くしてくれますか?」
「えぇもちろん」
 嬉しそうな表情で、フィルに微笑みかける。