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リアクション
4.【10】番と【11】番でアイドル
和希は「次って、いつだよ!」とツッコんだが。
「次」はすぐにやってくるのだった。
恐るべし! 【秋葉原四十八星華】の底力っ!
■
という訳で、【女王様】役に立ったのは霧雨 透乃(きりさめ・とうの)であった。
彼女が3番手に選ばれた理由は、綾香の理由と以下同文である。
だが、彼女の命令は【秋葉原四十八星華】の集大成とでも言うべきものであった。
「【10】番と【11】番が【女王様】と一緒に3人でアイドルコスチュームに着替えて、【秋葉原四十八星華】のデビュー曲を熱唱する!」
♪【10】番、【11】番、だあ〜れだ!
例によって合掌と共に、該当者がステージの前に引きずり出させる。
だが、【10】番はすでに別の【女王様】によって使用されてしまった。
【11】番の者のみ対象者となる。
御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)とアシュレイ・ビジョルド(あしゅれい・びじょるど)とヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)が【女王様】の前にひれ伏した。
うーん、3人か……アシュレイとヴァルは互いの顔を見合わせる。
「【秋葉原四十八星華】の千代さんは確定じゃがのう」
「アシュレイと俺、どちらがステージに立つんだ?」
「わては【女王様】役になって、【7】番同士で相撲を取らせたかったのじゃが……」
「じゃあ、俺が行こうか? アシュレイ。下僕から始めるのが帝王学のセオリーだしな!」
アシュレイがポソッと呟く。
「皆とも仲良くなりたいのう……」
という訳で、ステージの上にはアシュレイと千代が立つこととなった。
ヴァルはついでにステージ下で盛り上げる。
「ようやく、私達の『デビュー曲お披露目ライブ』ですね!」
千代は気合を入れて、アイドルコスチュームに着替えた。
だが【秋葉原四十八星華】ではないアシュレイは当然持ってはいない。
「しかたないですね。女王様の命令ですから」
前回プロデュースを引き受けさせられた遙遠が、自分のアイドルコスチュームを一時的に貸し出す。
だがそのままでは体格の関係でダブダブだ。
「こんな時の私ですよね!」
同じくプロデュースの命を受けた陽子が、「ファッション」の特技を生かしてアシュレイのスタイルに合わせる。
「ついでに、こちらの方もですね?」
ヴァルを捕まえて、「アイドルコスチューム」風に衣装を仕上げる。
見た目だけは立派な【秋葉原四十八星華】の一員としてしまった。
「あとは、透乃ちゃんと千代さんの着替えの手伝いですね」
舞台の幕が上がる。
花火が上がって、ドライアイスのスモークの中から「アイドルコスチューム」の3人組があらわれた。
ちゃらりら〜。
怪しげな前奏が鳴って、彼女達は即席のデビュー曲「(仮)君を狙い撃ち! 愛☆秋葉原四十八星華」を熱唱し始めた。
出だしは、透乃。
♪大食いなチューブトップ
ミニスカートゆらゆら揺らして
よ〜し、やっちゃうよ〜!
あなたを笑わせる。
私だけに夢中だからよ!
2番手は千代。
♪君を狙い撃ち
愛☆秋葉原四十八星華
私、まだまだいける!
君と一緒なら……
3番手は、なぜかアシュレイ。
♪一人ぼっちはさみしいから
退屈な日々を過ごしてた
理子様のおわすシャンバラでの狼藉、不敬であろうっ!
あなたを驚かせる
知ってるはずでしょ?
目立ちたがり屋だって
ついでにむちゃぶりで、4番手はヴァル。
♪君を狙い撃ち
愛☆秋葉原四十八星華
心優しき帝王
帝王の国から来た……
熱唱する彼らの下で、CDやブロマイドを売り歩く和希、はにわ茸、リュース、そしてドスの利いた声で声援を送り続ける大鋸の姿がある。
仕上げに、透乃の煙幕ファンデーション!
「みんな! ありがとうっ!」
わあっ! と観客達が盛り上がる中。
彼女達は手を振りつつ、退場して行くのだった。
【空大アイドル】の称号と共に――。
■
「衣装、すまんかったのう」
受付裏で、アシュレイは遙遠にアイドルコスチュームを返却した。
「【女王様】の命令ですからね。気にしないでください」
遙遠は明るく笑う。
「本当にクリーニングもせんで……」
「ああ、いいですよ、気にしなくても」
その落ち着いた大学生らしい爽やかさに、アシュレイは好感を覚えた。
(憧れだった空京大学の、学生……)
言葉は自然に流れだした。
「もしよければのう。お友達になって下さらんかな?」
その様子を会場から眺めつつ、セオボルトはメモに覚書を記すのだった。
『【秋葉原四十八星華・二期生】アシュレイ・ビジョルド、及びヴァル・ゴライオンの2名追加』
■
アイドル達の退場と共に、プロデュース組の撤収作業も始まる。
リュースは幸と打ち合わせをし、いままでの経緯を「中間報告」としてパルメーラにメールをした。
「落ち着かないパルメーラさんから話を伺って、女装してまで参加を決めた私だったけど……」
フウッと溜め息を吐く。
「残る仲間にゆだねるしかないわね」
陽子は透乃の後を追いかけて行く。
「大鋸さんと同じ番号で心配だったけど。自分の役割を果たせて良かったです」
和希は大鋸の無事を喜び、はにわ茸は背に貼られた鮪からの伝言に気づいて苦笑いする。
そして、王大鋸。
彼は一人うかない顔で夜空を眺めていた。
「女どもは無事だったけどよぉ、ゴンサロの奴ぁ、シメらんなかったぜ!」 大鋸は心底残念そうに息を吐く。
「だが、ダージュ。ともかくあなたガ、無事でよかっタ」
ドレスの裾を払って、シーは本日初めて安堵の笑みを浮かべた。
「ゴンサロの件は諦めることだナ。しかし奴のことダ、このままではすまないだろウ。再戦の時は、必ず来ル」
「ああ、そうだな。その時こそは、バカな真似が出来ねえくらいに叩きのめしてやるぜ!」
そうして、2人は会場から去って行くのだった。
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