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リアクション
7.【7】番で偽物捜し
ラスティ・フィリクス(らすてぃ・ふぃりくす)が【女王様】役に選ばれたのは、ほとんど「強運」に恵まれたせいであった。
彼女は特定のグループに所属もしていなければ、【女王の加護】も持っていない。
だが、誰も命令しなかった番号を指定したことで、役を手に入れることが出来たのだった。
彼女の希望は唯一つだった。
(紗月が慌ててる様を見たいなっ♪)
ニイッと笑う。
(よし、決めたぞ!)
彼女は意地悪な命令で、「男の娘」な紗月を困らせてやろうと思った。
「【7】番は【女王様】に胸を揉みしだかれる」
この命令で、【7】番の椎堂 紗月(しどう・さつき)のほか、まき沿いを食ったのはクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)、マリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)、ベアトリクス・シュヴァルツバルト(べあとりくす・しゅう゛ぁるつばると)、屋代 かげゆ(やしろ・かげゆ)、カロル・ネイ(かろる・ねい)、ラウラ・モルゲンシュテルン(らうら・もるげんしゅてるん)、ノイン・クロスフォード(のいん・くろすふぉーど)、プリ村 ユリアーナ(ほふまん・ゆりあーな)で、【女王様】の餌食となった。
以下、命令を聞いた女の子達の反応。
小鳥遊 美羽。
「えーん! 【女王様】になって命令して、ダーくんに思いきりゴンサロを締め上げてもらって、成敗しようと思っていたのに! これじゃ、何のためにダーくん女装させたのか、分かりゃしないったら」
マリー・ランカスター。
「わてはちゃ〜み〜の【僕】として、熱湯風呂コマーシャルに挑戦するはずでありましたのに!」
ベアトリクス・シュヴァルツバルト
「私は遥のかわりに、【女王様】役のオペレーションを引き継ごうと思っておったのだが」
屋代 かげゆ。
「かげゆは遥専属の酌係だぜ!」
カロル・ネイ。
「えーっ!? 自分のブロマイド配って、営業してるだけじゃいけないの?」
ラウラ・モルゲンシュテルン。
「命令なんて関係ないわ。あの方が参加しないなんて……」
プリ村 ユリアーナ。
「もう! 命令なんていいから! ソーハチを捕食だよ!」
以下、男の娘(?)達の反応。
椎堂 紗月
「えぇ〜っ、嘘でしょうぉ〜!? それじゃ女装してまでコンパに参加した意味、ないじゃなぁ〜いっ!」
ノイン・クロスフォード
「まあ、私は、マリアのストーキングさえ出来れば、それでよかったのですが……」
以下、野郎の反応。
クロセル・ラインツァート
「俺が所属するは雪だるま王国。王国を治めるは赤羽美央陛下。ならば、他国の王の言いなりになる謂れはありませーーーん!」
……各自が様々な理由から、ブーイングの嵐で駄々をこねた。
だが、ジタバタしても仕方がない。
いい加減くどいようだが、【女王様】の命令は……(以下同文)。
その結果、椎堂 紗月、ノイン・クロスフォードの2名は期待通り正体を晒すこととなった。
ここぞとばかりにラスティが揉みしだく。
ぱんっと、分厚い胸パットやアンパンが飛び出したのだった。
「はっはっは〜、御苦労さま! では、偽淑女共にはご退場願おうか?」
守護天使軍団により、疑いのかかった2人はポイッと外へ締め出されてしまうのだった。
■
だが他の者達はともかく、紗月の悪夢はこれで終わらなかった。
「わっ! 痛てて……いきなり外に放り出すことはねえよなあ?」
同じく放り出されたノインはサッサと体を起こす。
「ま、マリアもいないことですし。私は引き揚げるとしますかな」
では、と会釈。
そして立ち去る彼を見送って、放り出した張本人――タキシード姿の「連行」係の男2人が立ちはだかった。
一人は仮面をかぶり、一人は帽子を目深にかぶって顔を隠している。
顎をしゃくって、紗月はこっちへ来い、という意味なのだろう。
「へっ、退場先が違うのかい? 案内してくれるとは、御丁寧だな」
だが、連れていかれた先は校門ではなく、ひとけのない校舎裏だった。
そういえばゴンサロの手下は総て守護天使だったが、こいつらに羽はない。
(ってことは。俺、騙されたってこと?)
だが、ゴンサロの手下はツワモノぞろいだ。
第三者だとすれば――特技(例えば「威圧」とか)でも使って、彼らを丸めこんだのだろうか?
となると、正体はただひとつしかない。
(ヤベー、デートの約束すっぽかしたこと、怒ってんのかな?)
サアーッと血の気が失せた。
「いや、ほら、っさ! ラスティがどうしても、っていうからさ。ごめんね? 朔ちゃん?」
「今頃気がついても、遅い!」
鬼崎 朔(きざき・さく)の怪力の籠手が紗月を襲う。
更には「妹」の赤羽 美央(あかばね・みお)までが朔の味方ときている。
「椎堂さん。こんな所で会うなんて奇遇ですね」
ガシッ。
両腕を掴んで、羽交い締めにする。
「コンパ楽しかったですか? いい女性見つかりましたか? 恋人もいるのに元気ですね」
(マジですかっ!?)
紗月はジタバタとあがいた。
(俺だって! 女の子どころか、変な仮面の野郎としか話してねーのにいっ!!)
紗月はあがき続けるが、朔の目は既にすわっている。
慌てた紗月は、良い言い訳も思いつかない。
美央の手を払いのけて逃げ去るも、恋人は「追跡」でどこまでも追いかけてくるのだった。
「紗月! この後に及んで言い訳も出来ないとは! 許せまじっ! 天誅!」
二対一で圧倒的に不利な中、紗月は次第に追い詰められてゆく。
「だからあ〜!」
紗月の何度目かの言い訳が闇に響く。
「コンパに参加したのは、社会勉強の一環だよ! 第一、男としか話してねぇし……」
「え? そうなんですか?」
だが、良い雰囲気になったところで、美央は確信をつくのだった。
「妹が増えてるのは貴方が優しいからだって思ってました。でもその素敵な優しさで、私という妹、鬼崎さんと言う恋人がありながら、二人に黙ってコンパに遊びに来たんですね☆」
ぐっと紗月は言葉に詰まる。
「社会勉強? パートナーに誘われてしかたなく?」
朔と美央は、声を合わせて怪力の籠手を振り上げる。
「んな訳あるかーーっ! 妹や恋人に黙ってコンパに参加するなーーーっ!!」
バチーンッ!
妹と恋人から「愛の鉄槌」が下されるのであった……合掌。
■
彼らが「青春」を謳歌する間も、ゲームは進行して行く。
■
……そうして大方のものが去って行き、会場は次第に静まり返って行くのだった。
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