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 5.【4】番でパルメーラ洗脳作戦


 さて、ダージュとゴンサロの件は片付いたのだが、ゲームはやはり進行して行くのだった。
 
 くどいようだが、女王様ゲームの鉄則。
 それは【女王様】役希望の者がいる限り、ゲームは続行されるということである。
 
 ■
 
 そうした次第で、4番手の【女王様】役としてステージに立ったのは琳 鳳明(りん・ほうめい)だった。
 彼女が選ばれた理由は、【秋葉原四十八星華】のメンバーであった上に、多少の運が作用した結果だ。
 
 しかし、中国の閑村出身の上に、教導団という彼女はコンパに不慣れだ。
 取りあえず、自己紹介だろ? とばかりにマイクに向かって。
「わぁ!?え、わ、私? えっと、教導だ……じゃなくて、【秋葉原四十八星華】の琳鳳明です!」
 セオボルトがクチパクで指示を出す。
「え、え、え? じょうおうさま? めいれい?」
 ようやく使命に気づいたようだ。
 が――。
「えーと、えーと……【8】番の人は、多分蒼空学園の学生!」
 ……それは命令になってない。
 四苦八苦した末に、深呼吸をする。
 それでようやく命令らしい命令を出すことが出来た。
「……よしっ。【4】番の人! 今からパルメーラ・アガスティア(ぱるめーら・あがすてぃあ)さんのとこに行って、【秋葉原四十八星華】の良さを説いて、彼女をファンにしてきて下さい!」
 
 ♪【4】番だあ〜れだ!
 
 桐生 円(きりゅう・まどか)閃崎 静麻(せんざき・しずま)服部 保長(はっとり・やすなが)オープン・ザ セサミ(おーぷんざ・せさみ)が該当者として名乗りを上げる。
「では頑張ってきてくだっさいっ!」
 【女王様】の一声で、4名は学長室へと赴くのだった。
 
 ■
 
 最もごねたのは、円だ。
「何だよ! ボクは王ちゃんとゴンザロをキスさせるために、【女王様】になるはずだったのにっ!」
 一目散に逃げ出したが、屈強な守護天使のお目付役に取り押さえられてしまった。
「いやだよ! ボクはいやだー! ラブ・アンド・ピースだよ! ラブ・アンド・ピース! 分かる?」
「ええ、分かるわ! その気持……」
 円を眺めて、セサミは深い溜め息を吐く。
「私も、【6】番の荷物の中身を拝見しようと思っていたの。それでイルマと協力して、ゴンサロを追い詰めるつもりだったのに……」
 2人とも運がなかったようだ……申し訳なかったです。
「パルメーラ? ハッ、クソガキじゃないの?」
「でもパルメーラ殿の本体は、スマートフォンでござるよ?」
 毒づいた円の耳元で、和服美人・保長が囁いた。
 ボソッと。
「最新のゲームで遊びまくれるかもしれないでござる」
「え? ゲームだって?」
 円とセサミの顔つきが変わった。
 2人とも、「ゲーム」のことに関しては黙ってはいられない。
「じゃ、ボク先に行くね!」
「え? では、私も! お先にーっ!」
 タアーッと闇の彼方へ消えて行った。
 静麻は呆れ顔で保長を見やる。
「よく知っていたな、ゲーム繋がりだってこと」
「拙者は【お色気くノ一】でござるよ? 情報収集は基本中の基本でござる」
 保長は素知らぬ顔で2人の後を追うのであった。

 ■
 
 だが――。
 
 円達の期待もむなしく、学長室のパルメーラはすでに就寝の準備に入っていた。
「島村さんに頼んだし、家宝は寝て待て! てアクリトも勧めるしね」
 そういう問題ではないと思うのだが。
 フワアッと欠伸をして、等身大くまさんのぬいぐるみを抱きしめる。
「じゃあ、また明日ね! 皆さん」
 ソファーにコテッと倒れる。
「寝たら……」
「本日中に、命令は果たせないでござるかな?」
 表にはお馴染の守護天使集団が控えていた。パキポキと指を鳴らす。
 面倒を起こせば、クイーン・ヴァンガードの世話になるかもしれない。
「カタをつけるぞ!」
 幸いアクリト・シーカー(あくりと・しーかー)の姿はない。
 静麻の声で、4人は必死になってパルメーラを叩き起こした。
 だが、所詮は子供。育ち盛りなのだ、睡魔に勝てる訳がない。
 そうした次第で、4人の奮闘むなしくパルメーラは眠りの園に落ちて行くのだった。
 円とセサミがパルメーラの体を揺さぶる。
「ねえねえ、ねえってば!」
「ゲームしましょうよ! パルメーラさん」
「うんうん、円ちゃん、セサミさん。また明日一緒に、遊ぼう……ね……」
 4人の奮戦はその後も延々と続く……。