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イチゴの化け物!?

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イチゴの化け物!?

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第1章 イチゴモンスターを食べる?

「なんだか、不穏な空気が流れていますわね……」
 雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)は頂上がうっすらと曇り空に覆われた山を眺めてぽつりとつぶやいた。
 頂上が雲の上に隠れたその山は、至る所に木だけではなく草がたくさん生えており、また道も長いこと人が歩いた形跡がほとんど無いように見えた。
 果樹園を目指すためには、草をかき分け、足下に気をつけながら進む必要があるようだった。

「大丈夫だよ! 俺たちみんないっしょだから」
 四谷 大助(しや・だいすけ)は、雅羅に元気づけるように声をかけた。
 「大助が見栄を張れたものじゃないんだけどねー」
 白麻 戌子(しろま・いぬこ)が、大助と雅羅の間からひょっこりと顔をのぞかせる。
 笑顔を浮かべているが、口をへの字にして大助を見ている。
 大助はそれを見るなり、戌子を木の陰へ連れひそひそ声で話しかける。
「なっ、なんでお前までいるんだよ、ワンコ!?」
「いやあ、大助がこっそり出て行くのが見えたからね。そういう大助は雅羅のためだね?」
「力のみなぎるリンゴだったら雅羅の不幸が軽くなるんじゃないか……って、そんなのはいいだろ?」
 大助は少し顔を赤くしながらぼそっと言った。
「まぁまぁ大助、程良いところで二人きりにしてあげるのだよ。でね……目の前に居るイチゴモンスターを倒して、良いとこを見せてあげたまえ」
 雅羅の前には、赤々としたイチゴモンスターが一匹立ちはだかっていた。
 慌てて大助は雅羅の方へと走った。
「ボクの方が大助と過ごす時間は長いはずなのにね」
 苦笑いしながらも戌子はぽつりとつぶやいた。
「こ、これはイチゴそのまま!?」
 雅羅が驚いた声を上げた。
 大助と戌子も前に出て戦える構えを取る。
「胸焼けしそうな光景だねー」
「……甘い物は嫌いだ。ブラックブランド!」
 大助が叫ぶと、手の甲で家紋をかたどった光が輝く。
 雅羅と戌子もそれに加わる。
 大助達の打撃はヒットし、イチゴモンスターは後ろに飛ばされる。
「おもったより……弱いのね」
 雅羅はため息をつくと同時に警戒を解く。その瞬間イチゴモンスターが飛び上がり雅羅へと向かってくる。
「大助!」
 戌子が叫ぶと同時に大助は飛んできたイチゴモンスターを間一髪のところでたたき落とした。
「きっ、気をつけろよ。この先も何があるか分からないからね、雅羅」
「ごめんなさい、ありがとうございます」
 雅羅は大助に深く礼をする。そして、しばらく古びた道を、雅羅達は進んでいった。