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フリマと少女の本

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フリマと少女の本

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「古本まつりの雰囲気を思い出すわね…… 今日も、何か面白い物はないかしら」
「ふんふん……いーい匂いがする〜」
 フリマの店を見て回る奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)と、あちこちの店から漂うお菓子の香りに幸せそうに鼻をひくつかせる雲入 弥狐(くもいり・みこ)
「フハハハハ! よく来たな、さあ我が最高傑作を目の当たりにする名誉を与えよう!」
「あら、これは……面白そうなお店、なのかしら?」
 沙夢が足を止めたのは、ハデスの店の前だった。
 並べられた発明品が目に留まったのではない。
「ちょ、ちょっともう兄さん! なんでこんな恰好で客引きをしなくちゃいけないんですかっ!」
 店の前には、ブルマ姿の咲耶。
 ハデスと何事か言い争っている。
「分からんのか? フリマとブルマ。語感がそっくりだからだ!」
「そんな理由で!? まだコリマのが似てるじゃありませんか……」
「ふむ、ならばコレを着るか?」
 ハデスが取り出したのはバレーのひらひらした衣装。
 お約束の様に小さな白鳥がついている。
「これは?」
「プリマの衣装だ!」
「か、勘弁してください……」
「まぁ、面白い出し物ねー」
 ぱちぱちと拍手をすると去って行く沙夢。
「あ、おい客待て」
 去って行く沙夢を慌てて追いかけようとするハデス。
 その拍子に発明品のスイッチが入った。
 ウィイイインっ!
 不気味な起動音が鳴り響く。
「む、我が大発明お掃除ロボEXか。丁度良い、客たちにお前の力を見せてやれ!」
 びしぃっとハデスはお掃除ロボEXを指差す。
「通常の掃除機能に加え、侵入者を『掃除』する機能を持ち、更に追加能力も…… 多少プログラムはミスしたが、自爆装置の付いたお前の本気を見せるのだ!」
「に、兄さん! これってたしか持ち主と侵入者を誤認するという欠陥が……!」
『侵入者発見、侵入者発見。コレヨリ削除開始します』
 お掃除ロボEXのアームがハデスに伸びる。
「む? うわ、離せコラこのポンコツがぁああ!」
『自爆プログラム、起動。自爆プログラム、起動』

 どぉおおおん!

「ん?」
 沙夢は後方で爆発音が聞こえたような気がして振り返ったが、何も見つけることは出来なかった。
 先程あった店さえも。
「ふ、ふぁあ……なんていい匂い!」
「いらっしゃいませ〜!」
 弥孤が匂いにつられて入ったのは、ルルナの店。
 そこは、彼女にとって天国だった。
 モンブランにエッグタルト、イチゴのマフィンにクッキー……
「あら、可愛いお店ね」
 沙夢も弥孤に続いて店を覗く。
「いらっしゃいませ。クッキー、試食しますか? それからこちら。うちの庭で取れた茶葉で淹れた、お菓子にあうおいしいお茶も試飲できますよ」
「わぁ、美味しい! こっちのタルトもおいしそう……」
 早速クッキーを齧ってみて、その美味しさに感動する弥孤。
 さくさくとした記事の中に、カリリと香ばしくローストされたナッツが入っている。
「はい、こちらもどうぞ」
「ありがとう……いただくわ」
 ルルナから差し出されたティーカップを手にとる沙夢。
 爽やかな香りのする液体をしばらく眺めてから、そっと口にする。
「……あ」
 沙夢の口から小さな声が漏れる。
 それから、笑顔。
「私はコーヒー党なんですが、これも悪くないですね」

「わあ、おいしそうなお菓子がいっぱい! このモンブランくださーい! 羽純くんは?」
「同じもので」
「はい、ありがとうございまーす!」
 匂いにつられてやって来たのは歌菜と羽純。
 ルルナが運んできたケーキを、店の前に作られた小さな休憩スペースに腰かけて食べてみる。
「……ん!」
 一口食べて、目を見開く歌菜。
 隣りを見ると、羽純も歌菜の方を見ている。
「歌菜、これ、作り方を聞いておけ」
 家でも作って欲しい、なんて言わなくてもすぐ分かった。
「ん。すみませーん、このモンブランのレシピ、教えてもらえないでしょうか?」
「いいですよー。栗とクリームと、それからラム酒を少々と……」
 ルルナの説明に、真剣な表情でメモを取る歌菜だった。