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フリマと少女の本

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フリマと少女の本

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「ん〜っふっふっふっふ」
「……もう、セレンったらすっかりご機嫌ね」
「んふふふふ、だってお揃いなんだもん、セレアナと!」
「まあ、たしかにお揃いだけど……ちょっと短すぎない?」
「問題ない! むしろOK! あのお店の服、可愛いんだけどちょーっとあたしにはサイズがちっちゃかったわね。けどオマケでこんな可愛いスカートくれるなんて、いいお店だったわ〜」
 色々フリマを冷かしていたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、美羽の店でマイクロミニスカートを貰ったようだ。
「いい買い物? が出来て良かったわね……あら」
 セレアナの目が、ヴァイスの店のアクセサリーに止まった。
「よお、いらっしゃい。見てってくれよ」
「いい色の石ね」
「えー、どれどれ」
 セレアナに続いてセレンフィリティも店を覗き込む。
 そこに、もう一組の客。
「ん、悪くないな」
「ソーマはこの店が気に入ったの?」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)ソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)だった。
「牙をモチーフにしたアクセサリーはあるか?」
「牙、ねぇ。そしたらこんなのはどうだい? この色なんか、季節の新作だよ」
「新作はいらない。……ずっとつけていられる奴を」
「んー、それじゃあ、こいつはどうだい」
「ああ、ペアで、くれ」

「あの店は……」
 買い物をしているソーマを微笑んで見ていた北都は、隣の店の出展者が知り合いの雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)だったことに気が付いた。
 店には先客がいるようだった。

「あれ、雅羅もここで売ってるのか」
「あら、いらっしゃい」
 店の前にいたのは四谷 大助(しや・だいすけ)
 グリムゲーテ・ブラックワンス(ぐりむげーて・ぶらっくわんす)に連れられてフリマに来たのだが、雅羅の店を見つけた途端、同行者の存在を忘れてしまったようだ。
「よし雅羅、全部くれ!」
「一億Gです」
「はい!?」
 大助にふっかけたのは、雅羅の後方から出てきた想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)だった。
「なんでここに……」
「雅羅さんにもフリマを楽しんでもらおうと思って、店番に来たんだよ」
 しかし大量の厄除けグッズを夢悠に任せるのは申し訳ないと思ったのか結局雅羅も店で一緒に売り子をやっていたため、夢悠にとって嬉しい一時となっていた。
「むむむ……」×2
 睨みあうライバル同士。
「すいませーん、この開運にゃんこストラップ、貰えるかなぁ」
 緊迫する空気を物ともせず、ほんわりと間に割り込んできたのは北都。
「しっかし、売ってるのが雅羅だとご利益薄そうだよな」
「駄目だよ、そんな事言っちゃ。あ、キャラ違いで色々あるんだねえ。じゃあ、これとこれと……こっちも下さい」
 軽口を叩くソーマを窘めつつ、パートナー全員分のストラップを購入する。
「ありがとうございます。30Gです」
「俺の時の対応と随分違うな!」
 にこやかに対応する夢悠に、思わず大助が突っ込む。
「うーん、ちょっと高いかなぁ」
「じゃあ25Gで」
「うん、ありがとー」
「しかもまけるのか!」
「そんなことより大助、これなんかどうかしら?」
「何だ?」
 グリムゲーテが大助に差し出したのは、禍々しいドクロ。
 よくよく見ると鎖がついているので、どうやらネックレスらしい。
「いや、何これ……」
「これも開運グッズなのかしら。雅羅さん、何でこんな胡散臭い物買ったのかしら」
「雅羅……物買う時はよく考えた方がいいよ?」
「えぇ。でも、強力な厄除けって言われたから……」
 グリムゲーテと大助、二人の言葉に項垂れる雅羅。
「でも、よくよく見ると威厳があっていいわね。大助、これを身につけてみなさい」
「は!?」
「誇り高き黒印家の従者がいつもそんな地味な白い学生服じゃ、主人である私の品格が疑われるわ」
「むっ……なんだよ、地味なのはオレの勝手だろ。ほっといてくれ」
「このドクロのネックレスに、指輪なんかもいいわね」
「おーい、聞いてる?」
 最終的に、グリムゲーテによって謎アイテムをたくさん装備させられた大助だった。

「わぁ、開運グッズだって!」
「セレン、まだ買うの……?」
 ヴァイスの店から雅羅の店へ、セレンフィリティとセレアナも流れて来た。
「いらっしゃい! 災厄が降りかかる、雅羅印のお守りだよ!」
 夢悠がにこやかに客引きする。
「いや、それじゃ駄目じゃん。でもま、いいや。この開運お守りと開運マスコット、ちょーだい」
「ありがとうございます!」
「うふふ、これで宝くじもお馬も大当たりよ!」
「そんな上手くいくわけないじゃない」
 やたら前向きの妄想に浸りながら、店を出るセレンフィリティ。
 途端に、前の店に声をかけられる。
「いらっしゃい、おねーちゃん。クジ引きどうだい?」
「あたし? よーし、はい」
「これは……(カランカランカラン!)大当たり、特賞だ!」
「え、うっそ、きゃー!」
 喜んだセレンフィリティが飛び跳ねた拍子にまた隣の店に入ると。
「ありがとうございます! 今日100人目のお客さんにはお好きな商品をプレゼントー!」
「うわー、ラッキー!」

「彼女、あのお店で開運グッズを買ったんだって」
「すごい効き目! 私も是非買わなきゃ!」
「くださいなー!」
 セレンフィリティの様子を見た人たちが次々と、雅羅の店へ押し寄せて来た。
「すごいよ雅羅さん、開運グッズが飛ぶように売れるよ!」
「ええ、そうね……」
 夢悠の嬉しい悲鳴に、雅羅はどこか落ち込んだ様子で答える。
「ど、どうしたの雅羅さん、元気ないよ」
「いいのよ。どうせ私が付けていても効果はないけど、他の人に効果があるなら……」
「雅羅さん、元気出して! ほら、こんなに売れててラッキーだよ!」
「雅羅、ほら、オレ達も手伝うから!」
 セレンフィリティの幸運を目の当たりにして落ち込む雅羅。
 思わず必死で慰める大助と夢悠だった。