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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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 同時刻 機動要塞Arcem 司令室

「準備ができた機体から発進して!」
 機動要塞Arcemの司令室でルカルカ・ルー(るかるか・るー)は卓上に屹立するスタンドマイクに向けて叫んだ。
 ルカルカの指示がマイクを介して要塞全域のスピーカーに伝達された直後、格納庫のハッチが開く重厚な音と衝撃が司令部に伝わってくる。
 それから数秒と経たないうちに、司令室の眼下に広がる広大な雲海を、無数の機影が推進機構から噴煙を引いて飛んでいく。
「本司令部搭載のイコン各機展開完了。ならびに随伴艦隊の搭載イコンも各機展開完了した模様。現在の所フォーメーションに乱れはなし、現在、イコン部隊はツァンダ上空の空域を飛行中、敵部隊との接触は40秒後と推定」
 まるで高性能な精密機械のような口調で淀みなく告げるのは分析担当のダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)。ダリルは今回も参謀としてルカルカを補佐する役回りだ。
 ――ルカという旗頭が機能するために俺という頭脳があるのだから。そう考えるダリルの意志は微塵も揺るがない。
「ルカ、たった今、ホレーショの旦那の艦から通信が入った。前衛二隻は当初の予定通り速度を揃えて前進中。残り270秒後に戦域に到達するそうだ」
 特注の超大型ヘッドセットの位置を微調整しながらルカルカに呼びかけたのは司令部でオペレーターを担当するカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)だ。
「司令部了解。当初の予定に変更は無し、作戦通りの陣形を維持ししつつ可能な限りの速度で前進。可及的速やかに戦域に到達されたし――そう伝えて」
 カルキノスに伝えながらルカルカは司令席のデスクのキーボードを叩き、戦場のマップを呼び出した。敵味方合わせても十数個しかなかったマーカーも、ルカルカたちの到着によって一気にその数を増やしていく。今や戦場のマップは大量のマーカーで埋め尽くされ、下ある地図が見えなくなるほどに隠れてしまうほどだ。
 真剣な顔でマップを見ていたルカルカはやがて顔を上げると、卓上のスタンドマイクに向けて再び叫ぶ。
「司令部より各機へ。各機は全力でツァンダを守って。だけど貴方達も無事で――そして、必ず生きて帰って!」
 毅然とした態度で堂々と指揮官としての振る舞いをするルカルカ。
 当然のことながら立場的に、婚約者の鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)にも平等に通信するが視線が雄弁に語る。
 ――愛してる。無事で帰ってきて。
 無言の願いを視線に込めるルカルカを操縦席から見ていた夏侯 淵(かこう・えん)はそれを察して気を利かせ、真一郎の乗機である鷹皇に通信を入れる。
「あーテステス。こちら司令部、夏侯 淵。鷹皇に搭乗中の鷹村 真一郎に告ぐ――死亡フラグを圧し折って来い。なお、これは司令部命令である。以上交信終了」
 通信を終えた淵は素早く機体操縦へと戻る。それを入れ替わりに、カルキノスが口を開いた。
「ルカ、たった今、イコン部隊から報告が入った。垂の奴が真っ先に飛び出していったとかで若干突出気味らしい。聞くところによると、「借りを返さねえと」とかなんとか言ってたみたいだぜ。で、どうするよ?」
 問いかけられた後、ルカルカは間髪入れずに即答する。
「後続の機体に伝えて。僚機は朝霧機をフォロー、その為にも可及的速やかに朝霧機に追いつかれたし――以上よ」
 頷き、その命令を伝えるカルキノス。それに従って次々とイコン部隊は戦域へと突入していく。
 一方、艦隊の仲間と入念に速度を合わせたこの移動司令部も、予定通りのタイミングで戦域へと突入する寸前だった。