リアクション
レティシア・ブルーウォーター 『エントリーナンバー22番、レティシア・ブルーウォーターさんです』 「レティ、いっきまーす。さあ、みんな、一緒だよー」 シャレード・ムーンに呼ばれて、レティシア・ブルーウォーターが仲間たちと一緒にステージに飛び出した。 「か、可愛い♪」 思わず、ユーリカ・アスゲージがつぶやく。 レティシア・ブルーウォーターはピンクのピヨの着ぐるみを着ている。その周囲には、たくさんのカラー・ピヨがいた。 着ぐるみは顔の部分だけが露出していて、髪の毛は本物のピヨのように登頂部から出して赤い大きなリボンで結んでいた。全体にずんぐりむっくりしていて、まるでピンクのボールに短い翼と黄色いあんよがついているかのようだ。いや、お尻の所にはちょこんと尻尾の出っ張りがちゃんとある。 周囲にいるピヨたちも色とりどりで、黄色はもちろんのこと、赤、ピンク、オレンジ、青、緑、紫、白、茶色、黒、濃いの、薄いの、テカテカしているの、艶消しのと、様々なピヨの大群がレティシア・ブルーウォーターにつき従っていた。 「着ぐるみでありますか!? 露出がないであります!」 なんてことをしてくれるんだと、大洞剛太郎ががっくりと肩を落とした。 「こ、これは、ピヨとお友達になりたい……」 思わずティコナちゃん人形を握りしめて、源鉄心が言った。 「みんな、あちきに力を貸して。いっけー」 わーいと駆け出すレティシア・ブルーウォーターが、ピヨたちと一緒に花道を駆けていく。後を追うピヨたちが、我も我もと花道に殺到し、何匹かが落っこちてはパタパタと小さい翼で花道に戻ろうとした。 「か、可愛い……。ほら」 鼻にティッシュを詰めたコハク・ソーロッドが、何匹かのピヨを拾いあげて、花道に戻してやる。 「ピヨ〜♪」 レティシア・ブルーウォーターが花道の突端で叫んだ。 「ピヨ〜♪」 「ピヨ〜♪」 「ピヨ〜♪」 ついてきたピヨたちが一斉に鳴き声をあげる。 花道にいるピヨたちを踏んだりしないように気をつけてレティシア・ブルーウォーターが駆け戻っていく。 「さあ、イッツ、ショータイム」 ステージに戻ったレティシア・ブルーウォーターが、パフォーマンスのためにピヨたちをつかまえようとした。けれども、着ぐるみの短い手では、フリーダムなピヨたちをうまくつかまえることができない。 「いゃあ〜ん。レティちゃん、ピーンチ」 「頑張れ、レティ……」 ステージ袖で半身を壁に隠して、リアトリス・ブルーウォーターが陰から声援を送った。 「そおっと、そおっと……。はーい、じっとしててね」 リアトリス・ブルーウォーターの声援のおかげか、リアトリス・ブルーウォーターがやっと何匹かのピヨをつかまえた。 「はーい、ピヨのお手玉でござーい」 リアトリス・ブルーウォーターが、ピヨたちを空中高く放りあげた。 「ピヨ〜♪」 「ピヨ〜♪」 踊りながら、ピヨたちが、クルクルと空中をいったりきたりする。 「可愛いですわ、可愛いですわ、可愛いですわ!」 ピヨたちの姿に興奮したユーリカ・アスゲージが、思わず非不未予異無亡病近遠をもみくちゃにする。 「この状況は、どうしろというのだ!?」 はぐれてそばを歩いているピヨを見て、イグナ・スプリントが困惑する。 「これは楽しいかもしれぬ」 全身をピヨたちにたかられながら、コア・ハーティオンが言った。 「ピヨ〜!」 最後にステージを埋め尽くしたピヨたちと共に、レティシア・ブルーウォーターがバンザイしてポーズをとった。いや、着ぐるみの構造上、それしかポーズがとれなかったわけだが。 ゲートから楽屋に戻っていくレティシア・ブルーウォーターを追って、波が引くようにピヨたちが楽屋にむかって殺到していった。 「ピョパワー、さいこー」 「うんうん」 盛りあがるアキラ・セイルーンと一緒に客席に残っているピヨのお尻を押して帰るように言い聞かせながら、ルシェイメア・フローズンがうなずいた。 『ただいま、ステージ上のピヨたちをお掃除しています。しばらくお待ちください。さて、レティシア・ブルーウォーターさんは、いかがだったでしょうか』 『もの凄く反則のような気もしますが、ピヨの可愛さにはかないませんわ。ど派手でよかったですわ』 頭の上に、はぐれピヨを一匹乗せたままエリシア・ボックがシャレード・ムーンに答えた。 『ピヨ、可愛かったですねえ。楽しかったです』 しっかりピヨを一匹捕獲しながら、不動煙が言った。 |
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