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リアクション
■幕間:彷徨う野盗と美女二人
「こんなところで何やってんの? 言っとくけど、あたし機嫌悪いからちょっとでも気に入らないこと喋ると引き金引くよ?」
そう告げる彼女、セレンフィリティの前には両手を上にあげたまま立ち尽くしている男の姿がある。
それは昨日、蒼空学園分校のある街から脱走した野盗の一人であった。
「……もう追剥ぎなんてしない。足を洗って職に就きたいんだ」
「ハァ?」
訝しむようにセレンフィリティは男に厳しい視線を向ける。
彼女はあんたねえ、と切りだした。
「甘い。甘いわよ。カタギになります、で信用してもらえると思っているところがまず甘いし、そういう人間ほどすぐに挫折して再犯に走るのがオチよ。それに第一、まず裁判で然るべき処罰を受けて法的な償いを果たしてから、というのが筋じゃないの?」
ねえ、と彼女は男に迫る。
その言葉の端々から怒っているのが感じられた。
セレンフィリティの隣、様子を窺っていたセレアナが苦笑しながら男の前へと移動する。視線を合わせ訊いた。
「本当に野盗から足を洗う、カタギになる意志はあるのね?」
「ああ、当たり前だ。後ろのねーちゃんの言うことも分かるよ。まったくもってそのとおりだ。筋は通すよ」
「そう。覚悟があるならいいわ」
どう? とセレアナはセレンフィリティに視線を向けた。
「更生するって言ってるわよ」
「……分かってるわよ。連れて行けばいいんでしょ」
言うが早いか、彼女は男の襟首を掴むとそのまま引きずって歩き始めた。
「ちょっ! 首が、息が!?」
「はいはい。ちゃっちゃと行くわよ」
「アバウトねぇ」
「そう、いう問題じゃ……ねえっ!?」
どうしようもないと悟ったのか、男はせめて苦しくならないようにと引きずられながらも足を忙しなく動かしている。
見苦しい光景とはこのようなことを言うのかもしれない。
「運びにくいなら動かないでくれる?」
「運び、にくいならっ! 手を、放してくれ!!」
「逃げたら困るでしょ。自業自得だと思いなさい」
国軍あたりにでも男を引き渡そうかと考えながら門の所にまで来ると、見知った顔がちらほらとあった。
昨日の脱走の件で集まってきたのかもしれない。
「誰かいるわね」
セレアナの言葉に促されるようにセレンフィリティが街道の方に視線を向けるが、遠すぎてよくわからない。
誰かがこちらに向かっていることだけが分かった。
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