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汝、己が正義を信じるや? ~善意の在処~

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汝、己が正義を信じるや? ~善意の在処~

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■幕間:嘆く野盗と救いの手

 一人の男を前にして高崎 朋美(たかさき・ともみ)ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)に訊いた。
「どう?」
「嘘はついてないみたいだな。とりあえず目を覚ましてもらうか」
 ウルスラーディが男を起こす。
「あ……ほ、本当にしない! もう二度とあんなことになるのは御免だ」
「分かってるよ。キミが本当に悔いてるっていうのはね。でも――」
 朋美は少し厳しい面持ちで続けた。
「既になしてしまったことの償いをしなくちゃならない……事は、わかってる?」
 その言葉に、男は首をうなだれて嗚咽した。
 件の死なせてしまった男に対しての罪の意識が根強かったのかもしれない。
 その様子を傍観していた高崎 トメ(たかさき・とめ)が言った。
「どもないさかいに男の子がそないふうに泣くもんではおまへんよ」
 男と目線を合わせて笑って見せる。
「働く気はあんだろ?」
「も、もちろんだとも」
「それなら、なあ?」
 ウルスラーディはトメに視線を向ける。
 トメは促されるように口を開いた。
「死ぬ気で働いたらええねん。それでええ」
「よし、と。それじゃあ自首しに行こうか? そのあと何をするか決めながらね」
「しかしお仕事ねえ……俺らみたいになるってのはまた違う気はするな」
 朋美たちが話しているところに近づいてくる者の姿があった。
「それなら俺に良い提案がある」
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)だ。彼は男の傍に寄ると告げた。
「今ニルヴァーナの開拓が盛んでな。お前みたいな脛に傷持った連中も働いてるんだが、どうだ?」
「おいおい。こいつは荒事が嫌になったんじゃないのか?」
「そうだよ。せっかく罪を償って普通の生活に戻れるかもしれないのに」
「せやなあ、けど……」
 朋美とウルスラーディの意見とは違ってトメは座した男の様子を見る。
 嗚咽は止み、何か考えるように静かにその場に佇んでいる。
「なあ……」
 男は柊に声をかけた。
「なんだ?」
「それは人の役に立てることなのか」
「大陸中の役に立つことさ。なにせ世界を救えるかもしれないって話だ」
 男は立ち上がると柊に手を差し伸べた。
 柊は男の手を取ると口を開いた。
「俺が口添えしてやるよ」
「ありがとう……それと」
 男は振り返り朋美たちに視線を向ける。
 さっきまでの弱々しい雰囲気はない。
「帰ってきたら自首します。だから今は――」
「いいよ。労働奉仕みたいなものだから、大変だとは思うけど」
「帰ってきたら普通に仕事ができるさ。まあ頑張りな」
「死なない程度に死ぬ気で働いてきなはれ。頑張りや!」
 各々が男に激励を送る。
 柊が男を連れだってその場を後にした。
「他の人も探そうか」
「そうだな。似たような奴がいるかもしれねえ」
 三人は町の雑踏へと姿を消した。