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リアクション
■幕間:再会
「意外と距離がありましたね」
「そんなことは前に森を走り回った時に知ったわ」
久瀬が汗を拭いながら呟いた言葉にシルフィアが続いた。
言いながら振り向いた先にはパートナーの姿がある。見られていることが分かったのだろう。アルクラントは苦笑した。
「この森を通るたびに言われそうだ」
「行動する前に一度よく考えてって言ってるのよ」
「レーンは良いことを言ったぞ。聞いたか久瀬?」
「玖純クンも容赦ないですねえ……」
「あえて言っておくが俺より手厳しいやつなんていくらでもいるからな?」
玖純は言いながら久瀬から聞いた話を頭の中で反芻していた。
「でも意外だったよ」
笠置が久瀬の後ろを歩きながら続けた。
「久瀬先生がまさか純愛路線だなんてね」
「そうじゃな。人は見かけによらんのう」
「純愛って……」
久瀬は表現し難い顔をする。恥ずかしいやら怒るやら拗ねるやら。
自身でも理解できない気持ちのようだ。
「幼馴染の機晶姫を目覚めさせるためにか。男らしいじゃないか」
「大事な人を助けるためになんて素敵じゃない」
(アル君もそのあたりしっかりしてほしいんだけどなあ)
アルクラントとシルフィアからもいじられて居心地が悪くなったのか、久瀬は咳をすると早足になった。玖純はそんな様子の久瀬を眺める。
「パートナーロストで寝たきりの幼馴染か……」
誰にともなく呟く。彼らの視線の先、森の終わりが見えた。
いつのまにか朝が来ていたようだ。逆光の中、人影が見える。近づいていくと誰がいるのか姿がはっきりとしてきた。いたのは――
「い、一日ぶりよね」
「私も一日ぶりですわ」
マーガレットとライアー・フィギアだった。
顔をひきつらせたマーガレットをライアーが後ろから抱きしめていた。
ご満悦なのか、笑みを浮かべたままライアーが言った。
「みなさんお茶でもいかが?」
■
ライアーの家はツァンダ東部の森とシャンバラ大荒野の境にあった。
刈り揃えたように背の低い草が生えた平原と草一つ生えていない荒野が隣り合う風景は、この世界の衰退を感じさせなくもない。
家の中、客間に通された久瀬たちは椅子に座ると家の主の言葉を待った。
「お茶がいいかしら。それとも紅茶、珈琲?」
ライアーは矢継ぎ早に告げると皆の前にカップを並べていく。
「そういえばお茶菓子が必要ですわね。取ってくるのでお待ちくださいませ」
彼女は言うと部屋を出て行く。
空のカップを前に玖純が誰にともなく訊ねた。
「ライアーに聞くことがあったんじゃなかったか。主に野盗に関して」
「ええ、なんというか興が削がれたというか……」
「アル君。なんかこの家に来てから危ない感じがするんだけど」
「注意だけしておこう。せっかくのお誘いだし」
シルフィアの忠告にアルクラントは頷きながら応えた。
「ここがアジトなんだろうけど他の人たちが見当たらないね」
笠置は耳を澄ませながら言う。
どうやら自分たち以外この家にいないのを確認していたのだろう。
「それで久瀬の勘は当たってるのかな?」
「私もアル君も半信半疑なのよね」
二人は久瀬を見る。
彼は空のティーカップにスプーンを差し入れるとカラカラと音を鳴らす。
「似てるんですよね。目というか雰囲気というか」
だが確証はないと久瀬は言った。
「まあそれも確かめてみればわかることだろ」
「そうですね。あ、ちょっとお手洗いに――」
久瀬が立ち上がり部屋を出ようと扉をあけたとき、声がした。それはつい最近聞いた声であった。
部屋の中にいた者たちにもその声は届いたようで何事かと部屋から顔を出す。
声は地下に続く階段から聞こえてくるようだ。何やら言い争っている様子である。
どうしたものかと久瀬たちが考えていると地下から駆けてくる足音が聞こえてきた。
階段から顔を出してきたのは良く見知った人たちだ。
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)とコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)にイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)、そして御凪 真人(みなぎ・まこと)の4人だ。彼女らは額に汗を滲ませて、目を見開いて、久瀬たちの方に近づく。そして叫んだ。
「に、逃げてぇーっ!?」
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