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訪れた特殊な平行世界

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訪れた特殊な平行世界

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「これは大変な事だよ。このまま記憶食いを放っておいたら、みんなの提供した記憶が無駄になっちゃう」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は特殊な平行世界によって侵食される空に飛び交う記憶食いを見上げていた。
「……何とかしなきゃ……そう言えばヒスミとキスミはどうしてるかな。あの二人なら何か作れるはず!!」
 記憶食い退治に役立つ案はないものかと頭を傾げていた美羽は親しくする双子を思い出し、協力を頼みに彼らの捜索を始めた。

 イルミンスール魔法学校、廊下。

 校長室で記憶提供についてあれこれ騒いだ双子はロズが場所取りをしている実験室に急いだ。二人に生えた素材は多く提供した事と時間経過で消失していた。

「記憶食いに対抗する何かを作るぞ」
「記憶提供も終わったしな」
 双子は大変な時だというのに声がウキウキ気味であった。
 しかし、
「やっと見付けたでありますよ」
 双子にとって心底聞き覚えのある声が彼らの足を止めた。
 その声の主とは
「お前か」
「見付けたってどういう事だよ」
 双子仕置き人の一人である葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)であった。今までの事を思い起こしてか双子は青い顔で妙に必死。
「どうもこうも双子と遊ぶために来たのでありますよ。学校に戻ったと通りで聞いて急いだでありますよ」
 吹雪はにこやかに答えた。
「遊びじゃなくて見張りだろ!?」
「しかも素材まみれじゃん」
 双子は同時にツッコミを入れた。
「自分の記憶に興味有りでありますか? 見てもいいでありますよ?」
 吹雪はニヤリと笑いながら咲き誇る素材を双子に勧めるが、
「……何かすげぇ嫌な予感がする」
「同じく」
 嫌な予感を感じまくる双子は手を伸ばさない。
「それは残念でありますな」
 吹雪は予想通りの双子の反応に大仰に肩をすくめた後、あちこちの素材に次々と触れ記憶を読み取り抜いていく。
「これは初めてお仕置きした時でありますな」
 吹雪が初めて双子をお仕置きした思い出や
「これはマークしてお仕置きしだした時の事でありますね」
 双子を尾行しお仕置きした思い出に
「これは二人を逆さ吊りにして……」
 妖怪の山で行った双子の持ち物検査や
「これは海で屋台を滅茶苦茶にされて……」
 双子が作製したゴーレムによって屋台が被害を受けた事やその他諸々主に双子をお仕置きした思い出ばかり。
 吹雪が新たな記憶に手を伸ばそうとするのを
「ちょっ、どんだけあるんだよ」
「そうだよ。普通なものは無いのかよ」
 双子は急いで制止した。聞いているだけでその時の事を思い出し体が震えてしまう。
「いくらでもあるでありますよ。例え記憶をあげて無くなったとしてもまたすぐに作れるであります……しかし、似たり寄ったりでもっと工夫が必要でありますな」
 吹雪は双子にニヤリ。完全に面白がっている。
「いやいや、工夫なんかいらねぇって」
「もう嫌だぁ。今日は精神攻撃かよぉ」
 双子は勘弁と必死である。吹雪が思い出を語るだけで十分お仕置きに値する。
「精神攻撃とは失礼でありますな。楽しい思い出を振り返りこれからも作っていこうというだけで今日はただ遊びに来ただけでありますよ」
 吹雪はニヤニヤ。自分の語りで双子が怯えるのは予想済み。何せ双子の相手は手慣れているので。
 たっぷりと双子を弄った所で
「二人はこれから何をするのでありますか?」
 吹雪は改めて訊ねた。
「……記憶食いを倒す何かを作りに行く途中だ」
「まだ何も考えてねぇけど」
 双子はようやくこれからの事を話した。
 その時、
「だったら水鉄砲のような魔法薬発射装置はどう?」
 美羽が現れた。吹雪と同じく通りで双子の行方を知りここに来たのだ。
「それいいな! 探求会の奴らが作った薬を詰めて……空にいても問題無いよな」
「しかも鉄砲なら後で色々改造出来るよな」
 双子は思いっきり美羽の案に食い付いた上に良からぬ事を考える。
「余計な改造は無しでね。私の分もお願い」
 美羽はきっちり双子に釘を刺し、自分の分もお願いした。
 すると
「任せろ」
「すぐに作るからな」
 双子はどんと胸を叩き、作る気満々となりすぐさまロズが待つ実験室へ向かった。
 当然美羽と吹雪も同行した。双子が余計な事をせぬよう見張るために。
 余計な手を加えようとする度に見張り三人によって止められまともな魔法薬発射装置を作り上げた。
 双子が何やかんやしたために発明が完成した時、丁度調薬探求会が記憶食い消滅薬を完成させ、記憶食いと対峙する者達に配布された。