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訪れた特殊な平行世界

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訪れた特殊な平行世界

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■新たな旅立ち


 騒ぎの翌朝、イルミンスール魔法学校の前。

「気を付けてな。ミモラの事、悪いが頼む」
「彼女がこのパラミタでまた騒ぎを起こさないように見張る事も忘れずにね」
 シリウスとサビクはリリアンヌと別れの言葉を交わしていた。内容はとにかくミモラを頼むというもの。
「はい。大変お世話になりました」
 リリアンヌは便宜を図ってくれたシリウス達にぺこりと頭を下げ、別れを交わす。

「魔法薬を作る事もいいけれど、旅を楽しむのもいいと思うよ。人生に同じ事は決してないと思うし。いくら長生きであってもね」
「お体を十分気遣いながら旅をして下さい。もう、名も無き旅団としての旅を終わったのですから」
 北都はミモラ、クナイは高齢のガスタフの体を気遣いながら別れを交わしていた。
「……まぁね」
 ミモラの様子は何とも言えぬ感じであった。何せ彼女が明確な意志を示す前にガスタフやラールにユリスに押し切られる形で旅に加えられたので。以前同様あからさまな忌避を示さないのは満更でもないからだろう。
「心配してくれてありがとうな。自分達だけの旅が出来る事に胸を躍らせているのか逆に元気になったようじゃから心配ない」
 ガスタフは少し翳りはあれど晴れ晴れとした笑顔でクナイに答えた。

「ラールさん、もしまた此処や葦原へ立ち寄った時は旅の続きを沢山聴かせて下さいまし。私、楽しみにしております! ムヒカさん達もお気を付けて下さい」
 フレンディスは以前出会った時のラールのお話が楽しかったのか見送りに来ていた。もちろんムヒカの事も忘れない。
「うん、また会ったらたくさんお話してあげるね、お姉ちゃん!」
「そっちも元気でな」
 ラールはにこにことムヒカはニヤリとそれぞれ笑みを浮かべて別れをした。
「追い求めていた名も無き旅団と一緒で浮かれるのは分かるが十分、気を付けてな」
 ベルクは騒ぎの最中と変わらず呑気なユリスに別れの言葉をかけた。
「大丈夫さ〜。でも君の言う通りまさか彼らと旅が出来るなんて思わなかったよ。本当にこっちに来て良かったさ」
 ユリスは浮かれ気味にベルクの別れの言葉を受け取った。調子はあまりに軽くて頼りにならない。

「あたしは当分イルミンスールに厄介になるから、ここでお別れだけど。みんなと旅が出来て終わりを迎える事が出来て良かったよ」
 旅から離脱するジナは共に旅をした仲間との別れを惜しんだ。
「えぇ、私達もです。ジナ、元気で。また会いましょう」
「ジナお姉ちゃん、またね」
「元気でな」
「解放されたんだから後悔の無いようにのう」
 リリアンヌ、ラール、ムヒカ、ガスタフは共に別れを惜しんでいた。
 そうして散々別れを惜しんだ後、
「気を付けるですよ〜」
「何かあれば言うんじゃぞ」
 エリザベートとアーデルハイトがかけた別れの言葉に深々と頭を下げて皆に送られながらリリアンヌ達は新たな旅に出発した。今度は自分達だけの記憶を持っての何者にも縛られない気ままな旅へ。

 別れがある一方。
「……」
 ロズは学校の中庭で空を見上げていた。何もかも元に戻った事が信じられぬ様子であった。事件が解決してから度々空を見上げていた。
「平和になってよかったよなぁ、ロズ」
「そんなに気にしなくてももう大丈夫だぜ」
 双子は事件解決後幾度も空を見上げるロズに楽しそうに声をかけ励ましていた。
「……そうだな。今思っても詮無いが、自分の世界がここと同じように救われていたらどうなっていたのかと彼が犠牲になる事も……」
 ロズは双子の気遣いを嬉しく思う一方、自分の世界が救われていたら自分の製作者も亡くなる事はなかったと胸が苦しくなっていた。
「多分、救われていただろうな。でもお前の言うように思っても仕方無いさ。それより楽しくいこう。お前をつくった俺もきっとそう思ってる。俺が言うんだからこれは間違いねぇ」
「ヒスミの言う通りだ。オレを元にしているんなら楽しくやろうぜ」
 ロズの世界では製作者であるヒスミと元になったキスミがあっけらかんに言うなり実験室に向かった。数日後にある者へ渡す結婚の祝いを作るために。
「……あぁ」
 自分が知るよりも若い彼らの言葉にロズはほのかな笑みを口元に浮かべた後、保護者としての仕事を果たすのだった。

 イルミンスール魔法学校の中庭。

「どうかしら? とっておきのケーキのレシピでケーキを作ってみたけど」
 オリヴィエは約束通りとっておきのレシピで作ったケーキを持参し舞花やレシピを教えてくれた歌菜達に御馳走していた。
「はい、とても美味しいです」
 舞花はケーキを美味しく頂き
「レシピを使ってくれてありがとうございます。とても美味しいです」
 歌菜は自分が教えたレシピを使ってくれている事に喜びつつケーキを頬張った。
「……なかなかだ」
 かなりの甘党の羽純も満足の出来なのかケーキを口に放りこんだ。

 再び平和な時間がこの世界のパラミタに戻って来た。

 ただし特殊な平行世界は消えたのではなく退いただけであり、今も数多の平行世界を渡り歩いてる。ちなみに事件解決後、エリザベート達に命じられロズは特殊な平行世界の行方を確認しに行ったが、なかなか見つからず帰還したという。
 両調薬会の関係は相変わらずであった。
 そして、知的生命体が生まれた廃棄場と調薬探求会と双子はエリザベート達に廃棄関連について問題があると注意を受け、安全強化に努めたという。ミモラに関しては元名も無き旅団に注意を怠らないようにと頼んだという。

担当マスターより

▼担当マスター

夜月天音

▼マスターコメント

 参加者の皆様ありがとうございました。そして大変お疲れ様でした。
 皆様のおかげで無事に特殊な平行世界は退き名も無き旅団は新たな旅に出る事が出来ました。長期となりました名も無き旅団に関わる事件が解決となったのは皆様のおかげです。ここまでお付き合い頂き大変ありがとうございました。
 最後に少しでも楽しんで頂ければ幸いです。