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【ニルヴァーナへの道】浮遊要塞アルカンシェル(後編)

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【ニルヴァーナへの道】浮遊要塞アルカンシェル(後編)

リアクション

 アルカンシェルからは、大きな砲台がせり上がり、砲撃の準備を始めている。
 自動プログラムによる、周囲への攻撃も続いていた。
 内部にいる者の作業妨げになることは解っていても、砲撃を止める為に動かねばならない。
「砲台に集中攻撃。魔導砲を止めることだけを考えろ」
 クレアが指示を出し、アルカンシェルを追う者達に砲台を攻撃させる。
「空京を撃たせるわけにはいかない」
 国民と、軍人――アルカンシェル内部に突入した、武人達も含めて。
 どちらかを犠牲とするのらば、もちろん自分達軍人だ。
 国軍司令部と、クレアの意識に違いはなかった。
「国民を守るための国軍である!」
「ちょ、ちょっとまってボス……とか言っても無駄だよなっ!」
 クレアと共に、ウンヴェッタに乗っているエイミーは、慌てながらも、覚悟を決める。
 クレアは機体を、砲口へと飛ばせていた。中に飛び込むかのように。
 暴発すれば、アルカンシェルの上部も吹っ飛ぶ可能性が高い。それも解っている。
「シャンバラにも騎士と言える存在がいるか――」
 龍騎士団のルヴィルは、従龍騎士に砲台への攻撃を命じる。
「みゆう、攻撃代わって!」
 優子の傍にいる竜司からロザリンドへ、ロザリンドから軍に送られた最新の地図を見ながら、リンが言う。
「え? いいけど、どうするの?」
 カリプテ・ヘレナを、未憂に代わって、リンが操り始める。
 しかし、もう弾は切れてしまっている。
「脱出準備しておいてね」
「え? えーっ!?」
「とどけ! あるまいんあたーっく!!」
 カリプテ・ヘレナは急発進したかと思うと、スピアを構えて、全速力でアルカンシェル――エネルギー室付近へと飛ぶ。
「……あ……!?」
 声にならない悲鳴を上げる未憂を抱えて、機体がアルカンシェルに衝突する直前に、リンはイコンから脱出。
「ん……っ」
 ベルフラマントで身を隠していたが、無差別な攻撃が襲い掛かってくる。
 アルカンシェルから放たれたビームがリンの足を焼いた。だけれど、未憂の事は決して離さずに、地獄の天使の翼でリンは飛んだ。
 しかし半分くらい飛んだ時点で、アルカンシェルから発せられたレーザーが2人に迫る――。
「リン……っ」
 未憂はリカバリで回復。でも、回避する手段がなく、ただ、リンをぎゅっと抱きしめた。
 途端。
 2人の身体が強い力で下方に引っ張られる。
 レーザーは間一髪2人の頭上を飛んでいった。
「あれ? もしかして……神さまが助けてくれた? 変なのー」
 地上に降りたリンはそう笑った後、意識を失う……。
 未憂は彼女を抱き止めながら、見上げる。
 大きなドラゴンが、上空を飛んでいた。

 エレベーター、階段を駆け上がり、操縦室に次々と契約者達が飛び込んでくる。
「ありがとう、皆……っ。ボクも絶対、アルカンシェルを止めるまでは、脱出しないよ!」
 機晶ロボットと戦い続けてきたカレンが、そう言いながら力を振り絞って、天のいかづちを放った。ドア付近の機晶ロボットがショートする。
「最悪、この要塞をシャンバラに叩きつけてでもです」
 綾乃も強い意思を示しながら、機晶ロボットに梟雄剣ヴァルザドーンを叩きつける。既に、光条兵器は使えなくなっていた。
「頼みます!」
 ボロボロの身体で立ち回りながら、綾乃はシリウスサビクに一瞬目を向けた。
「ああ、今やれるオレたちがやれることをやるしかねぇ!」
 誰かの口癖のような言葉を吐きながら、シリウスは傷ついた体に鞭打って、サビクと操縦席、副操縦席に飛び込んだ。
「手動切り替えスイッチを探す。シリウスは操縦を」
 サビクはそれらしきスイッチを押していく。
「……これか?」
 手動と思われるマークを発見。そのボタンを押した途端に、警告音が響いた。
「切り替わった!?」
 シリウスは操縦桿を押えて、モニターを確認。
 進路を変えても、魔導砲の照準は変えられそうもなかった。
「Uターンする時間は時間はない。バックで着陸するぞ!」
「着陸に必要なエネルギーは残っている。ブライドオブドラグーン……外すかどうかは、任せるよ」
 サビクが計器を確認しながら言う。
「手動切り替え成功。アルカンシェルは緊急着陸態勢に移行。エネルギーの残量に問題はない」
 ジュレールが電子機器の知識で、通信機を操作。制御室に状況を知らせる。
 制御室から全館に報告が入り、すぐに交信能力のあるものが、外部にそれを知らせる。
『こちらも機晶ロボットの制止に成功しました』
 白竜の声が響く。又吉による制御室からの命令により、ロボット達は動きを止めた。
 操縦室に集まるよう、信号が送られていたとのことだ。

「外して大丈夫。だけど慎重にね」
 手動切り替え成功の知らせを受けた鳳明が、サイコキネシスでブライドオブドラグーンを押えている美羽とコハクに言う。
「動力を落すぞ」
 ダリルが、動力炉をゆっくりと止める。
「わかった」
「うん、慎重に運ぶね」
 美羽とコハクは慎重にブライドオブドラグーンを抑え、運び始める。
「協力しよう」
 イルも協力して、ブライドオブドラグーンを自分達の方へとゆっくり運んだ。
 エネルギー乱舞も無くなり、動力炉は治まっていく。
「急いで、脱出のできる場所に向かいましょう」
 鈴鹿が、ひどい怪我を負った敬一をヒールで癒しながら言う。
「退路は守ったぞ」
 敬一はにやりと笑みを浮かべ、皆は強く頷く。
「先に行っててね」
 ルカルカが軽快に皆を送り出す。
 回路切断により、操縦室からの命令も受け付けなくなっている為、着陸が完了するまで、残って微調整する者が必要と思われた。

「撃て、アルカンシェル――!」
 操縦成功の知らせを受け、クレアは砲身への突撃ではなく、捨て身で砲身を押さえつけ砲口を空へと向けていた。
 残っていたエネルギーは、空へと飛んでいった。

 神楽崎優子達、エネルギー室に残ったメンバーは、カリプテ・ヘレナの突撃により開いた穴の傍まで、避難していた。
 降下の負荷を感じていく。

「総員衝撃に備えろ。――アルカンシェル、シャンバラに着陸する!」

 優子が声を上げ、制御室を通じて館内に彼女の声が響き渡る。
 手すりに、傍に居いる者に捕まり、内部にいる者は衝撃に備えた。

 そして。
 浮遊要塞アルカンシェルは、本土最南端、最終防衛ラインに着陸を果たす――。

○     ○     ○


「ぐふん……あ、自称反陽子爆弾のスイッチ入っちゃった……」
 皆がほっと息をついたそんな時。
 着陸のショックで、にゃんくま 仮面(にゃんくま・かめん)はとんでもない物を、高機動型シパーヒーから落してしまった。
「あー、下の階に落ちて行っちゃった」
「よ、陽子さんが!?」
 変熊 仮面(へんくま・かめん)は、慌てふためきながら。
「呼雪ー! 今すぐ返事しろー! 爆弾のスイッチ入っちゃった……」
 と叫び、飛び立つ。
 次の瞬間。

ドーン

 大きな音を立てて、アルカンシェルの上部が爆発した――。

 間一髪、変熊の叫びが届いていたエネルギー室メンバー達は、脱出口から飛び出して避難し、無事だったという。
 尚、不可抗力な爆発により、壊れかけていた魔導砲のエネルギー炉を含む、上層部分の大半が吹っ飛んだらしい。

○     ○     ○


「さて、彼女を迎えに行くかな」
 第二対策本部で、アルカンシェル着陸の報告を受けたミケーレ・ヴァイシャリーが、護衛と共に立ち上がる。
「彼女、ですか?」
 こんな時にと怪訝そうな顔をする大地に、錦織百合子が苦笑しながら言う。
「探索隊に彼の交際相手が加わっていたんです。詳しいことは私も知りませんが、ちょっと訳のある人のようです……」
「あの、こちらに向かってくる時、何者かにつけられていたようですけれど、大丈夫でしょうか?」
 『青い鳥』がミケーレに走り寄って尋ねる。
「大丈夫だと思うよ。多分、狙いは女王だったんじゃないかな。タイミングを合わせてパートナーにダメージを与えて女王の力を殺ぎ、暗殺しようとしたとかね。アイシャ様は政府の言いつけを守ってくださいった。いい娘のようだね」
 くすりとミケーレは笑みを浮かべて、去っていく。
「ミケーレは、ラズィーヤ様ほどではないですが、底の見えない方です。でも、悪い人ではありませんわ」
 そして、百合子も大地達に頭を下げた後、ミケーレに従ってアルカンシェルから帰還した人々を迎えに行くのだった。

 アルカンシェルを止めた契約者達は英雄として迎えられる。
 鉄橋や空京を守った人々も、シャンバラ国民達に讃えられた。

 宮殿からは、事件後、内通者と思われる役人数名が消えた。
 名家とは繋がりのない、目立たない者達だった。
 
 ブライドオブドラグーンは、美羽から隊長の優子の手に渡った。
 アルカンシェルは調査と修理が進められるだろう。

 契約者達は、ニルヴァーナへの希望を繋いだ。

 だが、まだこの事件は終わってはいない――。


 ――浮遊要塞アルカンシェル 終――

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

シナリオへのご参加ありがとうございました。

操縦室が手薄でしたが、誰かの落ち度ではないです。
前編ガイドでの私のアピールが足りませんでした。
後編でも説明の追加などが多くなってしまいすみません。

アルカンシェル……。

……

……

……

派手に破壊かなとか思っていたなんて……とても口には出せませんっ。

希望を繋いでくださり、ありがとうございました。
色々と覚悟を決めて挑んでくださった方も多く、とにかく皆様に助けられたシナリオとなりました。

●白百合団昇格のお知らせ
神楽坂 有栖(SFM0003273)さん
白百合団の特殊班員に昇格とさせていただきます。

●遠隔呪法について
式神の行動より術者の行動や心情が具体的に書かれていた方は、アクションを優先とし、式神を使用しないとして描写をさせていただきました。

【マニュアルより(抜粋)】
陰陽師の特殊ルール:『遠隔呪法』
『遠隔呪法』を行っているあいだ、陰陽師は術に集中しなくてはならず、ほかの行為は行えません。
リアクションでは『遠隔呪法』の結果おきている事象が中心となって描写され、陰陽師本人の描写は最低限しかなされません。

●イコン使用条件について
イコンを使用された場合(使用条件に沿った描写にした場合)よりも、イコンを使用しない方がPCの目的、PLの意図に沿った描写が出来ると判断した方につきましては、イコンなしとして描写をさせていただきました。

●メッセージありがとうございます
貴重なアクション欄を割いての私信、ありがとうございます。毎度、ほとんどお返事がかけず、申し訳ありません。
励みにさせていただいたり、参考にさせていただいております。深く感謝しております。

組織、展開に関することなど、私個人でお返事をお返しできないご提案、ご意見やお悩みに関しましては、運営の方にご意見を戴いた旨お話し致しました。

それではまた、次のシナリオでお会いしましょう!