校長室
【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?
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「なるほど! 蛇々ちゃん達のように、氷らせてしまえば動きを止める事ができるんですね」 蛇々達の行動を見ていた杜守 柚(ともり・ゆず)が、ポンッと手を叩く。 「……って、ああ! 石像さん、暴れちゃダメですよ!?」 石像の攻撃をかわした柚が【バイタルオーラ】を、攻撃というより意識を逸らすために使う。 「(ああ……三月ちゃんと海くんと、楽しく修学旅行をするつもりが……どうしてこうなるのでしょう? でも、他の方々に危害を加えさせないようにしなくちゃ!)」 パルテノン神殿に着いた柚は、石像が暴れてるのを目撃したので、これを止めに行ったのである。 高円寺 海(こうえんじ・かい)と連携する杜守 三月(ともり・みつき)は、動く石像達を見て、事前に予想を立てていた。 「(魔法で暴れてるって事はゴーレムと同じなのかな? だったら石像のどこかに他と違う石が埋め込まれてるはず。その石を破壊したら止まるかもしれないね)」 ……予想は外れていた。 「三月! 何処にも他と違う石なんて無いぜ!?」 石像を傷つけないように、剣の腹部で攻撃を受け止めた海が言う。 「お、おかしいな? 僕の予想と違うなんて……」 三月は【殺気看破】を使いつつ、尚も【超感覚】で不自然な石を見つけようとする。 「三月ちゃん! 海くんの言うとおり、石が無いです!」 魔法を発動した元の石の破壊をすると三月に聞いた柚も、【氷術】で石像の足を凍らせて動けなくした後、【超感覚】でその位置を調べていた。 一応、「えっと、少し眠っててくれますか……?」と、石像に【ヒプノシス】を使ってみた事もあったが、効果は全く無かった。 「魔力のある石なら反応してくれるかもって思ってましたけど……」 「柚、こうなったら、全部の石像を調べよう! 範囲が広いから【ブリザード】で広範囲を凍らせてよ!」 「わかりました」 柚が壊れないように少し力をセーブしながら、【ブリザード】を放とうとする。 「今少し待って下さい! 柚さん!!」 「え……佑一さん?」 柚に声をかけたのは、矢野 佑一(やの・ゆういち)である。 「騒ぎが大きくなって、怪我人が出たら大変です!」 「大丈夫! 柚がいるから多少無茶しても【ヒール】か【ナーシング】で治してくれるし」 三月はそう言うが、佑一は首を横に振る。 「柚さん。周囲の観光客の中に、犯人が紛れ込んでいる……僕はそう考えているんです」 佑一の呟きに、柚が驚いた顔をする。 「え!?」 「しーッ! だから、ブリザードを使って犯人まで逃してしまったら、いけないでしょう?」 契約者達と石像の戦いは、『パルテノン神殿の期間限定のイベント』として、ソレ目的の観光客の集客にも一役買っていた。 実際、離れた所では、カメラを手にした観光客の姿も見える。 「動き出した原因を探すとしたら、第一に魔法をかけられた痕跡が石像についてないか調べます。第二として、この状況を見ている人の中に不自然な人がいないか、気を配っておいたほうがいいかもしれません」 柚は佑一の言葉に頷く。 「ですけど、犯人の捜索というのは……?」 「それはミシェルの方が得意だから、それとなく周囲に気をつけてほしいって、そっと伝えておきましたよ」 佑一のパートナーであるミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)は、特技の捜索を活用して、隠れている物や隠れてる人物を探していた。 「(ぅ…。久々の旅行なんだし、最後までゆったりと過ごせるかな〜って思ってたのに、いつの間にか事件を追う感じになっちゃってるね。でも、暴れてる石像さんをそのままにしておけないし、やっぱりなんとかしないと……)」 犯人は現場に戻って来ると言う。 特に、今回の石像の件は、『石像に暴れさせる』のが犯人の目的である。 石像が暴れる事によって、犯人に利益が出るならば、必ず『ちゃんと動いているか?』を見るために見物に来るハズである。 ミシェルと佑一の読みは、こうであった。 元々相手を傷つける攻撃がミシェルは苦手な為、スキルの【カタクリズム】は、犯人を見つけた場合にのみ、その強力な念力で動きを止めるまたは抑え込む等に使用する事にしていた。石像相手だと、サイコキネシス系が3秒間程度しか効かない事は、アールを見ていて学んだのである。 それでもミシェルは、石像が迫ってきた時は、ミーアシャム(フラワシ)を呼び出して拘束帯で防いで、その隙に距離を置いていた。 様子を見ていた佑一は、ミシェルが動き易くするため、柚の【ブリザード】より、もっと石像だけをピンポイントに絞った手段に打って出ようとしていた。 ……が、予想していなかった援軍の登場が、佑一の計画を狂わせた。