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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?

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第四章:ローマ(その2)
 ローマには古代遺跡も多い。
 各地の神話を調べる事が趣味であり、考古学を専攻している神崎 優(かんざき・ゆう)は、神崎 零(かんざき・れい)神代 聖夜(かみしろ・せいや)陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)らを伴い、フォロ・ロマーノを訪れていた。
 ティトゥスの凱旋門を潜ると正面にフォロ・ロマーノの全景が広がるが、見通しはあまり良くはない。
 それでも中央にカピトリーノの丘に建つローマ市庁舎。その右奥にはヴェネツィア広場のヴィットリオ・エマヌエーレ2世の記念堂が見える。
「ティトゥスの凱旋門は現存するローマ市最古の記念門なんだ」
 優の言葉に零が首を傾げる。
「記念門?」
「ユダヤ戦争の戦勝記念に建てられたんだ。西暦81年くらいにね」
「1900年以上も前に!? すごいわね」
「優、あれは何だ?」
 聖夜が別の遺跡を指さす。
「あれはウェヌスとローマ神殿だよ。ネロ帝のドムス・アウレアの遺構の上に建てられた神殿で、ネロの巨像は近くのアンフィテアトルムに移されて、後にコロッセオと呼ばれるようになったんだ」
「あの有名なコロッセオにか。成程」
「完成したのは西暦141年くらいですね」
 刹那が優の言葉に付け加える。
「何世紀もかけて様々な理由でこの神殿の周りを囲んでいた円柱は取り除かれていったんです。元々の位置に建っている円柱はごくわずかで、今はその殆どが円柱の代わりにツゲの木になっています」
「刹那もこういった遺跡とか好きなのか?」
「ええ、こういった遺跡や歴史に触れる事は好きです」
 刹那が聖夜に微笑む。
「しかし、コロッセオが見学出来なかったのは残念だな」
「何かイベントが開かれるらしいですね。確かに5万人も収容できますけど……」
「ああ、だが、このフォロ……何とかも面白いな。これだけ数々の遺跡が一同に集まってるなんて」
「フォロ・ロマーノは、西暦前6世紀頃からローマ帝国がテトラルキアを採用する293年にかけて、国家の政治・経済の中心地であったんだ。その後、ローマ帝国が東西に分裂し、首都機能がラヴェンナに移されると異民族の略奪に曝されるようになり、西ローマ帝国滅亡後は打ち捨てられ、土砂の下に埋もれてしまったけどね」
「埋もれたんですか?」
「うん。だから、フォロ・ロマーノの発掘が本格的に行われるようになったのは19世紀からなんだ」
 優と共に零が歩きながら、大小様々な遺跡を見つめる。
「俺達は今、ウィア・サクラ(聖なる道)に沿って、東から西に向けて歩いているんだけど、これが少し厄介でね」
「厄介? どういうことだ?」
 後方を歩く聖夜が言うと、刹那が苦笑する。
「そなたの事ではない。優が言ってるのは、考古学的な事です」
「そう、このフォロ・ロマーノは帝政時代初期までに開発が繰り返されてきて、遺構も様々な時代のものが混在しているから発掘調査は難しいんだ。まぁ、現在の遺跡は、大部分が帝政時代以降のものだけど」
 そう言って、一つの遺跡を指さす。
「あそこに、ピョンと長い石柱が見えるだろう? あれはフォカスの記念柱と言って西暦601に東ローマ帝国皇帝フォカスを称えて、ローマ中心部、フォロ・ロマーノのロストラ(演説台)の前に建立され、フォカスに献納または再献納された石柱だよ。あの記念柱は、古代のフォロ・ロマーノに加えられた最後の建造物なんだ」
「背後に見えるのは何ですか?」
「セプティミウス・セウェルスの凱旋門だね? 西暦194年から始まった第6次パルティア戦争での勝利を記念して紀元203年に建設されたんだ」
「その差がおおよそ400年も……」
「ね? 一緒にあるのに、それだけ年数が違うんだ。厄介だろう?」
 楽しそうに笑う優に、零、聖夜、そして刹那までも「本当に遺跡や神話が好きなんだな」と改めて実感するのであった。