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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?

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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?
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リアクション

 ギリシャの日はすっかり落ち、夜を迎えていた。
 ホテルの一室には、ギリシャの地に来ていた生徒達が、それぞれの寝室とは別に、ルカルカ達の借りた一際大きな部屋に集合していた。
「……海」
「何だ? ダリル」
「居辛くないか? この空間に」
「さっき、一足早く飛んでいったドラゴニュート……カルキノスって言ったか? オレもアイツの様に飛んでいきたいぜ」
「同感だが、諦めろ」
「……」
 ダリルと海が見つめる前では、ルカルカ、ルカアコ、蛇々、リュナ、柚、三月、ミシェル、ノーン、エリシア、なななと言った女子メンツが、それぞれパジャマ姿で円形になり、きゃぴきゃぴとお菓子を片手にパジャマトークの真っ最中であった。
 尚、刹姫や暦は、パルテノン神殿で解凍作業の真っ最中であり、何かの危機を察知した佑一やアールといった他の男性陣はそそくさと理由を付けて自分の部屋に退散していた。
「えー!? ルカルカさんて、偽名だったんですか!?」
 柚が驚くと、ルカルカが笑う。
「そ、本名は流香、苗字は内緒♪ 実家は日本なの」
「意外です。むぅ……」
 よく夜更かしをしている佑一のお陰で、こんな時間でも目ぱっちりのミシェルが更に目を大きくする。
「なななの本名も教えてあげようか?」
「なななちゃんも偽名なの!?」
「そうよ、ノーンちゃん。なななは刑事だからね! ちゃんとした宇宙名を持ってるのよ!」
 えっへんとなななが胸を張る。
「金元ななな? それは地球の、いえ、わたくし達に認識可能な言語なのでしょうね?」
 エリシアが空いたコップにジュースを注ぎながら言う。
「フフフ、勿論よ! でも、全て言い切るのに10分かかるのが難点ね」
「……ななな? あんた、両親に嫌われてたんじゃない?」
 蛇々がポテチを食べながら呟く。
「蛇々おねえちゃん。あたし、名前って大切だと思うよ?」
「私はそうは思わないもん」
 リュナは蛇々の相変わらずの人付き合いの不器用さに苦笑しつつ、
「でも、例えば、蛇々おねえちゃんとアールおにいちゃんが結婚したとしたら、蛇々・エンディミオンて名前になるんだよね?」
「ブッ……ゴホンゴホンッ! リュナ! 何言い出すのよ!!」
「えー、蛇々ちゃんとアールさんてそんな関係だったんですか!」
 目を輝かせた柚が食いつく。
「ち、ちが……!!」
「でも、蛇々おねえちゃん? 最近アールおにいちゃんが優しくなってきたってこの前言って……」
「「「きゃぁぁぁぁーーッ!!」」」
 女性陣の歓声が響き、乗り遅れた三月とミシェルが周囲を見渡す。蛇々は既にまな板の上の鯉である事を自覚したのか、頬を赤く染めて少し怒ったような顔でポテチを食べ続けている。
「いいなぁ! いいなぁ!」
 柚が近くにあった枕を抱きしめて、悩ましげに溜息をつく。
「柚がもし、名前が変わるとしたら、こうえ……ボフッ!?」
 柚が三月に全力で枕を投げる。
「今……オレの事呼んだか?」
 あまりに暇だったのか、ダリルに教わりつつチェスを指す海が顔をあげる。
「ううん! 海くん! なぁーにも、言ってないですよ?」
「ムフォ、ウヒュフ……!?」
 グリグリと三月を枕で抑えつけながら、柚が答える。
「そうか……」
「海。お前の番だぞ?」
「ああ……」
 海が再びチェス盤に視線を落とす。
「ってぇ!! そんな事より石像よ!! その対策のために集まったんでしょう!?」
 蛇々が言う。
「わかってる。だけどさ、蛇々? 今日色々やってみたけど、結局全部失敗したでしょ? 今は刹姫と暦の氷術と佑一のワイヤーで動かなくしてるけど……そんなに持たないよ?」
 アコが冷静に突っ込む。
「うぅ……で、でも私とエリシアのサイコメトリで、ちょっとは情報がわかったのよ? 後はルクセンと小次郎の捜査に期待するしかないじゃない」
「ボク達は、犯人を引っ張ってきて術を解かせるまでは何も出来ないのかなぁ……」
 ミシェルが呟くと、一同はシンッと静かになる。
「大丈夫よ!!」
 そこで突然なななが立ち上がる。
「なななが今日受けた電波によると、明日には全てバッチリ片付くわ! 一人応援も来るもの!」
「一番信用出来ない人の太鼓判て、どう受け取ればいいわけ?」
 ルカルカがジュースに口をつけ、なななをジト目で見る。
「ふふふ! 更に! なななの電波には明日生徒の一人が石化するって未来も伝わっているのよ!」
「……」
「あんまり聞きたくない言葉を聞いちゃった気がする……」
 リュナがチョコを食べながら呟く。
「さて、そんな訳でプールで今日は泳ぐわよ!」
「は?」
「あ、ノーンも着てきたよ!」
 なななとノーンが突然パジャマのボタンを外し、下から水着を露わにする。
「いつの間に……」
「あ、ルカ。それアコが言ったの。プールあるから水着着てきたら泳げるよって」
「……」
「じゃ、いっくよー!」
「待ってー。なななちゃん! わたしも行くーー!」
 現在の部屋とガラスを隔てた所にあるミニプールへ飛び込んでいくなななとノーンであった。

× × ×


「何だ? 大きな水しぶきだな……」
 単独で夜間飛行をしていたカルキノスが、スッと高度を落とす。
「この辺りは確か、地中海。鯨や鮫といった大型の魚等いないハズだが……」
 尚、夜間飛行を楽しむカルキノスは度々目撃されてしまい、『謎の竜現る!?』と新聞記事やネットの動画サイトで話題になったらしいが、本人(竜?)は気楽に構えていた。
 海面スレスレを飛ぶカルキノスが周囲を見渡す。
「気のせいか……漁船でも転覆したのかと思った……む!?」
ーーーバッシャァァァン!!
 カルキノスをあざ笑うように後方で水しぶきが起こる。
「何だ……?」
「ワーハッハッハ!! 貴様、俺の華麗なドルフィンキックの威力に驚いているようだな!」
 声が聞こえた方へ急加速するカルキノスは、海面にプカリと浮かぶ、その正体を目撃し、驚愕するのだった。
「な、何故……おまえが!? こんな地中海にいるのだ……イタリアに向かったハズでは?」
「確かに俺はイタリアに行った! だが、薔薇学の理事長にお気に入りの服を全て買い占められてな! 仕方なくギリシャへ向かっているのだ!!」
「お、泳いでか……」
「勿論だ。入国検査等という下らぬ世間の掟に、支配される俺ではない!!」
 カルキノスを驚愕させた人物はそう言うと、「あとは潜水で一気に行く! さらばだ!!」と言い、プリンとしたお尻をカルキノスに向けて潜水していくのであった。
 こうして、ギリシャの夜は更けていくのだった。