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横山ミツエの演義乙(ゼット) 第1回/全4回

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横山ミツエの演義乙(ゼット) 第1回/全4回

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遅すぎた到着と金剛内収容所


 ミツエ達がイリヤ分校へ到着した時は、もうすべてが終わった後だった。
 まだ生々しく戦闘のにおいが立ち込める分校内を険しい表情で歩くミツエ。
 そこにマゼンタ分校長が出てきて、起こったことを全部話して聞かせた。
「そう……あの二人が」
 ミツエの脳裏に、いつも真正面から意見をぶつけてくれた男と預かったままのピエロ帽の持ち主の顔が浮かぶ。
 落ち込んだ様子のミツエの背に、桐生ひながそっと手を置いた。
 ミツエはハッとして顔を上げると、口をへの字にして盛大に鼻を鳴らした。
「何考えてんのか知らないけど、次に会ったら文句言ってやるわ! ……ま、泣いて謝ってきたら許してあげないこともないけどね!」
 その言葉の中に、まだ二人を見限っていない響きを感じたひなは安心したように微笑んだ。
 すると、そこに軽トラックが走ってきて停車した。荷台には何に使うのかよくわからないものが積まれていた。
 運転席から降りてきたのは弁天屋 菊(べんてんや・きく)だった。
 降りてくるなり驚きの声をあげる菊。
「やられちまったのかい!」
 何てこったと天を仰ぐ。
 続いてガガ・ギギ(がが・ぎぎ)親魏倭王 卑弥呼(しんぎわおう・ひみこ)も呻き声をあげた。
「ねぇ、その荷台にあるのは何?」
 軽トラックの荷台を指差すミツエに、菊が苦笑を浮かべながら説明した。
「バイオエタノール精製機の資材だよ。畑が大きくなって収穫量が増えたら機械も増やさないとなんないだろ? ……なんて、本当はここが戦場になったら壊されるかもしれないから、それの修理用なんだ。本当に壊されてるのを見るのはガッカリだけどね」
「……いい方向に進んでたのにね」
「また直すさ」
 二人が話している横では、カガが王大鋸(わん・だーじゅ)に連絡を取っていた。
 事情を話している途中で、大鋸の「何だってェ!?」という叫び声がガガの携帯から漏れ聞こえてくる。
 あまりの大声に、カガは耳から携帯を遠ざけたほどだ。
 それからすぐに静かになったところをみると、シー・イー(しー・いー)が落ち着かせたのかもしれない。
 それからはみんなで手分けして分校にいたと思われる仲間達へ連絡を取っていった。
 少しして、曹操、劉備、孫権はルカルカ・ルーと共にいることがわかった。
 それと、パラ実生徒会に捕まってしまったらしい仲間がいることも。
「みんなの救出のためにも、董卓様の力が必要じゃないかな? あたし、ナラカまで追いかけようかな。火口さんに連絡して……」
『ダメだ!』
 どちらかと言えば董卓が目的のような卑弥呼のセリフに反対したのは、携帯を借りてミツエと話していた曹操だった。卑弥呼の声が聞こえたらしい。
『董卓を追ってはいかん! 火口敦は惜しいが、董卓はダメだ。どうか自重してくれ卑弥呼よ』
 携帯の向こうから必死に引き止める曹操に、卑弥呼は肩を落として頷いた。
 一通りの電話が終わると、
「パラ実生徒会め……許さないから」
 ミツエは新たに闘志を燃やした。
 二度も拠点を奪われたがミツエはまだ諦めていなかった。
 たかが一回二回負けたくらいで捨てるような、安い気持ちで中原制覇などと言ったわけではないのだ。
 パラ実生徒会が壁というなら、ぶち壊すまでだ。
「何なら乙王朝でも四天王の地位を作ったらどうだい? あ、でもここなら五虎将のほうがいいかな。Z級四天王でもいいけどな!」
「菊……いいこと言うじゃない! 本当はね、中原取った功労者に五虎将の地位を与えようと考えてはいたのよ。でも、そうね……いいわね、それ」
 ミツエはフフフフと不気味に笑った。

卍卍卍


 移動生徒会室金剛。
 ここの収容所に入れられた者は以下の通りである。

 姫宮和希
 カーシュ・レイノグロス
 エリザベート・バートリー
 トゥルペ・ロット
 エレーナ・アシュケナージ
 ネヴィル・ブレイロック
 パトリシア・ハーレック
 月島悠
 麻上翼
 張飛
 吉永竜司
 エル・ウィンド
 ギルガメシュ・ウルク
 風祭優斗

 なお、ラルク・クローディスだけは別室に入れられていた。捕虜の部屋とは思えないほど豪華な部屋だ。
 また、風間光太郎と玄奘は、連行中に縄を解いて逃げることができた。しっかり縛っているように見えて緩んでいたからだ。
 最後に、S級四天王候補としてナガン ウェルロッド、国頭武尊、メニエス・レインの名が挙げられた。
 ナガンと武尊においては賞金首リストからの削除もなされたという。

 それを聞き、
「……皇氣に比べたら屁でもねぇな」
 と、呟いたナガンの横で、桐生 円(きりゅう・まどか)はカラカラと笑った。
「連れてきたみんなの安全は保障してくれたんだからいいじゃないの。それにしても、あそこに残った連中もみんなボクの言ったこと信じちゃって、お人好しだよねぇ」
 思い出してもまだおかしいのか、ココとして分校に転がり込んでいた円はしばらくクスクス笑いが止まらなかった。