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お菓子づくり大会その2ただあなたの為に

 調理室の一つの調理台では料理と書いてバトルと読むと言っても過言ではない戦いが繰り広げられていた。
 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)が競い合うように大きなお菓子の家を作っている。
 発端は些細なことだった。
 クロセルがもう一人のパートナーのマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)の為にお菓子の城を作っていた。
 マナが喜べばシャーミアンも喜ぶはずだと思ったのが……甘かった。
 シャーミアンは、マナ至上主義!クロセルの行動が抜け駆け以外の何物にも見えなかったのだ。
 その結果、お菓子の城作り対決になっているのである。
 そんな時、肝心のマナが調理室に戻ってきた。
 めったに来ることのない蒼空学園を探索していたのだが、甘い匂いに誘われて戻ってきたのだ。
 そこで、クロセルとシャーミアンの作品を見て目を輝かせるマナ。
「すごいのだ二人とも早く完成させるのだ。私はお姫様なのだな。だから、二つもお城があるのだな。完成が楽しみなのだ」
 にこにこと二つの城を見比べるマナの笑顔にクロセルとシャーミアンが顔尾を見合わせて自然に笑顔がこぼれる。
 二人の思いは同じマナの為に。だから競い合うより、マナに喜んでもらうのが一番大事。
 それが分かった。
 もう一度、マナを見てみると、ドールハウスの窓になるはずの板チョコをほおばって幸せそうにしていた。

 恋人同士でお菓子作りに参加している者もいた。
 佐々木弥十郎(ささき・やじゅうろう)水神樹(みなかみ・いつき)もそのひと組である。
 二つ付随するなら、小舅よろしく弥十郎のパートナーの真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)が着いてきていることであろうか。
 弥十郎は涼司の案に乗っただけで、樹が来ているとは知らなかったのだ。
 彼らが作るのはマカロン。
 色とりどりのお菓子だがこれでなかなか気を抜けないお菓子でもある。
 樹がメレンゲを仕上げ、弥十郎はそれにグラニュー糖などを混ぜ、マカロンの素になるマカロナージュを作り上げた。
 そして、マカロナージュをオーブンで真奈美が焼き上げ、3人で中にクリームを入れた。
 美味しそうで北マカロンを弥十郎と樹は交換しあった。
「えっ……!?」
 樹は弥十郎から受け取ったマカロンを見て真っ赤になる。
 不思議に思った真奈美が樹の持っているマカロンを見ると、白のクリームで『LOVE』の文字。
「弥十郎って気障だよね」
 そう真奈美に言われて、苦笑いで頬をポリポリと掻く弥十郎だった。

 そんな中、恋人未満?の二人も来ていた。
 清泉北都(いずみ・ほくと)の眉間に深いしわが入る。
「……しょっぱい」
 それを聞いてクナイ・アヤシ(くない・あやし)がクッキーに入れた材料を再度確認する。
 一見普通の材料群だが砂糖がなく代わりに大量の塩が混じっている。
「……クナイ?」
「えっと、これはですね……」
 しどろもどろになるクナイに北都は眉間のしわを隠す気はないようだが。
「日本では、お茶請けに煎餅や漬物といったしょっぱい食べ物を食べるから、これもお茶請けにならないこともない」
 と言って、二つの湯飲みにお茶を注ぐ北都。
「北都……」
「今日だけだからね……」
(「僕の為に作ってくれたんだし」)
 それを見ていたクナイは、キスをしたくてたまらなかったが、北都に人前では禁止されているので耐えるしかなかった。