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リアクション
[五場・花は無くとも]
一方こちら北エリア。
隅の方にぽつりぽつりと二本、三本桜の木は生えているものの、広大な芝生が広がっている所為で桜の存在感はひたすら薄い。遠くに、丘の上に咲く大木の桜が見えるが、なんというか、ここから見ると手のひらサイズ。
「ルル、本当にここで良かったのか?」
そんなちょっと――大分寂しいエリアでシートを広げているのは、ルルーゼ・ルファインド(るるーぜ・るふぁいんど)と、ハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)の二人だ。
「ええ、ここにあるのは、逆境にもめげずに見事に花を咲かせた桜の木……美しいではないですか」
「そうか……ルルが良いなら、それで良いのだが」
「それはそうと、クドはどうしたのでしょう? 随分遅いですわね」
ルルーゼはそう言って辺りを見回した。
ちなみに二人のパートナーであるクド・ストレイフは、スカート覗きの咎で橘柚子に「お掃除」されている。
「そ、そうだな、だが心配することはないだろう。それよりルル、弁当美味いぞ」
ハンニバルはパートナーの行き先に検討はついているのだが、ルルーゼがまた余計な心配をしないように適当にはぐらかす。
そんなハンニバルの心遣いもあって、二人は一日ゆっくりと羽を伸ばして過ごすことが出来た。
「やっぱり、ちょっと寂しいわねぇ」
文栄 瑠奈(ふみえ・るな)が、周囲を見渡してはぁ、と溜息を吐く。
すると、健闘勇刃と冠誼美が申し訳なさそうに頭を下げた。
結局中央エリアの確保に失敗した四人は、北エリアで、一本の桜の木の下を陣取って弁当を広げていた。
「でも、こうしてみんなでおはなみできて、嬉しいですわ」
セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)がそう言って笑うと、三人も顔を見合わせてそうだね、と笑う。
「ま、花が無い訳じゃないしな」
ぽん、と勇刃が桜の幹を叩く。視界に入るのはこの一本と、丘の上の……ここからみると小さな一本だけだけれど、それでも気分は味わえる。
四人はちょっと寂しいながらも、それなりに楽しむことができたようだ。
そろそろ日が傾いてきた。
春になり日が長くなってきたとは言え、それでも夏ほど長いわけではない。ほんのり、落ちてきた太陽がオレンジ色に色づいてきた。
「おまたせー……って、あれ?」
所用で遅れて来た榊 朝斗(さかき・あさと)が仲間の元へ到着した。
が、ギルドのメンバーが揃っているはずのそこにいたのは、自分のパートナーが二人だけ。
「ふたりだけ?」
場所が北エリアになってしまったのはまあ仕方がないとして、何故他のメンバーが居ないのかと首を傾げる朝斗に、ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)が、
「結局、皆さん来なかったみたいなんです」
としょんぼりして告げる。
「場所の指定がなかったので、最も確実性の高いエリアを確保しました」
「ああ、そうか……場所はみんなに任せるつもりだったからな」
場所取り係だったアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)から経緯を聞いて、朝斗はちょっとがっかりした表情を浮かべる。
「とりあえず、お疲れ様でした。お座りになってください」
よかったらどうぞ、とルシェンは正座して膝をぽんぽん叩く。
「あはは……じゃあ、お言葉に甘えて」
そう言って朝斗はルシェンの膝にごろんと頭を預けた。
いつの間にかすっかり太陽は姿を消し、東の空にはうっすらと月が姿を現している。
「いつまでも、変わらないといいですね」
ぼんやりと三人で桜と月とを眺めていると、ぽつり、とアイビスが呟いた。
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