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海上大決戦!

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海上大決戦!

リアクション

 睡蓮たちが円たちを食い止めている間、エリオットらは急降下爆撃を敢行していた。
 エリオットは大砲の射程外から箒で飛び立ち、できるだけ高々度を飛ぶ。後ろにはメリエルを乗せている。いよいよ海賊船の上空にやってくると、エリオットは後ろを振り向いて言った。
「メリエル、しっかりとつかまっているんだぞ」
「うん、わかった」
 メリエルはエリオットの腰に腕を回し、がっちりと固定する。
「ではいくぞ」
 エリオットが降下を始める。二人は徐々に速度を増し、乗っている人間がはっきりと見えるくらいまで船に近づいたころには、相当なスピードに達していた。
「よし、このタイミングだ」
 エリオットは火術を大きめの球体状に構成する。そして海賊、大砲、海賊に味方する者たちの位置を瞬時に見極めると、自分たちの味方を巻き込まない上で被害が最大になるように火球を撃ち込む。
「ファイエル!」
 爆撃後はすぐさま急上昇。敵の対空戦力の餌食にならないようにする。
「よし、まずは成功だ」
「さすがエリオットくん、やるね! この調子でどんどんいこう」
 メリエルが気分爽快といった様子で盛り上げる。
 この爆撃に驚いたのは如月 玲奈(きさらぎ・れいな)とパートナーのジャック・フォース(じゃっく・ふぉーす)である。二人は光学迷彩を使用していたのでエリオットの目には映らなかったが、爆撃された場所の近くで、甲板に降りてきた生徒を襲撃しようと待機していたのだ。
「びっくりしたあ。まさかあんな無茶なことをしてくる人がいるなんて」
 尻餅をついていた玲奈が、立ち上がって言う。
「全くだ。危うく黒こげになるところだったぜ」
「あれじゃあ光学迷彩を使っても意味ないね。この布邪魔だし、脱いじゃおうよ、ジャック」
「そうだな」
 そうこうしているうちに、再びエリオットたちが急降下してくる。
「わわ、また来たよ」
「気をつけろ!」
 身構える二人。だが今回爆撃は行われず、代わりにメリエルが船上へと降ろされた。
「頼んだぞ、メリエル」
「大船に乗った気でいてよ。って乗ってるのはあたしか、あはは」
 再び急上昇するエリオットを、メリエルは笑って見送る。
「さて、と」
 メリエルが振り返る。玲奈とジャックは思わず身構えた。
「その反応……海賊の味方をする生徒がいるって聞いてたけど、君たちがそうだね。許さないよ」
 メニエスはそう言うったかと思うと、ツインスラッシュにソニックブレード、爆炎波に轟雷閃と、もてるスキルを次々繰り出す。
「ちょ、ちょっとこれ。私たちを狙ってるというより、ただ暴れてるだけじゃない」
「滅茶苦茶なやつだな。とりあえず回避に専念するぞ」
 メリエルは特定の相手と戦うというより、ひたすら大暴れして敵の攪乱や海賊船本体への攻撃をするよう指示されていた。見境なく攻撃を加えるメリエルに、玲奈とジャックはただ逃げ惑うしかない。
 だが、二人にはさらなる災難が襲いかかろうとしていた。エリオットたちに続いて、クローディアとアロンソも急降下爆撃を開始したのである。
「私たちも行くわよ」
「心得た」
 クローディアの合図に、アロンソはしっかりと彼女にしがみつく。あくまで振り落とされないようにするためだ。セクハラではない。断じて。
「ターゲット、ロックオン!」
 クローディアはエリオットと同じように急降下すると、光条兵器のスーパーバズーカで狙いを定める。
「粉砕するほどファイヤー!」
 普段はほのぼのとした性格の彼女だが、スーパーバズーカを使うときはノリノリになる。
 背後で響く爆発音に、玲奈とジャックは体をビクつかせた。
「な、何?」
「おいおい、他にもいるのかよ。天気予報で人が降るなんて言ってたか?」
「冗談言ってる場合じゃないよ。このパターンだと……」
 そこに、再度急降下してきたクローディアがアロンソを船に降ろす。
「いってらっしゃい。思いっきり暴れてきてね」
「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ! 騎士道に則り、いざ参る!」(アロンソにはドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャという別名がある。彼自身はこちらの名前で呼んでもらいたいらしい)
「ほら、やっぱりまた変なのが出てきたあ」
 玲奈が頭を抱える。
 アロンソはメリエルの攻撃で混乱している海賊たちを蹴散らすと、玲奈たちの前までやってくる。
「上空から見ていたぞ。海賊の味方をしている者たちだな。騎士道の風上にもおけぬ。容赦はせんぞ」
 アロンソが槍を構える。が、
「痛っ!」
 メリエルの攻撃がアロンソに直撃する。
「メ、メリエル殿!? むう、我が輩に気がついておらぬか」
(玲奈、今だ!)
 この隙を見て玲奈とジャックが逃げ出す。
「む、待てい!」
 アロンソは二人の後を追いかけた。
「そろそろ潮時だな。クローディア、撤収するぞ」
 三度目の爆撃を行った後、海賊船本体に魔法で攻撃を加えていたエリオットは、同じく光条兵器で大砲を攻撃していたクローディアに声をかける。
「了解。うまくいったわね」
 二人はメリエルとアロンソを回収すべく、最後の急降下を開始する。
「げ、またさっきのお兄さんだよジャック! うわ、逆からあのお姉さんも来てる!」
「伏せろ!」
 玲奈たちが甲板にダイブした直後、クローディアが光条兵器を、エリオットが火術を船に撃ち込む。
「お疲れ様、アロンソ。目的は果たしたわ。撤退よ」
 クローディアの声に、玲奈たちを後一歩というところまで追い詰めていたアロンソが槍を下ろす。
「運が良かったな。我が輩はもう行く。女性を待たせるわけにはいかぬからな」
 アロンソはそう言って玲奈たちのもとを猿と、クローディアの箒に乗った。
「よくやった、メリエル。もう十分だ。引き上げるぞ」
「えー、もう? まだ暴れたりないなあ……」
 メリエルのほうもそう言いながらエリオットの箒に乗り、しっかりと彼にしがみついた。
「それじゃあばいばい。これ、お土産ね。ひゃっほーう」
 クローディアはそう言って最後の一発を船に撃ち込むと、飛び去っていく。
 エリオットは、
「襲撃とはこうやるのだ! 覚えておけ!」
 と高らかに言い放ち、全速力で船から遠ざかっていった。
「な、なんだったんだろう、あれ……」
 玲奈は甲板にへたり込み、半ば放心状態で空を見つめる。
「嵐のようなやつらだったな」
 ジャックは、滅茶苦茶にされた船上を見回して呟いた。
「やっぱり……悪いことはいけないね」
「……だな」