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リアクション
「ロイヤルストレートフラッシュ。またわしの勝ちだな」
「おい、イカサマしたろ!」
「…………騒々しい」
部屋では三人の男がポーカーをしていた。ひげを生やした帽子の男に、バンダナをした大男。そして眼帯をつけた細身の男。三人とも他の海賊たちとは明らかに雰囲気が違う。
「一時休戦のようだな……。ようこそ我がエダリーペ号へ。わしが船長のピガロだ」
ひげの男が、立ち上がってセトたちに向き直る。
「ちっ、いいところだったのによお! 使えねえ子分どもだなあ!」
大男はすごい剣幕で机をひっくり返した。
「こちらはライゴフ。そして」
ピガロは大男の名前を紹介すると、細身の男に目を向ける。
「…………テッツォだ」
細身の男は小さな声で言った。
「さて、と。ご用件は何かな? わしらの仲間になりたい、という顔ではなさそうだな」
ピガロはセトたちに歩み寄り、わざとらしく尋ねる。
「決まっておろう。おぬしらを倒しに来たのじゃ」
エレミアが答えた。
「そうか。分かりやすくていい。わしは回りくどいことが嫌いでな。ではさっさと始めようか」
ピガロが刀剣(形こそカトラスのそれだが、通常より二回りほども大きい)を抜く。ライゴフも立ち上がって棍棒を手にし、テッツォは壁に立てかけたマスケット銃を取りに行った。
セトたちも一斉に身構える。まずは三人を分断しなければならない。悠里と四季、イエスはピガロの脇をすり抜ける。この際悠里と四季は禁猟区を発動した。
悠里たちがピガロの近くまできたとき、禁猟区に反応がある。気がつけば、テッツォが悠里に銃口を向けていた。テッツォの指が引き金にかかる。
その刹那――
「『魔闘拳術』ツクヨミ推参!」
十六夜 泡(いざよい・うたかた)――今はヒーローモードの「ツクヨミ」だが――が窓を蹴破って部屋に入ってきた。ツクヨミは氷術で海面に氷の柱を作り、その柱を足場にバーストダッシュで飛び込んできたのだ。
「なんですの? あれは」
全身炎に包まれたツクヨミに、四季は珍獣でも見たかのような顔をする。
そう、これこそツクヨミの戦闘スタイル『魔闘拳術』。魔法をまとったドラゴンアーツだ。
テッツォは何事もなかったかのように銃を構え直すと、標的をツクヨミに変えて撃とうとする。しかし、ピガロがこれを妨げた。
「待て、テッツォ。何かおかしな臭いがする。先ほどトイレの方から爆発音が聞こえたが、何か関係あるか……? とにかく、可燃性のガスだったらまずい。ライゴフ!」
「おうよっ!」
ライゴフは棍棒で天井に穴を開ける。
「甲板まで上がってこい。俺たちは逃げたりせん。いくぞライゴフ、テッツォ」
ピガロたちは天井の穴から甲板に出る。同じところから上に出ようとしたら、この上ない攻撃の的だ。セトたちは急いで来た道を引き返す。
「ボロ船のヘボ海賊のヘッポコ船長、出て来〜い!」
「この弱虫ー! ボクにこっぱミジンコにされるのがそんなにこわいかー!」
カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、箒の上から船室に向かってあらん限りの罵詈雑言を並べ立てる。三人組を挑発しておびきだそうという算段だ。
「そんな見え見えの挑発に乗ってくるわけがなかろう」
パートナーのジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が突っ込みを入れる。
このとき海賊船エダリーペ号はかなりのダメージを受けており、最早沈没するのも時間の問題に思われた。生徒たちも海賊たちもすでに海賊船を後にしており。甲板には逃げ遅れた数人の海賊がいるのみである。
もしかしたら、三人組ももうどこからか逃げてしまっているのではないか。そんな不安がジュレールの頭をよぎる。
しかし次の瞬間、船室の天井に穴が開き、三人組が甲板に出てくる。
「ほら、出てきた!」
「そんな馬鹿な……」
続いてセトたちが甲板に現れ、ベアとマナも合流する。
「お姉ちゃんすご〜い! いっぱいでてきたよー」
カレンのもう一人のパートナー、八坂 トメ(やさか・とめ)が大げさに言った。
「感心している場合ではないであろう」
「そうだね。それじゃあ、作戦どおり行くよ!」
カレンたちも甲板に向かう。
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