リアクション
第5章 大団円
ルトラ族の村ではパーティーが始まろうとしている。そう、るるの企画した竜宮城パーティーだ。村の中心では、るるが乙姫役を頼んだルトラ族の少女がスピーチを行っていた。
「このたびは本当にありがとうございました。これでようやく安心して生活ができます。みなさんのご活躍は、これからもずっとこの村で語り継がれていくでしょう。またいつでも遊びにきてください。ルトラ族は心より歓迎します」
大きな拍手が巻き起こる。そしてパーティーが始まった。
豪華な食事こそないものの、ルトラ族の温かいもてなしと任務成功の達成感で、生徒たちは最高の気分を味わう。タイやヒラメの舞い踊りならぬカメやカメの舞い踊りも好評だ。
「なーなな、なーななーな、なーななーななー」
ミケも見よう見まねで踊りを踊る。
「あはは、ミケ上手上手ー」
るるがミケをなでてやる。甘えん坊のミケはごろごろと喉を鳴らして気持ちよさそうに目を細めた。
「なー、なっななななな」
「え、なあに?」
ミケがるるの服を引っ張る。
「一緒に踊ろうって?」
「なー」
「そうね、私たちも踊ろっか」
「じゃじゃーん」
ルトラ族に囲まれた中、ナナが海賊から取り返した宝箱を披露する。
「おお、たしかに村の宝だ!」
「ありがたやありがたや」
きちんと彼らの財宝を取り戻せたことを確認して、ズィーベンは安心する。
「よかった。えらい簡単だったから、騙されてるのかと思ったよ」
「中を見せてもらってもいいですか?」
ナナが興味津々で言う。
「もちろんですぞ」
「ジェラグメートってのがどんなもんか、俺も拝ませてもらいたいな」
司が宝箱の近くに寄ってくる。
「これがジェラグメートさ」
ルトラ族が宝箱を開ける。中には色とりどりに光り輝くカケラがぎっしりと詰まっていた。
「こいつは……。宝石か何かか?」
「はは、違う違う。これは、この村代々の長が残していった甲羅の欠片よ。長によって輝きも色も違うんだ」
「ルトラ族の甲羅がこんなものになるのか」
「長い年月を経てね」
「ありがとう。いいものを見せてもらった。ところでノルデンだったか。あんた、あれはどうするつもりだ?」
司がリュックに残った財宝を指さす。
「ルトラ族の皆さんと山分けしようとおもっています。どうでしょうか?」
「いいんじゃないか。俺は賛成だ」
それを聞いてルトラ族たちはびっくりする。
「助けていただいた上に財宝受け取るなんてできません」
「せめてものお礼に、みなさんで持ち帰ってください」
「遠慮しないでもらっちゃえばいいのに。ボクだったら間違いなくそうするね」
ズィーベンが言う。結局この件については後でルトラ族たちと生徒たちで話し合い、山分けすることに落ち着いた。
「イマオムさん、ボク、村とその周辺の片付けとか再建とかを手伝うよ。体育は苦手だけど、建築の知識はあるんだ。建て直す建物の設計図を作ったり、頭脳労働でなら役に立てると思うよ」
宴もたけなわ、恵がイマオムに切り出す。
「いや、さすがにそこまでしていただくわけには……」
「ううん、ボクがそうしたいの。駄目かな?」
「イマオムさん、ケイは一度言い出したら聞きませんよ。ここはひとつやりたいようにやらせてあげてはもらえませんか? もちろん私も手伝いますから」
エーファもイマオムに頼みこむ。
「分かりました。お願いしますじゃ」
「決まりだね! 幸い肉体労働にはうってつけの人材がいるし。きっとお魚もいっぱいとってきてくれますよ」
恵が村のはずれに目をやる。そこには高速されたピガロたちの姿があった。
こうして、生徒たちの手によって海賊は無事退治された。その後の経過をいくつかここに報告する。
ピガロたちはイルミンスール魔法学校の監視の下、ルトラ族の村で働いている。毎日陸酔いとの戦いだそうだ。
エダリーペ号はあの後すぐ沈没してしまった。パラミタ内海には財宝が眠っていることになる。
海賊の味方をした生徒たちの処分だが、訓練に貢献したというエリザベートの独断と偏見によって、軽い謹慎で済んだ。
そして最後に、山分けすることに決めた財宝。これはルトラ族の取り分は別として、エリザベートに没収されてしまった。彼女に言わせれば「子供にはまだ早いですぅ。私が責任をもって教育費にあてますぅ」とのことだった。結局、エリザベートの方が海賊よりもたちが悪いのかもしれない。
今日は、飛弥新(ひび・あらた)です。まず初めに、今回リアクションの公開が遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。その他にも至らないところが数多くあると思いますが、次回以降に生かせればと思います。
さて、今回はバトルものに挑戦してみましたが、やはりこのジャンルは書いていて面白くもあり難しくもありますね。次はこれまでに書いていないようなものを書いてみたいと思います。と言いましても、まだ今回を含めて2本しか書いていませんが。
それではみなさまありがとうございました。またお会いできますよう。