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魔に魅入られた戦乙女

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第三章 戦闘開始

 ドン!!

 森に派手な音が響き渡る。神殿内部にまで響いたその音は、相沢 洋(あいざわ・ひろし)乃木坂 みと(のぎさか・みと)の砲撃によるものだった。衝撃で、周囲の木々が不自然な形になぎ倒されている。
「我々の目的は敵戦力を引きつけ、殲滅することにある。みと、周囲を警戒。離れるなよ」
「了解ですわ」
 音を聞きつけ、殺気立った蛮賊が神殿や茂みから次々と飛び出してきた。まばらに集まってきた敵は、まだ統率が取れていない。洋の口角がにやりと持ち上がった。
「来たか。それではせいぜい派手に暴れてやろうではないか。みと、行くぞ!」
「はい!」
 蛮賊が一線を越えて二人へ飛び掛る瞬間――
「今だ!砲撃許可。撃てぇぇえ!!!」
 二度目の爆音が鳴り響き、戦いの火蓋が切って落とされた。

「うっへぇ、派手だなぁ」
 背後から飛び出してきた影をかわして素早く打撃を繰り出すと、ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)は不敵に笑った。
「でもま、その方が面白いぇや」
一手目が効いたのか、ジリジリと用心深く間合いを詰めてくる蛮賊たち。手には森の戦闘でも邪魔にならない、きこりの斧や鉈を手にしている。その人数は、時間をおけばおくほど増えてきそうだ。
「やーい、バーカ!ハゲ!お前の女神デーベソー」
 突然悪態をついてから、ウィルネストはくるりと蛮賊に背を向けてダッシュした。相手のフィールドで、相手のペースで戦ってもいい結果になるためしがない。
 腹を立てて追ってくる相手を、一人ずつ殴る。蹴る。蛮賊は面白いように釣られてきた。
 狙いがばれたのか、蛮賊は用心して距離をとるようになった。そこには、その身を蝕む妄執をお見舞いする。倒れる蛮賊に、ウィルネストは軽く舌を出してみせた。
「悪いな。メイン職はウィザードなもんで」

 オルカ・ブラドニク(おるか・ぶらどにく)は索敵を行っているはずのパートナーを心配していた。滅多なことがない限りは大丈夫だと思うのだが、少し前から何となく嫌な感じがする。
「クロト、大丈夫かなぁ〜……」
 ぶんぶん、と頭をふってオルカは意識を戦闘に集中させた。クロトがそばにいなくても、自分に出来ることをやるのみだ。
 すぅ、と息を吸い込んで小さく火を吐き出すと、用意していた枯れ枝で煙を炊く。無論、火事にならないよう事前に燃え移りそうなものは遠ざけている。
「いたぞ!」
「うわぁっ」
 むんずと、敵に背後から首根っこをつかまれて、オルカは身体をじたばたさせた。気分をよくしたのか、蛮賊は舌なめずりをしてすごんでみせた。
「狼煙なんてあげやがって、仲間にでも知らせたつもりか?」
「……そうだけど?」
 耳元で声が聞こえた、と思った次の瞬間にはクライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)の一閃が蛮賊を跳ね飛ばしていた。ヒロイックアサルトで増幅された一撃は重く、蛮賊の意識が落ちる。
「クラりん、ありがとう〜」
「こちらこそ。オルカさんが気をひいてくれてるおかげで、隙を突きやすかったよ」
ほのぼのと笑顔を交わせるのは、ほんの一瞬だけ。
 次々と現れる蛮賊の集団を前にクライスはキッと表情を引き締め、不安げなオルカにウインクしてみせた。
「次もこの調子でやってみよう!」
 とそこに、
「ミリアさぁぁぁん!このロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が助けに来ましたー!!」
 どん!と効果音が付きそうな勢いで、セリナが飛び込んできた。

 どごーーーん!
 気持ちのいい轟音と共に吹っ飛ぶどっかの壁。光を背負いながら、颯爽と現れるのはロザリンド・セリナその人である。
「……看板娘と名高いミリアさんをさらうなんて、なんて不埒な連中なのかしら」
「あっ、あなたは……?」
「ミリアさん、怪我はないですか(キリッ)」
「はっ、はい!」
頬を赤く染めながら、ミリアがはにかんで笑う。
「貴女が来てくれましたもの……」
 ばーーーん!
 飛び込んでくる蛮賊っぽいそのへんの男。ロザリンドはミリアの手を引くと、並居る敵をなぎ倒し戦場を駆け抜ける。
 やがて二人は花の咲き乱れるどっかの園にたどり着く。そして……
「あ、あの、その……助けてくれてありがとうございます。お礼と言っては何ですが、よろしければ……私を……」
「いけませんわミリアさん、私そんなつもりで助けたんではありませんのよ」
 フワッと、辺りの花が風に舞う。一斉に。それはもう、ロマンチックに。
「そうです……よね。お仕事だから、助けてくださったんですよね。ごめんなさい、私ったらロザリンドさんがあんまり優しいから……勘違いして」
「馬鹿!」
「あっ」
ひしっ
「……貴女のために来たに決まっているでしょう?そんな可愛いこと言われたら……我慢できるわけないじゃないっ」
「ロザリンドさん……」
以下、百合。

「――なーんちゃって!きゃーーー!!!」
 言いながら、ロザリンドは巨大な光条兵器を取り出した。突然横薙ぎのフルスウィングを食らい、吹っ飛ぶ蛮賊たち。
「愛の力は偉大なのですよー!待っててくださいミリアさん!」



 立ち上った煙を目指して、メニエス・レイン(めにえす・れいん)は箒で進んでいた。クスクスと肩を震わせる。……何てわかりやすい目印かしら。
 ふわりとコートの裾を翻し、メニエスは神殿を正面から訪問した。
「生贄の皆さんはお元気かしらぁ? 女神様にお会いしてみたいんだけどぉ」
 途端、生徒たちの攻撃に殺気立った見張り役に囲まれる。メニエスは大して残念ではなさそうな口ぶりでため息をついた。
「戦いにきたんじゃないんだけど、仕方ないわねぇ……」
 その時、
「待ってください。その方は敵ではありませんわ」
 神殿内から届いた声で蛮賊の動きが静止する。呪文の詠唱を中断してメニエスが顔を上げると、心底嬉しそうに微笑む優梨子がいた。
「ですよね?メニエスさん」
 ……これは予想外。
「入信するつもりはないんだけれどぉ……いいかしら?」