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【十二の星の華】狂楽の末に在る景色(第3回/全3回)

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【十二の星の華】狂楽の末に在る景色(第3回/全3回)

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第二章 狂奏

「くそっ、しつこい奴らだぜ」
 小型飛空艇を操縦する高月 芳樹(たかつき・よしき)は腕に込めた力も、目の動きも、足の踏ん張りのどれだって緩める訳にはいかなかった。
 借り物という事で、ただえさえ勝手の違う操縦に加え、飛空艇には芳樹を含めて3人が乗艇している。比較的体重の軽い3人ではあるが、どうやってもバランスを取るのが難しかった。更に加わり−−−
「芳樹! 右っ!」」
「くっ」
 同乗する伯道上人著 『金烏玉兎集』(はくどうしょうにんちょ・きんうぎょくとしゅう)の声にわざわざ顔を向ける事もしないまま、芳樹は小型飛空艇を上昇させた。
 青龍鱗を追っていた芳樹たちは、それを妨げようとする神代 明日香(かみしろ・あすか)たちよって、追われる立場になってしまっていた。
 自らの飛空艇も上昇させながら、神代 夕菜(かみしろ・ゆうな)は飛空艇の右翼めがけて狙撃した。
 『金烏玉兎集』は右翼の前に氷術を放ち、氷の盾でそれを防いだ。と、視界の端から、明日香の乗る空飛ぶ箒が現れ向かい来るのが見えた。
「アメリアっ」
「任せてっ」
 アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)が氷術をぶつけようと−−−
 箒は一気に下降した。
 首を伸ばして振り向き見たアメリアは、いつの間にかに飛空艇のすぐ後方に付けていた明日香に瞳を見開かされた。
「いくですぅ」
 飛空艇に向けて、明日香はファイアストームを放った。
 禁じられた言葉で魔力を上げた分、より激しく燃え上がり襲いかかってきた。
「きゃあっ」
「ぐっっうっっっ」
 アメリアと共に『金烏玉兎集』も氷術を放っち、飛空艇をどうにか守った。
「2人とも、大丈夫か?」
「だ、大丈夫、だよ」
 さすがに消耗が激しい、肩で息をするアメリアを見て、芳樹は顔を歪めたが、下を向く暇は無い。
「2人とも、耐えてくれ、何とかここで食い止めないと…」
 芳樹に小型飛空艇を貸した
 グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)たちが青龍鱗を追っている。それを妨げようとする明日香たちに彼らを追わせる訳にはいかないのだが。
 明日香が次弾のファイアストームを構えているのが見えた。飛空艇の頭先には夕菜も星輝銃を構えている。
「銃を避ければ、そこに炎砲が来るってか… マズイな」
「まつですぅ〜〜」
 芳樹が額に流汗を感じたとき、その汗が止まってしまうような幼い声が響き届いた。
「どうしてあばれているですか!」
 声の主、幼子の”リアちゃん”ことリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)は飛空艇から一杯に体を乗り出して右手を掲げていた。
 芳樹が事情を説明している最中に、2機に向けてファイアストームが放たれた。
「危ねぇっ」
「うう〜 とにかくとめるよっ」
「いや、まずは話を最後まで聞いてからに−−−
 どうしてか今日はカレンデュラ・シュタイン(かれんでゅら・しゅたいん)の話を最後まで聞いてはくれないようで。
 ”リアちゃん”は光条兵器である巨大な日本刀をしっかり抱えてながら大きく振った。
 アルティマ・トゥーレにより冷気を纏った斬撃が明日香に飛び向かったが、これにも明日香はファイアストームを放ち、これを飲み込んだ。
「うう〜 うう〜 どんどんいくですよ〜」
「連続でファイアストームって、どんだけ魔力あるんだよ」
 芳樹も同じ感嘆を抱いたが、それならばとも思っていた。”リアちゃん”カレンデュラに飛空艇を寄せさせると、思い切って飛び出して爆炎波を放った。
 明日香は疾風突きで初動の遅れを補ったが、威力は殺しきれずに小型飛空艇を大きく揺らされた。
 魔力が尽きるなら良し、倒せなくとも足止めという目的は十分に達せそうである。
 グレンたちが追いつけば良い。芳樹は手応えと共に、先に向かったグレンたちの身を案じた。


 隊を成して空を駆け逃げる「青龍鱗強奪組」の下側を守るミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)は口端を上げながらに見下ろした。
「全く、しつこいですね」
 1機の小型飛空艇が駆け昇ってきた。
 匿名 某(とくな・なにがし)が操縦する小型飛空艇、それに同乗するウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が二刀の構えを見せている。
 ミストラルは、間を取らずに火術を放ったのだが、それを避けながら、いや、それをブラインドにも用いたのだろう、飛空艇から光りの矢が放たれた。正確にはブライトグラディウスであったのだが、瞳の前を過ぎたそれは光輝く矢のように見えた。
 って、アレ? 
「ちょっと、何か飛んできたけど!!」
 ミストラルの上空で空飛ぶ箒を走らせているメニエス・レイン(めにえす・れいん)が声を投げていた。
「すみません、メニエス様。あまりにしつこいので、少し飽きてきました」
「あら、その感じオモシロイわ。でもしっかり守りなさいよ、大事なもの、運んでるんだから」
 メニエスの背側後方には日比谷 皐月(ひびや・さつき)が同乗している。皐月が抱えるは五獣の女王器が一つ、青龍鱗である。
「ねぇねぇ〜、次、来るよぉ」
 隊の後方を守っていたロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)はウォーハンマーの柄を撫でながら、ミストラルに向けて唇を突き出した。
「次もどうせミストラルの所だろうけど」
「あらあら、退屈なら代わってくれても良いのよ」
「えっ、本当っ? 代わる代わる、あたしもあそびたい!」
「ミストラル、ロザ、いい加減にしなさいよ。今は、逃走することが第一なのよ」
「でもでもっ、あいつらも潰した方が、やっぱり良いよねっ」
「それに、ちょっと本腰入れて退治しないとダメみたいですよ」
 進行方向とは逆、振り返れば、のそれとは別の小型飛空艇が数機みえた。
 その内の一機、湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)が操縦する飛空艇には、乗っているのは凶司1人なのだが、パートナーである3人のヴァルキリーが飛空艇の外で翼を広げた状態で飛空艇に掴まり飛んでいた。
「やっと追いつきましたね」
「キョウジ… これから、どうするの…?」
 エクス・ネフィリム(えくす・ねふぃりむ)は控えめに。
「思ったよりたくさん居るみたいだけど」 
「そうだな、とにかく誰が敵かも分からないから、向かってきた相手を確実に倒していこう」
「えっ、そんなので良いの?」
「ほらっ、来たよっ!!」
 向かい来たのはロザリアスだった。その顔は大きく歪み笑んでいた。
「きゃはははは−! ほらほらイクよ−!!」
 加速した勢いのままに、ロザリアスは小型飛空艇に向けてウォーハンマーを振り下ろした。
「きゃっ」
「ぐっ」
 グレートソードと薙刀。エクスディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)がこれを受けたが、威力を殺しきることは出来ず、2人は飛空艇に叩きつけられた。
「おわっ」
「キョウジ!」
 2人が叩きつけられた衝撃で飛空艇から振り落とされ、飛び出してしまった凶司セラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)が宙で抱きかかえたが、そこにロザリアスの笑顔が追いてきた。
「危ないっ」
 ハンマーに向けて、今度はエクスディミーアは加速を付けて斬りかかったが、弾くことには成功しても、その体は吹き飛ばされ、宙に居た凶司セラフの2人に絡まりながら落下していった。
 これに追撃をしようと動いたミストラルに、光術が放たれた。
 放ったのは漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)であり、彼女のパートナーである樹月 刀真(きづき・とうま)は小型飛空艇を旋回させると、メニエスの前で停止させた。