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リアクション
「初めてお目にかかりますね… 俺は蒼空学園の樹月 刀真(きづき・とうま)といいます」
「ふ〜ん、それで?」
「女王器は返してもらいますよ」
メニエスは口端を上げながら、右手に雷を生み鳴らし始めた。
吹き飛ばされ、落下していた凶司たちは、アシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)の巨大甲虫に受け止められた。
「おっと、大丈夫かい?」
「あぁ、大丈夫だ…… ちょっ、セラフ… 当たってる…」
「ぁんっ、ぅん、でも動け… ない」
凶司の腕は豊温に挟まれ、太股には潰れた頬が、貧しい後桃を腹部に当たっている。
4人が絡まる様に、アシャンテが眉を潜めて、でも顔を伏せながら甲虫を地面まで降下させた。
「うわっ、すごい絵だね、これは」
軍用バイクのサイドカーから、飛鳥 桜(あすか・さくら)が瞳を輝かせていた。
「ねぇねぇっ、これは助けた方が良いんだよね♪」
「明らかに助ける気ぃないやろ、楽しそ過ぎるわ」
ハンドルから手を離しながらロランアルト・カリエド(ろらんあると・かりえど)は笑い声を上げ、絡まる肢体に視線を向けた時、後部に乗っていたアルフ・グラディオス(あるふ・ぐらでぃおす)に視線を見抜かれた。
「ロラン、目がエロいぞ」
「エロないわ! 男やったら見んと、いや、むしろ見んと、あの娘らに失礼やで」
「シカンはギリギリ捕まるよ」
「2人とも!! 行くよ!!!」
怒声をあげた、桜はいつの間にかに小型飛空艇に乗り換えている。
「2人が馬鹿な事言ってる間に、だよ。ほら、早くっ!!」
飛空艇を浮かび上がらせると、桜はメニエスの乗る箒へ、直線で向かって行った。
「皐月! 話がある! 皐月ぃ!!」
「おらよっ!!」
突然、上空から小型飛空艇が突進してきた。
「きゃっ!」
「桜っ!!」
ロランが操縦する小型飛空艇、それに乗ったアルフがバーストダッシュで跳び移り、操縦桿を握った。
何とか空中で体勢を整えた桜の小型飛空艇を、百々目鬼 迅(どどめき・じん)は割れた声で笑い見下ろした。
「はっ、こんなもんか。おい、お前ぇら、コイツ等は俺が遊んでも良いか?」
強奪組の頭を本能で感じた迅は皐月に問いかけたが、これには刀真と相対しているメニエスが叫び答えた。
「誰か知らないけど、こっち側なら手を貸しなよ、そこで何もしてない奴よりは役に立つだろ?」
メニエスに言われたマッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)は、心外だと言わんばかりにシャノン・マレフィキウム(しゃのん・まれふぃきうむ)に嘆息を漏らした。
「あれあれ? 何か、サボってるみたいに思われてるみたいですよ」
「マッシュ、追っ手は集まったのか?」
「う〜ん、あれで最後、かなぁ」
飛び来るは2機の小型飛空艇と箒に跨る影が2つ。ガラクの村より追跡に来たグレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)の一行が到着したのだ。
「また増えたよ…」
「メニエス、地上に降りないかぃ? この人数差でも何とかしてみせようじゃないか」
シャノンの提案に、メニエスは視線を戻すと、口端を上げて刀真に雷術を放った。
「くっ」
爆炎波で対抗して威力を散らした。刀真が目を向けた時、メニエスは地上の森中へと箒を滑降させていた。
再びにマッシュは空高くまで昇ると、流星の如くに光術を放っていった。
「ほらほらぁ! グズグズしてると青龍鱗が逃げてくよぉ!!」
「グレンっ、ここは私が!」
「平気、なのか?」
ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)は機晶姫用レールガンを構えると、上空に向けて撃ち放った。
「ヒャハハハ、レールガンか、オモシロイもん持ってるじゃん! 遊ぼうぜェ!!」
マッシュが、さざれ石の短刀を両手に握り構える。迫り来る飛空艇に対し、ソニアは六連ミサイルポッドとメモリープロジェクターを用いて、解き放たれた呪魂の如くにミサイルを撃った。
「ヒャハハハハハハ、良いよ、最高だぁ」
ミサイルを避けながら。間合いを確保するように。ソニアとマッシュは空の覇権を争うように、激しい攻防を繰り広げていた。
時を同じくして森中では、皐月が軍用バイクに乗り換えていた。
「皐月っ!」
早くに森中へ降りてきた桜が呼びかけた。
「待ってくれ! 君が、どうして君がこんな事をしたのか、僕は、僕なりに考えたんだ、だから。僕の話を聞いてほしい−−−」
ファイアストームが放たれ、桜に襲いかかった。しかし放ったメニエスの瞳に映ったのは、桜に覆い被さるアルフと、両手を広げ、2人の盾になったロランアルトの姿だった。
「ロラン!!」
直撃を受け、力無く倒れるロランアルトを桜は抱き受けた。
「ロラン! ロラン!!」
「桜… 無事か…」
「僕は大丈−−−っっつっ!」
桜を庇ったアルフごと、2人を襲った氷撃に、2人は吹き飛ばされた。
「戦場で友情ごっこは、みっともないですよ」
ミストラルがメニエスの元へ歩みを進めると、メニエスは皐月に視線で合図をした。
「行かせませんよ」
ウィング、某、そして八神 誠一(やがみ・せいいち)の3人が怒りと戸惑いを混合させた顔で姿を見せると、メニエスは鬱陶しそうにブリザードを放った。
辺りに氷嵐が吹き始める。エンジンを鳴らし、走らせ始める皐月。その背に掴まり座る雨宮 七日(あめみや・なのか)は、進行方向後方の地面に氷術を放ち、凍結させた。
シャノン・マレフィキウム(しゃのん・まれふぃきうむ)は使い魔の傀儡7体を並べ、追わせぬ為の防壁を成した。
「さぁ、舞踏会を始めよう」
「ふんっ」
跳び出したグレンが疾き拳で傀儡を殴り上げた。
宙へ浮いた傀儡の腹へ正拳を叩き込み、蹴りを続けて吹き飛ばした。
「ステップを踏む暇は、与えねぇよ」
「少しはデキるじゃねぇかっ!!」
百々目鬼 迅(どどめき・じん)の拳をグレンは脇を折って受けさせられたが、そのまま回転して蹴撃を繰り出した。
「へっ、やるじゃねぇかよぉっ!!」
「… 遊んでる暇は無い…」
蹴撃も伏せ避けて、拳を繰り出す。繰り広げられる格闘戦。そんな中、李 なた(り・なた)が傀儡の輪の中に飛び込んだ。
「へっへ〜 俺も暴れちゃうぜっ!」
「待たれよ! なっちゃん!!」
巨大なクマのぬいぐるみ。サングラスをかけたラス・サング(らす・さんぐ)が紳士に立ち笑んでいた。
「受け取るが良い」
光術を輪の中へ放ちゆく。
溢れる光の中、李は野性の蹂躙を唱えると、傀儡を一度に攻撃していった。
動きを止めるに、そして無機の命を相手にするならばと、刀真はソニックブレードで傀儡の脚を払い斬った。
着地と共に、背後から傀儡が襲い来たが、スナイパーライフルによる銃撃が傀儡を撃ち抜いた。
「… 刀真の隙は突かせない」
「月夜、この調子で行きますよ」
漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の援護を背に、刀真は傀儡に斬りかかりゆく。
動くことなく。傀儡の動きをじっと見つめて情報を得る。傀儡の重心が僅かに傾いた瞬間、ウィングは飛びだしてブライトグラディウスを振った。
傀儡の首が飛ぶ。その瞬間に両脇から傀儡が飛びかかってきていた。
ウィングは迎撃の体勢に入ったが、その時、巨大な影が辺りを包んだ、次の瞬間にはアシャンテの巨大甲虫が突っ込んできた。
地を抉る。傀儡以外の各々は、その巨体を跳び避けたが、その巨体の背を一頭のサンタのトナカイが蹴り駆けていった。トナカイの背には某と誠一が乗っている。
追跡組の目的は青龍鱗の奪回であるが、皐月という共通の友を追う者も居るのだ。
決して、傀儡や、メニエスたちの撃退を狙うばかりではないのだ。
「… 行け、某、八神… 役目を果たしてこい…」
凍った地面も傀儡の壁も越えてゆく。
友を追うトナカイが、勢い良く駆けていった。
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