イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

リアクション公開中!

【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

リアクション

■□■□■□■□■

 場面は変わりまして、迷宮の入り口。
 そこでは、ちょっとしたお茶会になっていた。
 ブルーシートの上にはメイベル達が用意したサンドウィッチ数種類、フライドチキン、フレンチフライ、チーズケーキが並んでいる。
 お呼ばれされたのはティセラと鄙、それから迷宮へは入らずに残っているメンバーだ。
「今日の迷宮探索もみんなの心に残る楽しい思い出になればいいですわね」
 フィリッパの言葉にはメイベルとセシリア、鄙が同意を示したが、それ以外は微妙な顔になっている。
「このチーズケーキは最高ですわ」
「ありがとう!」
 ティセラが褒めるとセシリアは笑顔で返した。
 そんなティセラのそばには、隣に陣取ってフライドチキンやサンドウィッチに手を伸ばしている桐生 円(きりゅう・まどか)の姿があった。
 さらに、ばれないように木の陰から覆面をした宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が気配を消してティセラの周辺の警戒に当たっている。
(ホイップには悪いけど、ティセラ様による信頼を得る為なの……ごめんね。私はティセラ様を何があっても裏切りません)
 祥子はティセラの警護を本人に申し込んだ際、どうやら携帯番号を交換出来たようだ。
「そうだ! ティセラくーん、パッフェルくんの趣味とか聞きたいんだけどさ、いいかな?」
 タマゴのサンドウィッチを頬張りながら、円がティセラに投げかけた。
「ええ、勿論かまいませんわ」
 ティセラはアールグレイが入ったカップを膝の上に置き、円に向き直る。
「パッフェルくんと遊んでるときってさ、いつも戦闘ばっかりだから詳しい事聞けないんだよね。だからパッフェルくんの料理以外の趣味とか聞きたいなーとおもって」
「パッフェルの趣味ですか……確か、今でいうサバゲーとかいうものですわ」
「へぇ! じゃあ、じゃあさ! ティセラくんの趣味はなんなの? 可愛いものとかすき?」
「わたくしの趣味はお茶、舞踏、歌ですわね。どれも一通りこなせますわ。それと可愛いものは好きですわ」
「またまた〜。謙遜でしょ? 絶対すごいでしょ〜?」
「そんなことありませんわ」
 ティセラは膝に置いたカップの中身をすする。
「それと! パッフェルくんが大学でティセラくんの人形買い占めようとしてたけどさ、パッフェルくんと付き合ってるの?」
「いえ、付き合ってはいませんわ。……ですが、そんなことがあったんですの」
「うん! 人形買占めってすごいよね! あ、ねぇ……その……ティセラくんと親友になろうとしたら……協力しないとダメ?」
 もじもじと上目づかいでティセラを見る。
「そんなことありませんわ。賛同して下さるのも嬉しいですが、友人になりたいというのも歓迎しますわ」
「わーい!」
 円は嬉しさのあまりティセラに抱きついた。
 それから2人は携帯番号を交換したのだった。


 ひき肉をトマトソースとトウガラシで煮込んだものが掛かっているフレンチフライをパクついているのは鄙だ。
 その横で緑茶を飲んでいるのは天音だ。
 ブルーズは天音が眩しくないように自分の裾で日陰を作っている。
「てっきり眠っているものだと思っていた」
「ん? こんなに美味しそうな料理を美しい女性が作ってくれたのに、誘いを断るなんてばかげた話だろう?」
「まったくだな」
 鄙の言葉に天音は頷いた。
 この言葉を聞いたメイベルとセシリアは顔を赤くしている。
 フィリッパはそんな様子の2人を温かく見守っているようだ。
「これは独り言だと思ってくれても構わないのだが……玄武甲がここにある経緯が知りたいな。玄武甲の機能に関してはホイップから直接話しを聞いた呼雪に聞けたから満足している」
「……では、我も独り言なのだが、5000年前の戦いの中で鏖殺寺院が奪っていくのを聞き、単身乗り込んでいったのは……今となっては若気の至りだな……」
 鄙の独り言を聞き、満足したように緑茶をすすった。
「あの! ちょっと良い?」
 そう言い、話しかけてきたのはカッチン 和子(かっちん・かずこ)だ。
 鄙がそちらに顔を向ける。
「昨日言ってたホイップさん達が美味しそうに食べていたっていうトマトを使った和風料理の作り方を教えて欲しいの。玄武甲を無事に取ってこれたらお祝いしたいから」
「うむ。かまわない」
 鄙はそういうと、細かく作り方を教えていく。
 和子は必死にメモを取る。
「ありがとう! じゃあ、今から……っと、そうだ! 鄙さんは何が好物なの?」
「我か? 我はナポリタンだ」
「了解! それも作るね! それと……ホイップさんが昔と変わってないとは言っていたけれど、ティセラさんは? 昔と一緒?」
「……ああ、大方変わってはおらん。だが……あそこまで女王様に固執する感じではなかったように思う」
「……そっか……ありがとう! 美味しいナポリタン期待しててね!」
 和子は自分が聞いた事を思い返しながら、旅館の方へと走って行った。
 ティセラの話しに関しては天音も耳を傾けていたようだ。


 迷宮の入り口ではルート1に行っていた巽とティアが戻ってきた。
 幸達が仕掛けた罠には掛からなかったようだ。
 迷宮を出ると、ティセラの元へと近付いた。
「ティセラさん、でいいのかな?」
 巽が確認すると、微笑みで返した。
「噂と全然違う印象でしたしね。だからこそ、貴女の信念、想い、正義を傍で見極めさせて頂きたい。協力するかはその後、でも構いませんか?」
「ええ、勿論ですわ」
 そんな巽とティアの様子を驚いた表情で見ていたのは姿を隠している幸だった。