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【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

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【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

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【ルート6】

 二つ目の三叉路を左手に曲がったところに現在いるのは呼雪、ファル、尋人、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)エイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)だ。
「ひゃっ!」
 通路に入ってすぐにクレアを出迎えたのは背筋に落ちてきた水滴だ。
「クレア、大丈夫か?」
「うん、たぶんタダの水だと思うし……問題ないよ!」
 涼介に笑顔で答える。
「なんか……ちょっと臭い気がするんだけど……気のせいかなぁ?」
 ファルが鼻をふんふんしながら言う。
「確かに、おかしな臭いだな。腐った魚の腸(はらわた)を発酵させたような……」
「腐った魚の腸なんて嗅いだ事あるのか?」
「ない!」
 涼介の問いに、キッパリと尋人が言った。
 警戒しながらも先に進んでいく。
 どうやら臭いが強くなってきているようだ。
 涼介は智杖で床を叩きながら進んでいる。
 何か地面に設置された罠を感知できないかと考えて辿り着いた結果だ。
「うごっ!!」
 だが、あまり役に立たなかったようだ。
 涼介の体は突如出現した地面にぽっかりと空いた穴に落ちてしまった。
「くっさ! 無理! わかった! この臭い、くさやだ! ダメだ……臭すぎて気が遠くなってきた……」
「おにいちゃん!」
「兄さま!」
 クレアとエイボンの書が穴を覗き込む。
「臭すぎて……目が痛い!」
 しかし、クレアはその臭いに鼻と目を押さえ、のぞきこむ事が困難な状態に。
「無理……です……」
 エイボンの書もあまりの臭さに気絶してしまった。
「なんて強力な罠なんだ……」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、コユキ! 助けないと!」
 ファルは鼻をつまみながら自分の手を差し伸べるが届かない。
 今度は呼雪が手を伸ばし、なんとか救出成功。
「臭くて……ごめん」
 涼介は周りに謝りながら進んでいくこととなった。


 次の曲がり角を曲がると、すぐに自分の体が持ち上がったような感覚をファルは感じた。
 なんと、地面から出てきた網がファルの体を持ち上げてしまったのだ。
「どうなってるの!?」
「今だしてやる!」
 尋人はバスターソードを構えると網に切りかかろうとした。
「じゃあ、俺も手伝ってあげるよ」
 背後から声がしたと思ったら、網は綺麗に切られた。
 さらにファルまでも切りつけられてしまった。
「残念、もう一回必要かなぁ〜?」
 再度切り付けられ、ファルが悲鳴を上げる。
 その瞬間、ファルは石像と化してしまった。
 切りつけてきたのはマッシュだったのだ。
 マッシュと行動を共にしているのはシャノンと東園寺 雄軒(とうえんじ・ゆうけん)ミスティーア・シャルレント(みすてぃーあ・しゃるれんと)バルト・ロドリクス(ばると・ろどりくす)だ。
 ファルをバルトが担ぐ。
「それでは私達は先を行かせて頂きます。そうそう……くれぐれも変な気など起こさぬよう……こちらには人質がいますから……ね」
 雄軒はあくまで紳士的に言葉を紡いだ。
「雄軒様……素敵」
 ミスティーアは頬を赤らめながら雄軒を見つめた。
「行きますよ」
「はい!」
 バルトはその後ろを無言で付いて行く。
 さらに、マッシュ、シャノンと続いた。
 後ろをただ、じっと見つめるしかなかった呼雪は下唇を噛んだ。
「いったん戻ろう。迷宮を出て、態勢を立て直したほうがいい」
「ああ……わかってはいるんだ……だが」
 涼介の言葉に呼雪は悔しそうに言葉を吐いた。
 心情を察してエイボンの書が呼雪の背中を撫でた。
「戻ろう、呼雪」
「…………そうだな」
 ファルが行ってしまった道を見てから、呼雪は歩きだしたのだった。


(罠なんて怖くない……罠なんて怖くない……怖いなんて吸血鬼の名折れだわ!)
 そう決意するとミスティーアは誰よりも先頭を歩きだした。
「いったーい! なんでこんなところにタンスが!」
 絶妙な位置に設置されたタンスに左足の小指をぶつけてしまったようだ。
 片足で飛び跳ねながら先に進んでしまうと、今度は頭上に金タライが落ちてきた。
「……もう……いやーーーっ!」
 とうとう泣きだしてしまった。
「雄軒様の前なのにーっ!」
 と、一人ギャグ要員をやっているミスティーアを横目にあとの人達は真面目に迷宮を進んでいく。
 最後の部屋まで辿り着くと、そこは濃い霧に覆われた部屋だった。
 視界が1メートルを切っている。
 これでは方向感覚が分からなくなりそうだ。
 手分けして、部屋の捜索に当たる。
 手探りなので、少し時間がかかったが1枚の紙を発見することが出来た。
 【はずれ 惜しかったな】
 マッシュはその紙をバラバラに切り裂いた。