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リアクション
■第四幕:学んだ! 新米冒険者
地面が爆ぜる。
反射的にそちらを嫌がって反対側に駆ける、がそこには二人組の剣士が待ち構えていた。一人は両手持ちの剣を携え、もう一人は長槍を構えていた。槍を構えていた女性が口を開く。
「セレン殿は良い仕事をしてくれたが……あまり参考にはしない方が良いぞ」
背後、離れた位置に、こちらも二人組の姿がある。
そのうちの一人が言った。
「こらミリー。参考にするなってのはどーゆーことだよ! 今の見たらトラップはオススメだろうが。まったく!」
軽口を叩く女性の後ろ、ライフルを構えてこちらを狙っている女性の姿があった。パンッ!という発砲音が鳴り響く。
「っと!」
優里が腕に装着した小型の盾で防ぐ。
衝撃が腕に響くがダメージはない。
「挟まれたわ。分が悪いわね」
「そんなの始める前からわかってるよ。経験も技術も雲泥の差があるのに、そのうえ数での不利。勝てる要素なんて一つもなかったからね」
優里の正面、両手剣を手にした男性、黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)が歩み寄ってきた。その隣、まるで黒崎を守る衛士のようにミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)が追従する。
背後からはユリナ・エメリー(ゆりな・えめりー)が隙あらば撃とうと狙いを定めているし、セレン・ヴァーミリオン(せれん・ゔぁーみりおん)はこの辺り一帯に仕掛けられているであろうトラップの起爆装置をいじっている。
「僕が剣士を相手にするから、風里はガンナーをお願い」
「嫌よっ!」
叫び、手にした槍を構えながら風里はユリナ目掛けて駆け出す。
同じように優里は剣を片手に黒崎に立ち向かっていった。
「……正直めんどくせぇなぁ」
「それならセレンさんは休んでいてください。あの子は同じ強化人間の私が相手をします」
「それじゃあ任せるわ」
こくり、とユリナは頷くと手にしたライフルの引き金を引いた。
発砲音、弾丸が風を切る音、そして槍の柄を地面に突き立て、反動で高く飛ぶ風里の姿があった。普通ではありえない跳躍力だ。
「一撃くらいは当てるわよ」
風里は落下しながら槍による薙ぎ払いを狙う。
対してユリナは辺りに落ちている石を念力で持ち上げ、風里に放つ。
ビシバシと身体中に小石が当たるが痛いだけだ。
小石の雨をやり過ごした先にはライフルを構えたユリナの姿があった。
(また失敗かしらね)
こっちは振り払う所作で一撃、相手は指先を曲げるだけで一撃だ。
そう思った瞬間、ゴム弾が胸に吸い込まれていった。
死亡扱いとなった風里にユリナは近づくと言った。
「実戦は目の前の敵だけではありません。広い範囲を見られるようにならないと足もとをすくわれちゃいますよ。さっきのトラップとかそうです。でも、自分にもバックアップがあれば更に戦いやすくなるんですよ」
「……少数で多勢を相手にすることが起きないよう気をつけるわ」
一方、優里もまた苦境に立っていた。
黒崎の猛攻を捌き切れていないのだ。
「いっくぜえええええっ!!」
大剣が振り下ろされた。
地面に剣が突き刺さる。しかしどこにそんな筋肉がついているんだと言いたくなるような速度で、引き抜き今度は薙ぐ。剣で逸らそうと押さえるが力が強すぎるため押されているのが現状であった。
「やられっぱなしじゃないですよっ!」
優里は叫ぶと黒崎を斬るつもりで剣を振るう。しかしそれは近くに控えていたミリーネによって防がれた。
「主殿には指一本触れさせんからな!」
弾かれ、手元から剣が奪われた。
徒手空拳へと攻撃方法をシフトしようとするが、そんな隙を与えてくれるはずもない。黒崎は笑みを浮かべると振り上げた剣を打ち下ろした。
「よっしゃ勝利!」
「……最初から勝てる気してなかったですよ」
グラウンドに寝転がりなら言う優里に彼は告げた。
「攻撃は最大の防御なりってな。攻めてりゃあとは仲間がなんかしてくれるさ」
「自分にあった戦術を考えるのが一番いいと思うぞ」
ミリーネも思ったことを話す。
優里はそれらの言葉を噛み締める。そして出した結論は――
「……少数で多勢を相手にすることが起きないよう気をつけます」
風里と同じであった。