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リアクション
スクリーンが切り替わると、マイクを持った火村 加夜(ひむら・かや)がアップになった。女の子が映ったことで、会場から歓声があがる。
「皆さん、こんにちはー。レポーターを担当します蒼空学園の火村加夜です。それともう1人……」
カメラがブレたかと思うと「私はいいって」や「そんな訳には……」などの声がした後に、卜部 泪(うらべ・るい)が映る。途端に「ウォーーー!」とどよめきが起こった。人気者ならではの光景だ。
「卜部泪です。今日はお手伝いに参加してます。皆、楽しんでってね」
早々にカメラから外れると、再び火村加夜が映る。
「もう1組のセレンフィリティさーん、セレアナさーん」
「はーい」
既にマイクを持ってノリノリのセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と、幾分ぎこちないセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がスクリーンに映る。またしても美女コンビの登場に、会場の、特に男性陣が大いに盛り上がった。
「シャンバラ教導団のセレンフィリティと……」
「セレアナ・ミアキスです」
「シャンバラでもひいきはしないし、西も東もガンガン実況していくからねー」
キャンディスが「それじゃあ、順に参加者の紹介をよろしくネー」と言うと、カメラが参加者の集団を映す。
ペットの様子を見るもの。ソリの調整をするもの。仲間と打ち合わせをするものと様々だ。
「よーし、ビューティー達、まずは東チームから頼むぜ!」
百合園女学院のレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)とミア・マハ(みあ・まは)が映る。火村加夜がマイクを向けた。
「ボク達の調子? うん上々だよ」
「わらわは寒いのは苦手なんじゃがなー」
正反対の答えに会場から笑いが起こった。
「いろいろ考えて、パラミタホッキョクグマで行くことにしたんだ。ペットの交代はないけど、ボク達軽いから大丈夫だよ」
確かに女の子コンビには、ソリの方が大きすぎるようなところもある。
「わらわとレキのスキルで、妨害行為や氷対策もバッチリじゃ」
ミアが腰に手を当てて自慢げに胸を張る。
「でもボク達は妨害行為はしないつもり。正々堂々と優勝目指して頑張るんだ!」
レキが目標を口にすると、スクリーンを見ていた観客から拍手が起こった。
画面が切り替わるとセレンフィリティとセレアナが清泉 北都(いずみ・ほくと)と白銀 昶(しろがね・あきら)にマイクを向けていた。
「薔薇の学舎の清泉北都ですぅ」
「白銀昶だ」
こちらは男の子コンビだが、これはこれで女性客から歓声があがる。
「僕達はぁ、パラミタセントバーナードで、頑張るつもりだよぉ」
ニコニコ笑ってのんびり話す北都に代わって、昶がマイクを握る。
「オレは獣人だからな。意志の疎通もある程度可能だ。西は8匹いるだろうが、オレのチームワークなら、そんなハンデなんてわけないぜ」
八重歯を見せてニカッと笑う。
セレアナに「目標は?」と聞かれると、「ゆう……」と言いかけた昶を遮って、北都が「完走を目的に頑張りまーすぅ」と答える。
「なんだよ」「なにがぁ」ともめるが、セレンフィリティとセレアナが引き離す。
「優勝はしたいけどねぇ。妨害行為をする気はないし、犬達が怪我するのも嫌だしねぇ」
北都がそう言うと、“怪我”に反応した昶も「まぁ、そうだな」と納得した。
一転、ゴツイ男がスクリーンに映る。観客席のあちこちから「えーっ!」の声がした。
それに睨みをきかせるようにジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が咳払いする。
「何も言う事はないな。終わってみれば、オレが勝っているはずだ。理由? それだけの備えをしてあるからだ」
自信満々でそれだけ言うと、マイクを手のひらで遠ざけた。ジャジラッドの側では、サルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)がニヤニヤ笑っている。ゲシュタール・ドワルスキー(げしゅたーる・どわるすきー)は……表情が見えない。
観客席も静まり返っていたが、ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)がチラッと映ると、「えーっ!」と声を出す者もいた。
「参加した理由? 私自身が楽しむためですわ」
さも当然と言わんばかりに中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は答えた。
「綾瀬、私の約束は?」
魔鎧の漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が、小声で綾瀬に催促する。
「分かってるって。村木お婆様の駄菓子屋で、クジ付きお菓子でしょ。買ってあげるから」
マイクを近づけられると、慌てて「いえ、何でも」と首を振った。
「ええ、フラワシを選びました。多彩なフラワシを装備することで、いろんな場面に対応できますものね」
周囲を見回す。
「まぁ、他の皆様も同じように考えている人がいるようですね。選択が間違っていないことがわかるはずですわ」
綾瀬が答えると、ドレスが「クジの選択は、当たったり外れたりよねー」と茶々を入れる。
今度はそれに答えずに、スカートの端をパシッと弾いた。
「さぁ、皆様、正々堂々と勝負致しましょう!」
ジャジラッドの対応をみたブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)は、『少しはサービス』とインタビューに答える。
「東チーム特にジャジラッド様にに貢献するためですよ」
観客席に座った東チームの生徒から、たくさんの拍手と歓声があがる。
「ボクの誘いに応じて、みすみ嬢も参加してくださいました」
カメラが千種みすみ(ちだね・みすみ)を映すと、またも歓声が大きくなる。
「ケンタウロス、ペンギン、賢狼とペットも十分です。よほどのアクシデントでも起きない限り私とジャジラッド様の勝利は間違いありませんね」
余裕のある態度に、東チームの観客から、さらに大きな拍手が沸いた。
「ああ、これはちょっと景気付けにね。いえいえ、酔う程には……」
優雅にお茶を楽しむステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)にもマイクが向けられる。
「お茶の時間を邪魔するなんで無粋ね」とかすかに眉をひそめたものの、質問には丁寧に答えた。
「そうね。交代ポイントの重要性はわかってますわ。そのために準備はしてきましたの」
賢狼の頭を撫でると、フフフと笑みを浮かべる。
「他の人も言ってましたわね。チームワークが肝心ですの。なまじ数を増やして、西の方々は苦しいのではないかしら」
お茶を優雅に一口飲む。ホーッと白い吐息が、観客席の男性を魅了した。
「エッツェルー! 見てるー!」
突然、巨大スクリーンから呼ばれたエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)は、飲みかけたコーヒーを噴き出すと、ナンパした女性の顔をコーヒー色に染めた。
パチンと衝撃音がした後には、頬を赤くしたエッツェルが1人取り残されていた。
「せっかく良い雰囲気でしたのに……」
スクリーンでは緋王 輝夜(ひおう・かぐや)がインタビューに答えていた。
「もちろん、参加するからには、全力でトップを狙うよ」
可愛らしい女の子の威勢の良い答えに、観客席から歓声が上がる。
しかし引き手が映し出されると、途端に静まり返った。
ケルベロス、瘴気の猟犬、瘴気の猪、を世話しているのはネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)。
マイクを向けられても、「ククク……さぁ、楽しい……レースの……時間で…………す」と答えただけで、世話に没頭してしまう。
再び輝夜が映ると、観客席がホッとしたのが分かる。
「できる限り先に進むのを優先させるけど、ソリにダメージがあるようなら修理したいな。もちろんダメージが無ければ、そのまま突っ走る!」
可愛らしいガッツポーズに拍手が起こった。
「あっ! エッツェルー! ナンパとかセクハラばかりしてちゃダメだよ。ちゃーんとあたし達の応援をしてね!」
またしても大声で呼ばれたエッツェルは、口に含んだココアを、前に座っていた男性の後頭部に噴いてしまう。
その男性は憤怒の表情で立ちあがると、エッツェルの胸倉をつかんで観客席から引っ張り出した。
小柄で可愛い女の子の単独参戦に、観客からは「ガンバレー」の応援が聞こえる。
「せっかくの、ろくりんピックですし……競技に、参加したいと……思いますぅ〜。優勝目指して、頑張りますよぉ〜」
それだけで見ていた男性陣の心をつかんだ。
しかし引き手はゴツイ面々が揃っていた。ソリにつながれたサンダーバード、フェニックス、ウェンディゴ、不滅兵団がスクリーンに映されると、観客から「おおー」とか「大丈夫かよ」とどよめきが起こる。
それでも冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)は気にする様子もなく、マイペースで考えを語る。
「湖の途中に……穴がが、開いてたりしたら……氷術で、自分の進むところだけ……足場を、作りますぅ〜。下りのコーナーは……できるだけ、アウトインアウトで……可能なら……曲がるとき、内側に……氷術で作った棒を、刺して……グルんと、行こうと思いますぅ〜」
“グルん”のところで、日奈々が見せたジャスチャーには、男も女も「かわいいー!」の声があった。
しかしスキル氷術の多彩な使い方に、他チームからはチェックが厳しくなる。
それは西チームだけではなく、同じ東チームからも、「対策を考えるか」との声が聞こえたことからもわかる。
「ええ、俺達は別々に行きますよ!」
クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)がインタビューに答える。
「いえいえ、仲が悪いとか、実は反目しあってるとか、仮面夫婦とか、事実離婚とか、全然関係ありません!」
言ってはいないことまで、どんどん話していく。
「本来、この冬季ろくりんピックは雪だるま王国で開催する計画だったのです。えっ? そんな計画知らない? まぁ良いでしょう」
話の腰を折られても、クロセルは演説を続ける。
「冬季ろくりんピックを雪だるま王国へ誘致する計画は、残念ながら失敗してしまいましたが、各競技で王国民が上位入賞することで、我らが女王・赤羽陛下に機嫌を直していただくとしましょう。ほら、この通り!」
救世主を揃えた横で、クロセルがポーズを決める。
「ウィンタースポーツとなれば、雪だるま王国の威光を知らしめる絶好の機会ですからね。東チーム? ああ、それはコトのついでに……」
演説を続けるクロセルから、マイクがパートナーの童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)に向けられる。
「クロセル殿はいろいろ考えているようでござるが、雪だるま王国プリンスたる拙者は、ポッと出の新参者より、古参の愉快な仲間達の力を信じるでござるよ!」
言葉通り、スノーマンはパラミタホッキョクグマ、雪だるま、ミニ雪だるまを連れていた。
「他にもシルバーウルフや賢狼を用意してるでござる」
あとはスキルを効果的に使うことで、スタミナ回復やクールダウンを図る予定でござる。どうやって? うーむ、これ以上は国家機密でござるな」
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