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リアクション
「さて、次の対決は見物ですよ卜部さん! なんと今回ランキング上位に位置している846プロ所属のアイドル同士の対決です!」
「これは熱くなりそうな予感がしますね! それではさっそくいって見ましょう! 第九戦目、レッツバトル!」
軍服風の格好いい衣装からすらりと伸びる白いしっぽ。
「猫耳は可愛いだけじゃないんさぁ」
妖艶な低い声でそうマイクに呟くように言い放つと観客席から黄色い声がスタジアムに響いた。
846プロ所属、キルラス・ケイ(きるらす・けい)。ヴィジュアル系の彼のダンスはとてもキレがよく、低くよく通る声だ。踊っている際、黒い衣装の下から時折鍛えた肌がちらりと覗く。その都度客席から黄色い声が上がり、キルラスは嬉しさを隠せなかった。
彼にとってはある意味これがデビュー戦でもあるのだ。全力を出して、観客の心を動かすのだ。
――手を伸ばしても掴めず もどかしさ涙になって
僕のこの足元の影に 零れ落ちてゆくんだ
声を殺して泣かせて お願い どうか 響いてよ
大人の男の色気というものをたっぷりと含ませるような甘い声でマイクに乗せれば、あちこちから悲鳴のような声が飛ぶ。
アイドルといえば女性のイメージが強いものだが、男性アイドルも当たり前だが数多く存在する。歌手、俳優、タレント。その全部がアイドルであるのだが、ただアイドルといってしまうと、そのイメージがあまりにも女性として刷り込まれているので、男性とアイドルはなかなか結びつかないというのもあるのだろう。
男性アイドルとしてこれから活躍をしていくだろうキルラスを見て、社はこれからどうプロデュースしていけばよいのかと考えを巡らせるのだった。
――こっちを見てと一言 囁けたらそれで終わりと
何も言えないまま 声は嗄れていくだけで
夜は明けないまま Ah……
吐息混じりに客席に挨拶をすれば、大きな拍手が沸き起こる。
キルラスは男性アイドルとして活動していこうとステージの上で希望を見つけるのだった。
続けて登場したのは同じく846プロに所属している乙川 七ッ音(おとかわ・なつね)と碓氷 士郎(うすい・しろう)のInnocentだ。
碓氷自身の髪の色に合わせるように、白の袖の無いジャケットとズボン。抱えたギターを弾き出せば上がったテンションと同様にギターの音もはねていくようだ。
胸元のリボンでアクセントをつけた黒いワンピースの乙川はキーボードだ。
いつの間にか出場もユニット名も決まっていたライブフェスタ、最初は戸惑ったものの可愛い衣装が着れたことに乙川も内心ワクワクしていた。それでも衣装だけでテンションが上がったということは碓氷には内緒のようだ。
――誰かを待つ 途方に暮れてなお待つの
大丈夫だよ……これはただの自己満足
間奏のキーボードソロ。
乙川の指が鍵盤の上で華麗に跳ねる。
音を奏でるというよりは、音とともに遊んでいるようだ。
流れるように紡ぎ出される旋律。
細い指が鍵盤から離れては着地を繰り返す。
ギターのアドリブも入り、二人は一瞬視線を合わせて微笑む。
負けてないだろ?
お互いにそう言い聞かせるように。
――帰ってこないあの日思って感傷浸るの?
意味も訳も見えない…苦笑しか無いね
二人で息を合わせてマイクに向かって声を揃えて力強く歌いだす。
――終わり無い世界、そう無い、はず
ただ先がないだけ 書きかけの曲みたいに
延々とリフレインする、この感情は……
キーボードが歌の一部分を変化させつつリフレインする。支えるように上るように響いたギターはフェードアウトし、最後は乙川の指で曲が終わる。
わあああああっという歓声の中、二人を応援しに来ていた白泉 条一(しらいずみ・じょういち)はしばらくぽかんとしたままだった。
どうせがっちがちに緊張してるのだろうと思って、少しでも和らげられればいいと応援に来たのだが、何か叫んで余計に緊張させたらどうしようかと無駄に悩んだりもした。
笑顔でも見せて安心してやれたらいい。いつも頑張って練習していたのを知っていたし、余計な事は言えない。応援は心の中でしよう。そんなことを考えていた自分は馬鹿だった。そう気付かされた。
「お前ら……すげーじゃん」
感動したぜ。
イベントが終わったら二人に一番にそう伝えよう。
そう決めて白泉は大きな拍手をステージへと送るのだった。
「Innocent、そしてキルラスさんの二組とも、惜しくも一位は逃してしまいましたね」
「ですが、暫定二位の魔女っ子アイドルあすにゃん。それに続いてラブゲイザーfeat.千尋、そしてInnocentの二人と846プロがどんどん上位に食い込んできましたね!」
「さて、いよいよ次で最後の二組となります。この二組の点数で、順位が決まり、また、遠藤寿子さんがグランドチャンピオンになれるかどうかが決定いたします。それではラストバトル行ってみましょう! レッツバトル!!」
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