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リアクション
「花音、大丈夫ですか?」
楽屋で鏡を見ながらぼんやりと座る赤城 花音(あかぎ・かのん)に、リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)が声をかける。
ステージの様子が分かるように設置されたテレビが、花音がそろそろ出番であることを告げていた。
「大丈夫だよ。よし、行ってくる!」
少し強がる彼女を引きとめて、その手をきゅっと握る。
気持ち力の入った拳が、ほんの少しの不安の現れを彼女に訴えていた。
「花音の持ち味は『ナチュラル』でいられることだと僕は思います。相手が誰であろうと無理にやろうとせずに、ありのままに等身大に歌える事が花音の強みだと思います」
一緒にここまで来たプロデューサーも言っていたことだ。
ありのままで。
君らしく。
そうだ。今さら怖がったってどうしようもないのだ。
負けるときは負けるし、勝つときは勝つ。
少しだけ驚いた顔をして、すぐに笑顔を向ける花音。
「ありがとう。行ってくる」
そうして彼女はステージに降り立った。
(ボクは何時もあと一歩が届かなかった……この機会、今度こそ!)
イントロが流れ出す前に、花音はマイクを取った。
「ボク、赤城花音は……遠藤寿子さんのライバルとなる事をここに宣言するよ!」
ざわめく場内。
それはもちろん寿子のマネージャーに挨拶に来ていたリュートにも聞こえていた。
「お互いに切磋琢磨して、アイドル界を牽引して行きたいって、思ってます! ボクが挑戦者になるけど認めてもらうために、全力で歌うね!」
流れ出すイントロ、突然の宣言に沸き立つ会場。
――アイ・アム・ミュージックファイター☆ 行くよぉ〜
曲は『心が生まれ変わる』!
「そういうこと、らしいです。唐突で申し訳ないですが、これからもよろしくお願いいたします」
苦笑しながら頭を下げるリュート。隣で受けて立ちます、とこちらも意気揚々の寿子を見ながらアイリも苦笑しながらこちらこそ、と頭を下げるのだった。
――不器用な言葉の形 星に祈りを託して
もう、大丈夫だよ 安らかな微笑が届くと良いな
R&Bの特徴的なサックスやホルンのスイング感のあるリズムに乗って、花音は歌う。
胸元とスカートの鮮やかなレース、スカートのグラデーションが観客の視線を奪う。アクセントのレースアップと腰に巻かれたオレンジのリボンは花音のお気に入りだ。
――想いだけでも力だけでも 愛の魔法は叶えられない
もっと上手く伝えたい 寄り添う人へ……もう一度
共に手を取り合える時まで 今は回り道でゴメンね
新しい朝が始まる 吹き込む息吹……心が生まれ変わる
ちゃんと歌えただろうか。ちゃんと届いただろうか。
お客さんは純粋に音楽を楽しんでくれただろうか。
ボクは、楽しめただろうか。
拍手を浴びて、花音はステージを笑顔で去った。
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