シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

【ろくりんピック】小型飛空艇レース

リアクション公開中!

【ろくりんピック】小型飛空艇レース

リアクション


■空京5
『こっちは快適だぜ? クーラーにパフェに、それから実況中継じゃ通路のマップに選手の現在位置付きだ』
 リーリヤ・サヴォスチヤノフ(りーりや・さう゛ぉすちやのふ)が携帯電話の向こうで言う。エルフリーデ・ロンメル(えるふりーで・ろんめる)は防衛装置からのレーザーを避けながら、彼女の言葉の先を待った。
 リーリヤが続ける。
『仲間の手助けがしたいんだったら、次の通路はF−13を選んどけ。西の選手が東の選手に妨害を受けてる』
「……相手は?」
『スタート直後に蛇行運転をした連中の内の一人だ。さっきの区域でも面白かしい事やってやがったが、今回も中々……』
 リーリヤの言葉を聞きながらF−13通路へと入り込む。
「……どんな妨害なんですか?」
『一言でいうなら――迷惑停車だな』


「ヒャッハァ〜!! おおっと、またエンジンの調子がァ〜!」
 鮪の機体が唐突に急ブレーキをかける。
「――っく、まさか、また!?」
「あははっ、おんぼろだねぇ〜えぃっ♪」
 彩華が鮪の機体の減速を鋭く察して、それを避けるために全身を使って機体を巡らせる。
 が――
(「彩華ッ、減速して!」)
 彩羽の鋭い指示。
(「は〜い」)
 彩華が急減速すると、飛空艇の鼻先を幾つものレーザー光線が掠めていった。
「ッ、やっぱり狙ってる――?」
「何のことだかなァ〜?」
 彩羽の視線を受けた鮪が笑って、何事もなく機体を再び加速し始める。
 どうやら鮪は、レーザーが放たれるポイントを計算して機体を減速させているようだった。彩華が迂回しようとすると幾つものレーザーに狙われる、という絶妙な位置を把握しているのだ。
「やるわね」
 彩羽は口端を上げながら、鮪を見据えた。あと幾つ、そういった位置を把握しているかは分からないが、こんなところで足止めされているわけにはいかない。
(「彩華、次は強行突破するわよ。私が出来るだけ魔導銃で減らしてはみるけど、多少の被弾はあると思う。そのつもりでね」)
(「はいですぅ〜」)
 そして、彩華の機体は、あちらこちらから撃ち出されてくるレーザーの間を加速していった。
「ヒャッハァ〜!! 二度あることは三度あるってなぁ〜!」
 鮪が三度目の急減速。
 彩華が反応して機体を迂回させる。彩羽の銃が幾つかのレーザー装置を破壊するが、やはり手が足らない。
 と――後方からの射撃が壁を走り、残りのレーザーを破壊する。
 鮪の横をすり抜けた彩羽たちの後を追って加速してきたのは、エルフリーデ。ついでに、
「……御免なさい!」
 鮪の機体の方へ、数発の牽制を放っていく。
 彩羽は、やや後方についたエルフリーデへと振り返り、
「ありがとう、助かったわ」
「……無事で良かったです」
「お礼は、空京デパートでアイスとか」
「……アイス?」
 彩羽は優等生的な微笑を浮かべ。
「期間限定のが出てるらしいの。――次、H−5ね」
 そうして、二つの機体は、共にH−5通路へと潜り込み、ブースト加速していく。


 チェックポイント付近――
 公道手前の合流ポイントでグロリアーナ機と又吉機が接触しかけるも、ぶつかり合いには至らずにグロリアーナ機が先行する。
 そのまま、公道で飛び出したグロリアーナ機の前に居たのは、彩華、エルフリーデ。
 それらをブースト加速で抜き去って、グロリアーナ機はチェックポイントをトップ通過した。

『グロリアーナ&典韋が再びチェックポイントをトップ通過! 続いて、次々と地下通路を抜けた選手たちがチェックポイントを通過していきます!!』

◇ 
 あらかじめ銃型HCに順路を記録していた鳳明機がチェックポイントを抜けた後方―― 
 六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)アレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)もまた、事前にルートを組み立てていたおかげで危なげ無く地下通路を抜け出していた。

「それじゃあ、俺はここまでだな」
 公道に出てチェックポイントへ向かうまでの間に、アレクセイが言う。
 優希は、はた、と彼の方へ顔を上げ、
「あ、はい。あの、ありがとうございましたっ!」
「しっかりやれよ」
「はい」
「楽しみにしてるぜ。ユーキのリポート」
 ニィっと笑みながら言って、アレクセイの飛空艇が優希から離れていく。
「……はいっ!」
 優希はアレクセイの方を見送りながら、強く返事を返した。チェックポイントのリングをくぐる。


『さあ、これで全ての選手が地下通路を抜け……てません。あれ? 立川ミケと樂紗坂 眞綾は一体どこに??』
『……完全に、迷子になってるワネ〜。ちょっと誰か迎えに行ってあげてー!』

 地下通路の奥の奥。
「なななーーん」
「ねこさん、まってー」
 立川 ミケ(たちかわ・みけ)がレーザーに追われながら飛んでいく後方を、
「わっふ〜いっ。レーザーさん、と、ねこさんーの、コラボー」
 樂紗坂 眞綾(らくしゃさか・まあや)は同じくレーザーに追われつつも、カメラ片手に飛んでいた。レンズはミケを追い続けている。
「ななな ななーーん!!」
 おそらくミケは、空気読めー、読んでー、道探してー、的なことを言っているかもしれないが、眞綾には一切伝わっていなかった。
「ねー、ねこさんー、こっちむいてー」
「なななー!」
「あ、レーザーさんと、つーしょっとー、わらってわらって〜」
「ななーーん!」
 この子マジでもーー、というニュアンスの鳴き声が通路に響き渡るも、眞綾は何だかずっと楽しそうだった。

▼順位発表

1位:【西】グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)典韋 お來(ライト)
2位:【西】天貴 彩羽(あまむち・あやは)天貴 彩華(あまむち・あやか)(ライト)
3位:【西】エルフリーデ・ロンメル(えるふりーで・ろんめる)(ノーマル)
4位:【東】国頭 武尊(くにがみ・たける)猫井 又吉(ねこい・またきち)(ヘビー)
5位:【西】アルノー・ハイドリヒ(あるのー・はいどりひ)ヘラ・オリュンポス(へら・おりゅんぽす)(ライト)
6位:【東】ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)(ライト)
7位:【東】クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)ジィーン・ギルワルド(じぃーん・ぎるわるど)(ヘビー)
8位:【東】四条 輪廻(しじょう・りんね)(ライト)
9位:【東】四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)赤羽 美央(あかばね・みお)(ヘビー)
10位:【西】琳 鳳明(りん・ほうめい)藤谷 天樹(ふじたに・あまぎ)(ライト)
11位:【西】六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)(ライト)
12位:【西】アレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)(ライト)
13位:【東】ハーリー・デビットソン(はーりー・でびっとそん)(ノーマル)
14位:【東】織田 信長(おだ・のぶなが)(ヘビー)
15位:【東】南 鮪(みなみ・まぐろ)(ヘビー)
迷子中:【東】立川 ミケ(たちかわ・みけ)(ライト)
迷子中:【東】樂紗坂 眞綾(らくしゃさか・まあや)(ライト)

リタイア:【東】クラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)(ヘビー)