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リアクション
教導団駐留所。
市街地からは若干離れた場所に建てられたものだ。
広いグラウンドにはイコンが数台並び、天幕の下では教導団の団員が出撃準備に余念がない。
その、応接用に作られた部屋に、リア・レオニス(りあ・れおにす)とレムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)は通されていた。
リア本人は、この後は北部の探索部隊に加わる予定だ。しかしその前に、教導団にも協力を挨拶しなければならないと思っていた。
「お待たせ! ごめんね」
「おはよう」
挨拶をして現れたのは、橘 カオル(たちばな・かおる)とルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。
「ルドルフに挨拶に行こうと思ってたんだけど、来てくれて良かったわ」
「いや、こんな時だからな。イエニチェリとして、協力を頼むぜ」
リアはそう言うと、ルカルカに向かって手を差し出す。その手を、ルカルカはしっかりと握った。
「任せておいて! カオルさん、私達は薔薇学のお手伝い。情報も全部あげてね」
「もちろんだ」
カオルは頷き、自身もリアと握手を交わした。
「俺はイコン防衛には加われないから、すまないけどな」
「大丈夫。他校だし、そりゃもう堂々と撃墜できる♪微力を尽すわ」
ルカルカはそう言うと、にっこりと笑った。
「ありがとう」
その笑顔に、リアも自然と表情があかるくなった。
ルカルカは、イエニチェリに「従う」つもりはないが、全力で「手伝う」心づもりだ。その気持ちに、裏表は無い。それが、伝わったからだ。
「じゃあ、俺は行くから」
「気をつけろよ」
カオルの言葉に、リアは力強く頷いた。
イコン基地について、気にならないといったら嘘になる。
だが、仲間のことを信頼し、そして協力者を信じる。
そう、リアは決意していたのだった。
一方、薔薇学の生徒でありながら、先遣隊として出発した生徒もいた。
解析を待ってからでは、後手にまわる危険性があると考えたからだ。
第一、いつもいつもウゲンがなにかをやって、それに慌ててこちらが対応するというばかりにも、うんざりしているというのが本音だった。
「こっちは大丈夫そうだぜ」
エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)が、一足先に周辺を確認し、アルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)に声をかけた。アルフは地図を片手に、岩肌を滑り降りた。
なにも、適当に出てきたわけではない。地質学的に、洞窟のありそうな場所、また、タシガンの古代に関しての知識もあわせ、在る程度の推測はたててきている。
「奥は……深そうだ」
谷底にぽっかりと、竪穴が暗い口を開いている。入り口は狭められているが、アルフが手持ちのマグライトで照らしても、底までは届かないだけの深さはある。
「降りてみるか?」
エールヴァントが、装備からロープを取り出した。
「いや……」
アルフは慎重に岩を調べている。これがどんな作用によって出来たものか、また、地層的にいつ頃から存在するものなのか、精査する必要があるからだ。いくらしらみつぶしにあたるつもりとはいえ、つい最近出来たものだとしたら、意味がない。
「…………?」
そのとき、微かな音を感じ、アルフが顔をあげた。大気が震え、空を切る音は、自然のものとは思えなかった。
(ゴーストイコンか?)
二人は無言のまま、咄嗟に岩陰に身を隠した。相手が誰であれ、警戒するに越したことはない。
二頭の巨大な白い天馬と、異形の黒い生き物。霧の中、巨大な影を落とし、上空を飛び去っていく。
「ワイバーンと、ペガサス?」
アルフは眉間にしわを寄せた。一体なぜ、そんなイコンがここにいるのか。
……答えは一つしかないだろう。
「横からかっさらおうって魂胆だろうな、どうせ」
エールヴァントは呟き、携帯を耳にあてた。
そのうち、薔薇の学舎の団体も来るはずだ。不審なイコンがいると注意することには、やぶさかではない。
しかし、どうやらこの付近は、携帯は圏外のようだ。エールヴァントが舌打ちする。
「早いうちに見つけないとな」
彼らが立ち去るのを待ち、二人は再び立ち上がると、探索を続けることにした。
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