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The Sacrifice of Roses 第三回 星を散らす者

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The Sacrifice of Roses 第三回 星を散らす者

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終章


 翌日。
 タシガン領主代行、アーダルヴェルト卿は、逝去した。

 ジェイダスは未だ治療中の身であり、その後暫くの、協力した他校生徒への感謝や撤退に関してのこと、あるいは薔薇の学舎内でのあれやこれやを仕切ったのは、ルドルフだった。

 あの夜から一週間後。
 ようやく公にジェイダスは姿を現し、現状を広く説明することとなった。
 ……もちろんまだ、少年の姿のままである。

「驚いた者も多いだろう。現に、私も驚いている」
 ジェイダスは悪戯っぽく笑った。その表情や態度は、かつてとひとつも変わらない。ただ、サイズや顔立ちが異なるだけだ。
「だが、私は変わらずにここにいる。ジェイダス・観世院として。それは、私の生を願ってくれた生徒達のおかげだ。……感謝する」
 かわって壇上にあがったのは、同じくようやく回復をした、レモ・タシガンだった。
「僕も……夢中だったから、どうなるかはわからなかったんだけど……。カルマにウゲンがかけた鍵を外すには、ジェイダス校長の血と、それを苦しむ心が必要だった。ほんと、どうかしてると、僕は思うけど……あの儀式が進んだことで、カルマは少しだけ、目覚めることができて、自分からより多くの血を求めようとしたんだ。あ、でも、カルマはそれしか方法を知らなかっただけなんだよ。それしか、教えてもらっていなかったから……」
 レモは一度頷き、双子のような存在である装置が、決して血塗られたものではないと懸命に訴えかけた。それから。
「だから、……みんなの想いの力を、カルマは知って、ウゲンの呪いから逃れることができたんだ。でも、どうしても、校長先生の命を半分はもらうことになってしまって」
 その結果が、ジェイダスが幼くなってしまったということになったらしい。
「カルマの力も、まだその半分くらいしか解放はできてないんだ。でも、それはいずれ、僕も一緒に、方法を探っていくつもりだよ。だけど、その……ごめんなさい。全部は、助けること、できなくて」
 肩を落としたレモに、ジェイダスは笑いかけた。
「私は気にはしていない。なにより、これからが新しいタシガンの始まりだ」
 そう告げると、ジェイダスは再び生徒たちに向き直り、宣言をした。
「……色々な苦しみを味わわせたことを、まずは心から詫びよう。さきほど、変わらずと言ったが、正しくは、私は新たに生まれ変わったのだ。そして、タシガンの地もまた、新たにならねばならない時がきている。そこで、だ」
 ジェイダスは、生徒たちの顔をゆっくりと見渡し、それから。
「私は、本日より薔薇の学舎校長を辞任する。今後は、理事長兼、新エネルギー開発局局長という立場を取らせてもらう。そして、新たに、……ルドルフ・メンデルスゾーン。彼を、薔薇の学舎新校長に任命する」
 驚きに、一同は暫し声もなかった。ただ、ルドルフはジェイダスの側に立ち、深々と一礼をした。
「なお、これに伴い、現イエニチェリは解散とする。また新たに、ルドルフの選ぶイエニチェリとなるよう、励んでくれ」
 ジェイダスは以上の報告を終えると、ルドルフに場を譲った。
「ルドルフ・メンデルスゾーンだ。今回のことには、皆驚いていることと思う。納得のできない者もいるだろう。けれども、僕は、皆の力を必要としているし、皆のために頑張るつもりだよ。……僕はここに誓おう。今後、さらに強く、美しく、薔薇の絆が育つよう、全力を尽くす、と」
 ルドルフの宣誓に、はじめはまばらな拍手が起こった。やがてそれは大きな拍手喝采となり、薔薇の学舎を包んだのだった。


 また新たに、シャンバラ政府よりもたらされた告知も、二点あった。
 ひとつは、ハルディア・弥津波(はるでぃあ・やつなみ)宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が代表となり行われた告発に対する判決である。
 これにより、獅子小隊は、タシガン駐留の任を解かれ、国軍としてのタシガンへの立ち入りも禁じられた。
 問題の行動はあくまで一般人としての行動だとしても、その名を冠する者である以上、行動の責任は団体に帰属する、との判断によるものだった。

 同時に、教導団は、新たな駐留武官の名を発表した。――黒崎 天音(くろさき・あまね)である。
 金 鋭峰(じん・るいふぉん)とシャンバラ政府の判断の下に、決定されたことだった。

 もうひとつは、新たなタシガン領主として、ラドゥ・イシュトヴァーン(らどぅ・いしゅとう゛ぁーん)が就任することになったということだ。
 ラドゥ自身は、「甘いな。ウゲンに創造された種族とは言え吸血鬼も魔族だぞ? ザナドゥに同調するとは考えないのか?」とうそぶいてはいたようだが、そのようなことをあえて口にするあたり、考えてもいないのだろうと逆に信頼をされたらしい。
 元々吸血鬼として、この地で闇の帝王として生きてきたラドゥだ。ウゲン亡き後、迷うタシガンの民にとっては、ひとまずは納得のいく結果だったといえよう。


 こうして。
 薔薇の学舎、ひいてはタシガンにとって、ひとつの時代が終わり、そして新たな時代の幕開けとなった。
 これからの道が、果たしてどうなるのか。それは誰も知ることはない。
 しかし、あの夜、生徒達の想いが創った光は。
 おそらく誰もの胸に残り、これからも強く、輝くことだろう。

 星が散る時。新たな星は、輝きの中に必ず生まれるのだ。


担当マスターより

▼担当マスター

篠原 まこと

▼マスターコメント

●ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
お待たせしてしまい、大変申し訳ございませんでした。

●キャンペーンシナリオも、今回をもって完結となりました。
全ての方にとって満足のいくものではなかったかもしれませんが、運営とも相談の結果、今回はこのような結果となりました。なにとぞ、ご了承ください。

●また、今回のシナリオの結果、シナリオに参加されておりませんがレオンハルト・ルーヴェンドルフ様から「タシガン駐留武官」の称号を削除させて頂きました。

●前半3回、後半3回の全6回を通して、私も多くのことを学ばせていただいたと思います。
最後に、「想いの花束」という本当に素敵な奇跡を起こしていただけて、とても嬉しかったです。
本当にありがとうございました。