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第一章 マホロバ城にて2
マホロバ城大奥。
マホロバを守護する鬼と統治する天子の力を受け継ぐ将軍家の子孫を絶やさぬために作られた女の園は、長年、女たちの涙と血と権力にまみれた華の嵐であった。
それが、今は、将軍家の子供だけではなく、たくさんの女たちを救うための場所となりつつある。
大奥取締役代理の七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は女子供を優先して非難させるべきだと、その避難先に大奥の開放を望んでいた。
「マホロバに住む人は、薄れたとはいえ鬼の血を引く人たちです。同時に、私たちと地球人と同じ血が流れている――いずれ大奥に入ってくる方もいるでしょう。希望する方の受け入れをしたいのですが、許して頂けますか?」
先代将軍の御花実から大奥取締役として立った葛葉 明(くずのは・めい)は、黙ってそれを受け止めている。
明は言った。
「確かにそのとおり。ここ大奥で多くの生命を預かる身として、そのままにはできないわ。今、女中たちの身の安全を確認しているところです。でも――」
彼女は大奥の秩序を預かる身として考え込んでいる。
「それでは、大奥の秘密も明らかになってしまう」
明も託卵の秘術により『天鬼神』の血を引く明継(あきつぐ)を産んでいる。
将軍継承権をもっているものだ。
その重さも十分に分かっている。
託卵を通して『天鬼神』の血を代々受け継がせ、そのために多くの犠牲が必要となってきた事実。
それは、大奥で実際に見聞きしたものにしかわからないだろう。
「そのことは、あたしも考えました。でも、信じてほしいというしか。あたしたちが日本で出会っていた人たちが、いつかマホロバに行くことになるかもしれません……だから、他人事とは思えないんです」と、歩。
「私からもお願いいたします。鬼城家と天鬼神の血は、鬼鎧の為にも必要。でも、鬼の暴走や血の悪用対策に管理が必要……鬼の血をもつ者は鬼城家に属し大奥に住むとし、対暴走用の組織を作ることが必要に思うのです。もちろん、地下幽閉は廃止いたします」
現在の将軍鬼城 白継(きじょう・しろつぐ)の生母樹龍院 白姫(きりゅうりん・しろひめ)が、凛とした姿で現れた。
普段の穏便な白姫と違った、何か強い決意を現した表情であった。
「そのために鬼城御三家以外に、大奥で実際に子供たちを護るものが必要です。その組織を大奥長の局を名づけ、歩様にお願いしたいのですが」
「あたしが?」
突然のことに歩は驚いている。
「はい、その局に就くものをそうお呼びします。これからは歩局(あゆみのつぼね)様です。大奥総取締役の明様はいかがでしょうか」
白姫が尋ねると、明は異はないと言った。
「私は大奥取締役として協力するだけです。幼将軍を預かっている大奥の協力なくては、表の方々も政がままならないでしょうし、もとより対立は望んではいません。それに、大奥の真実の公開、秘匿はどちらになっても大奥の為になるでしょう」
明はもう一度確認するように、白姫に問いかけた。
彼女はどの結果になっても従う覚悟は出来ていた。
「本当に良いのですね。これから、家老たちと渡り合う気でいるのでしょう?」
「ええ……その前に、貞継様や葦原 房姫(あしはらの・ふさひめ)様にもお話しなくてはね」
明は急に白姫が心細そうにしているのを感じた。
かつても御花実同士は共に手をとりながら相手の身を案じていた。
白姫が言う。
「私がこうできるのも、明様が大奥の実務を取り締まっていただけるからです。歩様もお願いいたします」
大台所はそういって、従者と共にマホロバ城の中奥へと繋がっている広敷へと向かっていった。
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